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90 金ならある

 

 食材を移す作業も終わり、今度こそルイスくんの絵を見に行こうとした時にカエデさんが帰ってきた。


「あ、おかえり」

「ただいま帰りました。あれ? その子は?」

「はじめまして、ルイスです!」

「この(あいだ)の絵を描いた人だよ。色々あって手伝ってもらってるんだ」

「そうなんですね? お疲れさまです」


 しかしこうなると今から見に行くって難しいなぁ。ご飯は作っときたいし、今作ったら冷めちゃうし。


「あの、絵はいつでも見れるので、また今度にしますか?」

「ごめんね? 明後日ぐらいに行こうかな」

「なんの話ですか?」

「ルイスくんが俺の絵を描いてたらしくて、それを見ようかなって」

「私も見たいです! どこにあるんですか?」


 それは有難い。今のうちに行っとかないと明日の作業が手に付かなくなりそうだし。


「今から行く? ルイスくんは大丈夫?」

「着いてきてください! こっちです!」


 駆け足のルイスくんに着いていく、カエデさんと俺。

 ちょっとはしゃいでるルイスくんは、前と同じ店に入ると照明を点けた。

奥の方へと進んでいくと薄暗いところに噂の絵が有った。


「おぉ、カッコいい」

「素敵ですね」

「ありがとうございます!」


 そこに(えが)かれていたのは暗い石畳の上でゴロゴロと荷車を引いている男性。てか俺。

 俺をモデルにしたらしいけど、顔は鮮明(せんめい)に描かれてないからプライバシー的にも問題なし!

 今にも荷車を引く音が聴こえてきそうな絵を前にして、物欲が湧き上がってきた。


「コレって買えます?」

「え? もちろんです!」


 俺が買わなかったら誰が買うんだ。金ならいくらでも有る! 俺には金しかないんだ!!

 その絵は前に買った風景画よりも少し小さかったので、お店のオーナーを呼ぶこともなく、ルイスくんだけで運ばれた。


「本当にありがとうございました!」

「気にしないでいいよ? 凄い綺麗な絵だし」

「何か御用があったらなんでも言ってください! それでは!」

「もう暗いから気を付けてねー」

「気を付けます!」


 ルイスくんが暗闇の中に消えていく。その手にはいっぱいの野菜を抱えて。

 そんな感じで別れた後、いつものように料理をして、ご飯を食べて、体とか洗って、眠る。今日は中々ハードな一日だった気がするな。


 …………


 いつものようにエラさんの部屋のドアをノックする。何回か叩いてみた後、中からクッソ眠たそうなエラさんが出てきた。しかも布巻いてないし。


「あ、お疲れさま。眠そうだね」

「あぁ……眠いです……おつかれです……」

「……なら午後からにする? ちょっと流石にね」

「あぁ……ありがとうございます……午後からにします……」

「じゃあ午後また戻ってくるから。それまではゆっくりしてて」

「すみません……」


 背中を丸めながら椅子に戻っていくエラさん。そんなに話すことあったの? もしかして相当進展してるかもしれない。


 ……本当に他国に行ける日も近付いてるのかな。その時のために午前中は弓でも練習しようかな。


 自宅に戻り、弓矢を持つ。それを(かつ)いで街の外へと出た。


 ドラゴンが来る前に矢を放てるようにしておかないと……でもいうてそんなに時間もないからな。

 前に大臣に習った時のことを思い出すと、なんとなくへにゃへにゃの矢は打てるようになった。しかし、コレでドラゴンが倒せるとは到底思えない。


 そんな練習をしていると蛇が俺に這ってきた。頑張って狙いを定めようとするが、動く相手に弓矢が当たるイメージが全然湧かない。そもそも当たったところで死なない。

 みんなスゲーことやってるんだな。関心しちゃうよ。


(大丈夫か? こんなにやつに負けるなよ)

「……もう逃げちゃおうかな……だって全然ダメだもん」

(せめて一回ぐらい打ってみろ。まだ分からないぞ)


 言われた通り、狙いを定め切る前に矢を放つ。それは地面に突き刺さることもなく、ただただ横になった。


「もう肉弾戦で行こうかな」

(そっちの方がまだあり得るな)


 弓矢を地面に置いて、歯の方には出来るだけ近づかないようにしながら、掴みかかる。見事、パイプぐらいの大きなの蛇を捕まえた。


「え、これからどうしよう!」

(魔法でも使え)

「マジでなんで魔法忘れちゃうんだろ……」


 蛇を切るためにナイフを創り出す。それを頭の部分に押し当てて、ギリギリッと音が鳴る切れ味の悪いナイフで切り裂いた。正確には圧し切った。


「切れ味悪! なんで?」

(そこまで考えてなかったんじゃないか?)

「もっとマシなの創れるようになったら……でも使ってるところ見られたらダメか」

(お前は使ってもいいんじゃないのか?)

「てか、普通にナイフぐらいは持っておこ。危ないし」


 親方に頼めばきっとすぐにでも作って貰えるはず。もちろん弓を諦めるわけではないが、お守り的にあったほうが安心する。


「これ食べてから帰ろうかな」


 ルドリーからの返事はなかった。その基準ってなんなの!

 魔法で起こした火を草や枝で大きくする。そこに蛇を突っ込んで丸焼きにした。

 そこそこだな。そこそこ。


 それなりに満腹になったので、置いた弓を拾って街に戻った。流石にエラさんも起きてるでしょ。


読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから評価等もよろしくお願いします!


ありがとうございます!

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