86 プレゼントは喜ばせたい
目が覚めた時にはカエデさんは居なくなっていた。仕事に行ったのだろう。
台所を見てみると朝ごはんも用意されている。しかし今は昼なので昼ご飯だ。
せっかくの休日だから、カエデさんにお詫びの品でも買っておこう。それで許してもらえるのかは微妙だけど。いや、許してくれるかもしれないけど……
ひとまずアイラのところ行こっかな。その前にご飯食べるか。食事をしながら、何を買おうか迷う。
お花とかはどうかな。流石にはずいから辞めとこうかな。それとも……行ってから考えるか。
食器を洗いながら昨日の狩りのことをぼんやりと思い出す。
前とは違う剣の感覚が楽しくて結局のところはただただ狩りに行きたくなっただけだった。
弓矢練習しよ。昨日のやつも家の中に置いてあるし、となると、買い物したあとは狩りかな。いや、その前にご飯食べちゃう?
なんか楽しくなってきたな。
外に出かけると高い太陽がこんにちは!ってしてくれる。うん。
ついでに親方にも挨拶しよう。だから先に雑貨屋を見ておこう。多分居ないと思うけど。
「いらっしゃいませ」
「どうも」
「アナタですか。ミリアさまならいらっしゃいませんよ」
「そっか。じゃあ買い物だけ」
「……どうぞ」
何買おうかなぁ。改めて見ると色々ある……まぁ、この店に来ることも多いから、改めてって感じでもない。
雑貨屋なので数日の間に品物がガラッと変わっているはずもない。だからタグュールさんへのお土産を選んだ時と同じように悩むことになるだろう。
アレもエラさんが選んだものだから……何をあげたら喜んでくれるのかな……
うーん。うーん。と悩んでいるとアヤカが後ろから肩を叩いてきた。驚いてビクッてなった。
「うわぁ! なに?」
「え? そんなに驚く?」
「いきなりだったしなぁ」
「なにで悩んでんの?」
「えっと〜、カエデさんへのプレゼント? みたいな」
「……へぇ、そっか」
「あ、そういえば俺、休みが取れるようになったんだよ。だから、予定空いたらハヤトと一緒に……」
「でも忙しそうじゃん。カエデさんのご飯も作ってんでしょ? 確か」
「え? 誰から聞いたの?」
「ミリアさん。あの人良い人だよね」
「それは間違いない。マジで」
「てか、意外マメなんだね。プレゼントとか送るとかね」
「いやぁ、ちょっとさ……悪いことしちゃったから」
「えー? 何したの?」
「勝手に……」
今、夜中に外へ出かけていたことをナチュラルに言いそうになった……危ねぇ。気を付けないと。
「勝手に?」
「勝手にー、えー……ごめん。ミスった。勝手にじゃねーわ」
「じゃあなに?」
「仕事でさ。家に帰れなくて。連絡も出来なかったからさ」
「あんたって城の仕事だっけ? そんなに大変なの?」
「昨日は特別。いつもはそこまでじゃないよ」
「連絡ぐらい……ケータイないもんね。でも、別にお城から家そこまで遠くないじゃん。直接行けば良かったんじゃないの?」
「手が離せなくて……」
「ふーん……まぁそれでプレゼントね。良いんじゃない? 分かんないけど」
「なにが良いかな?」
「自分で決めなよ。そういうとこあるよね。昔から」
「確かに……」
確かに昔っから人に頼れるところはわりかし頼ってきたな。でもなに買えばいいの? カエデさんってなにが好きなの?
俺、カエデさんの好きなものほとんど知らなくね? 知ってるとすれば、丘からの景色が好きだったってことと……裁縫をやってたこと、他には……
ダメだ! ピンッと来るものがない!
「……プレゼントって先になにが欲しいか聞いても良いのかな」
「良いけど、でもちょっとウザいよ」
「え? なんで?」
「だって買ってあげた感があるじゃん。許してほしいからなんだなぁって思っちゃう。貰いづらいし」
「まぁ、そうかも」
「喜ばせてあげようってのはないの? それが一番大事じゃない?」
「……めっちゃ正論言うじゃん。そうだね」
喜ばせる。そうだよね、プレゼントなんだから喜ばないと意味ないよね。確かに例えどんな物を買っていったとしてもカエデさんは多分、許してくれる。なんだったら今も怒ってないかもしれない。
だからこそ喜んでもらわないとなんの意味もないな。
……でも、カエデさんが喜んでくれるもの、俺分かんないよ!
あまりにも長居し過ぎてるような気がしてきたので、先に親方に会いに行こう。またもう一度戻って来ればいい。
「散歩でもして考えるわ」
「まぁ、なんでも良いんじゃん?」
「なんでもはダメでしょ」
「どうだろうね?」
「じゃあまた後で」
「いってらっしゃい」
このまま悩んでも多分決まんないな。次に来た時、一番綺麗な置物でも買おうか。それぐらいしか思い付かないし。
パタパタと歩いていると、絵が沢山飾ってある画廊? みたいな美術店があったので入ってみる。
近くの滝が描かれたものや、セントラルの街の風景など、まるで写真みたいに緻密に鮮明に描かれている。
その中で丘から見た街の風景画があったので、それを買うことにした。いや買っておいた。
両手で抱えないと持ち帰れないほど大きかったので、帰り道にもう一度、ここに寄ることに決めた。
……案外すぐ見つかった。
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