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84 耳障りな音

 

 月と星しか明かりがない中、山の頂上の辺りまで来るとルドリーが話しかけてくる。そういえば故郷(こきょう)みたいなもんか。


(懐かしいな。アイツはまだ生きてるか……)

「アイツって喋るドラゴン? 話したりしてたの?」

(我もあそこを住処(すみか)にして長かったからな。話すこともあったよ)

「ドラゴン同士ってなんの話するの?」

(大した話じゃない。暇つぶしだ)

「へぇ、まだ居るかな?」

(居るだろうな。死んでなければ)

「死なないでしょ?」

(アイツは良く言ってたよ。もう先が無い、神に見放されたってな)

「それ俺たちの前でも言ってたよ」

(ふっはは! そうかそうか)


 ルドリーが居た広場に降りると、魔法の明かりで一帯(いったい)がピカッと照らされた。これもスティーかな。


「それじゃドラゴン倒そうか。ここに居たら来るかな?」

「これだけ目立ってればくるだろう。少し休憩だな」

「来たら教えてよ? 僕は彼に会いに行ってくるからさ?」

「そんなことする必要ないぞ。もう来たからな」

「えー、じゃ……やっといて? ごめんね?」

「はぁ……お前は……」

「君たち二人なら問題ないでしょ! ね?」

「そういうことじゃないんだよ……」


 大臣はスタスタと頂上へ歩いていく。行先(ゆきさき)は喋るドラゴンだ……喋るドラゴンだと言いづらいから名前付けてほしいなぁ。

 あ、そういえば、グェールいるじゃん。これ倒したら俺たちも行こうかな。


「とりあえずやりますか?」

「そうだな、ずっと楽しみにしてたんだ!」


 血を()う蛇の群れ。そしてそれに向かって突進していく親方。

 俺はまだ大剣の感覚が残ってる。そのせいでなんとなく躊躇(ためら)っていたが、親方は慣れない剣でも関係ないようだ。


 ズサズサと蛇に剣を突き刺したり、切ったりして一人でも十分なくらい見事に戦闘している。それを見ていた俺の背後(はいご)から、ギャャーッという飛行タイプのドラゴンの声が聞こえてきた。

 蛇は親方に任せて俺はこっちをやるか。


「久々だね」

(楽しいか?)

「うん」


 楽しくてしょうがないよ、マジで。いやぁーー! やっぱり俺は本を読むとか人に質問するとか向いてないわ。将来は必ず戦闘系の仕事に()こ。

 (ななめ)の線を引きながら俺に向かって真っ直ぐ近づくドラゴンの攻撃をかわして、柔らかい腹部(ふくぶ)に剣を下から上へと突き上げる。

 素早く剣を抜いて、次から次へと来るドラゴンに(そな)えた。


「ドラゴンって夜行性? 量多くない?」

(種類による。だか、やはり夜の方が活動的になりやすいな)

「ルドリーは?」

(我らは肉体を持たないからな。時間に関係なく眠る)

「良いなぁ……」

(良いところばかり見てるからな。おい、ドラゴン来てるぞ)


 今度は鳥みたいなタイプのドラゴンが高い草の中から出てきた。飛ばないけど翼が付いているコイツらは目の焦点が合ってなかったり、いきなり奇声を上げたりとちょっとキモい……多分、グェールもこのタイプのドラゴンだと思われる。


 キイィィ!! キイィィ! と耳が痛くなるほど甲高(かんだか)い声で鳴くドラゴンの対策は我慢する(ほか)にない。我慢して我慢して前に進み、その音の元を断つのだ。

 ならば早い方がいいので、それらに向かって走り始める。

 驚いてまん丸になった目玉を頭ごと切り()くと、騒音は一つだけ消えた。


「うるさいなぁ!」

(魔法はどうだ? なんか考えろ)

「あぁ!!! 確かに!!!」

(お前もうるさいぞ……)


 静かになーれ、静かになーれ。いや、こっちに耳栓とか付けようかな。耳にフィットする耳栓のイメージ……おら!

 耳に差し込まれた耳栓はあまりにもフィットしすぎていて、辺りが無音になる。逆にやりづらいかも……

 しかしやっぱり体から一つ痛みが消えるというのは間違いなく良いことだったので、空中に向かって無駄に吠えているマヌケなドラゴンたちの首を雑草と一緒に刈り取れた。


「これで終わり? まだ居る?」

(ひとまずはもう来ないだろ)

「ふぅ……親方のところ行こうかな」


 親方と合流し、ひとまず使用感などを話し合う。


「どうだった? 前と比べて」

「俺の場合は前デカかったじゃないですか? 剣が。それのせいでちょっと違和感ありましたけど、問題はないと思いますね」

「私は初めてちゃんと使ってみたが、どうも重たいと感じる瞬間があるんだ。お前にはないのか?」

「重たい? まぁ、でもそれはしょうがなくないですか? 実際重たいですし」

「うーん……何とかしないとな。あとは鎧も関節(かんせつ)可動域(かどういき)が広がれば文句はないんだがな」

「確かに、それはそうかも」


 やっぱり親方はこういうのが好きなんだな。一族がどうのこうのみたいなことを言っていたような気もするけど、それ以上に親方自身がこの鍛治という仕事を気に入ってる感じだ。


「……大臣帰ってきませんね。行ってみます?」

「そうだな、見に行ってみよう。流石に少し遅い」


 ドラゴンの数も多かったし、時間で言うと三十分くらいは戦ってたような気がする。そんな長い間、ずっと話してたのかな?

 大臣に会いに行く途中、グェールに声をかけた。


「グェールって居ますか? 静かなんで居ないのかなって」

「居るが眠ってるみたいだぞ」

「へぇ、眠るんですね」

「いや、私の生活に合わせた結果こうなったみたいだ……少し申し訳ない」

「グェール起きたら喋るドラゴンにも名前付けてもらいましょ? みんな名前あるから」

「そうだな。アイツはそういうの好きだもんな」





読んでいただきありがとうございました!


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