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89 荷車を引く男

 

 大臣の部屋の扉を開けると、(うろこ)の粉が(ちゅう)を舞っていた。なにをしてるんだ!


「大丈夫ですか? 今」

「大丈夫だよ! て、エラも?」

「……これが魔法なんですか……」

「魔法の話をしたんだね?」

「まぁ、他国を探しに行くとき便利かなって……ちょっと良いですか? その話になるんですけど」

「ん? 魔法の話?」

「他国の話です」


 うわぁ。良いのかな緊張してきた。でも、実際に大臣が他国の血を引いていたとしたら話を聞きたいし、それ以外にも協力してもらえそうなこと沢山あるし、ここははっきりしといた方が良いと思う。


「えー、あの、今日、他国の集会みたいなところ行ってきたんですけど」

「あー、もしかして僕のお父さんに会ったの?」

「まぁそうですね」

「うん、その通り。僕もちょっとだけ他国の血が入ってる。だから君たちに探してもらおうと思ったんだよ」

「あ、これって大臣が作った隊?」

「そうだね。エラを誘ってこういうのをやってみないって言ったのは僕。ちなみに君たちが隊を作ることを許可したのも僕」


 マッチポンプ的なことが行われていたのか。てか、認めるの早すぎて驚いちゃった。もっとデリケートなことだと思ってたけど、案外そんなに気にしてないのかな。

 そりゃそうか。だって別に他国の血を引いていたところでなんにも変わらないしな。


「で、それだけ? 他にも話しはある?」

「えっと、あるにはあるんですけど……もう遅いんで、明日にでも……」

「明日にするんですか? なら私が話をしておきましょうか?」

「え? 良いの?」

「はい。ユーリも良いよね?」

「うん。いくらでも話すよ」

「だそうですけど、どうしますか?」

「じゃあよろしく。何から何までごめんね?」

「え? 私も隊員なので当たり前ですけどね」

「じゃあまた明日」

「明日ですね。わかりましたー」


 俺はこの場を去る。あとはエラさんに任せちゃおう! いやぁ、楽出来ていいけど、流石に頼りすぎてもなんかアレだしな。それに今日は慣れないことをして疲れた。


 市場に行って食材でも買ったら一休みでもしようかな。


「これ買っていきな! 上手いから!」

「いつもごめんね〜。ほらこれ」

「ここの部分は美味いからな。特別だぞ?」


 一休みしたい……いつも荷車で買い物なんかしてたらキリがないぞ。お金はまだまだあるにはあるけど、やっぱり心のどこかで不安があるからな。

 早くドラゴンを狩ってがっぽり稼ぎたい。

 そのためには弓の練習。でも仕事をしてると中々、出ていこうと思えないんだよなぁ。

 明後日ぐらいを休みにしよう! そうしよう! 決定権は俺にあるんだ!


 重たい荷車を引きながら家に帰っているとわざわざライトをつけて絵を描いてるルイスくんが居た。声でもかけて……いや辞めといた方が良いな。

 しかしゴロゴロゴロゴロとうるさい荷車の音に気付いたルイスくんがこっちを見る。なので手を振ってみた。


「もしかして、アキラさん? これ、重たそうですね……」

「ちょっと重たいけど、いつものことだから」

「あ! いつもここ通ってますか?」

「うん。食料が無くなったら買いに行くから」

「いつも不思議だったんですよ! あの人なんであんなにご飯を買ってるんだろって」

「まぁ、ちょっと変だよね?」

「いやいや! そうじゃないんです! それで、描いたことがあるんです。アキラさんの絵」

「あ、そうなの!? マジで!?」

「見てみてください! でもこのままじゃ……私が家まで運びます! 場所も覚えてるので」

「見たいけど……運ばせるのは流石に申し訳ないよ」

「力仕事は慣れてるので、それに勝手に描いちゃったし」


 ルイスくんは俺に近寄ってきて、荷車の持つところを手で掴んだ。

 力を入れて前進しようとしているが、全然進まない。中々重たいしな。


「大丈夫? 俺の方が慣れてるから」

「ごめんなさい……なにも力になれずに」

「ちょっと待っててね。コレ運んじゃうからさ」

「ついて行きます、あ! 後ろから押しましょうか?」

「あ、それはありがたいかも。それじゃ、よろしく」


 後ろから押されることによっていつもより楽に、スムーズに荷車が動く。そんなわけで楽々家に着いた。


「とりあえずちょっとだけしまわせて?」

「手伝いますよ!」

「いや! 先に帰ってて? うん。すぐ行くからさ」

「でも……」

「だいじょーぶ! うん、ね?」

「待ってますね? それじゃ!」


 よし。いつも魔法で移動させてるので、ルイスくんが居たらやりづらくなってしまう。

 野菜やら肉やらを荷車から家の比較的冷たい場所に移していく。お手玉みたいに宙に浮いてるわ。


「うわぁ!!」

「えー! なに!?」


 驚きすぎたあまり魔法が止まった。落としそうになった食材をギリギリ地面に着かないくらいで再起動させる。ふぅ……あっぶねぇ。


「今、野菜が浮いてた……」

「ルイスくん!? どうしたの!?」

「野菜が……やっぱりアナタが?」

「……ちょっと、やっぱり手伝って? 落としちゃってさ? それで宙に浮いてるように見えたんじゃないかな?」

「なるほど。でも、落とした時の感じじゃなかったと……」

「よし!! 作業やるぞ! 手伝ってくれたらちょっとあげるよ!」

「え? いいんですか?」

「もちろん! ははは!」


 笑っとけ!!!わっはは!

 ……またバレそうになっちゃったな。なんかルイスくんに見られることが多いんだけどなんで?



読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークから評価等もよろしくお願いします!


ありがとうございます!

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