83 元気ない?
親方の鍛治屋? 鍛治……工場? まぁ、物置の地下に行き、三人とも鎧を着た。
それぞれ剣を拾う。まだ二人は慣れていないのかずっと片手に持ちっぱなしだ。腰に差せるようになってるよ。
「これからどうするんですか?」
「スティー? 消してくれる?」
『分かった』
「お、消えてく」
スティー居たんだ。てかテンション低くね? なにが有ったんだろう。
大臣の近くに長く居過ぎて性格まで変わっちゃったのかな? やっぱりこの人怖いな。
「あ、僕の部屋にも寄ってかない?」
「どうしてだ?」
「ミリは知らないか。君は知ってるでしょ?」
「ん? 何の話ですか?」
「ドラゴンの話。とにかくついてきてよ」
空飛ぶドラゴン? を使って飛びながらドラゴン狩るの?……うわぁ、心がざわざわとたぎってきたような、きてないような。そもそもそんなことするより地上で戦った方が良さそう。
俺の思った通り、大臣は縄を取りに行っていた。俺にはもう渡したはずなのにまたくれた。
「これってどこに有るんですか?」
「うーん。頼めば作ってもらえるんだよ? 大臣だからね」
「あぁ、そうなんですね」
「……もしかして空を飛ぶのか?」
「うん。ミリにも協力してもらったじゃん」
「もう試したのか?」
「大丈夫だったよね?」
「はい。安定してましたよ」
「なら良かった。バレないようにこれも透明にしてくれ」
『はいはい』
やっぱりなんか変だよなぁ。元々ドライな方だったかもしれないけど、ちょっと冷た過ぎる気もする。
そもそもなんでスティーって俺のところに来たんだっけ? 魔力が見えたからだっけ?
……親方の話だと迷い人を導くみたいなお伽話があるらしいけど、迷い人って俺じゃなくて大臣のことだったのか?
「どうしたの? 何か考えてるみたいだけど?」
「え?……いや……なんかスティー元気無くないですか? 久しぶりに会ったんですけど」
「ん? そうかな。僕は変わらないと思うけど」
「確かにちょっと様子が変だな。コイツに何かされたのか?」
『……気にすんなよ。ただ……』
それからスティーはだんまりと静かになってしまった。何があったんだよ! 絶対何か有ったはず。
「まぁ、いいじゃない? 気にしないでって言ってるしね?」
「……そうですね。まぁ、とにかく今は外行きますか?」
「そうだね! 夜遅くなり過ぎても嫌だもん」
心にわだかまりを抱えたまま、三人で透明人間として街を歩く。
もちろん寝ぼけ眼の門番にはバレることなく、すんなりと街の外に出れた。
「……もうはじめます?」
「もうちょっと奥行こう? そうだ! 山まで行かない?」
「山? どうして?」
「僕ね? もう一度あのドラゴンと話してみたいんだよ。ついでにさ?」
「分かった。そこなら人が居るはずもないからな」
「決まりだね。じゃあ行こうよ!」
透明なままで、トボトボと山までに歩く。悪いことしてるみたいな気持ちに……してるか。
剣で倒した方が早いし、効率が良いのにどうして弓矢にこだわってるんだろ。そんなに悪い気が出ることを気にしてるの。
それとも普通に弓矢の方が安全だから適当な理由をつけてみんなが使わないようにしてるとか。それはまぁ、ありそう。
「弓矢を使うようになったのっていつ頃から何ですか?」
「ん? そうだねぇ。一応、本にはセントラルが出来た当初からって書かれてたけど、違うんだよね? スティー?」
『そうだな』
「確か……スティーが言うには二百年くらい前かな? それでも歴史あるけどね?」
「へぇ、セントラルってそんなに長く続いてるんですね」
「そう……しかも、その間ずっと王の一族が政治を仕切ってるんだって?……ありえないよね?」
「ありえないんですかね? なんか沢山、子供産んでたら出来そうっちゃ出来そうですけど」
「だから前にも教えただろ。剣を使って巨大なドラゴンを倒した奴らが今の王族に成り代わったんだってな」
「ミリの言ってることの根拠は無いけどね? でも、王族が代わっててもおかしくは無いかな」
なんとなく親方が不機嫌になりそうな雰囲気を察知したので、早めに話題を変えようかな……
「……そういえばドラゴンは? 倉庫じゃなくても呼べるんですか?」
「あ! 忘れてた!……ははは!」
「え? じゃあ戻ります?」
「いや、ここからでも呼べば来るんじゃないかな? 試してみる?」
そういうと手をメガホンみたいに口に当てて、大声を出した。
「おーーい!!!」
大臣って普段の静かな印象と違って意外と声が出る。確かに体格良いし、力も強いしで当たり前といえば当たり前なんだけれども。
「お、アレか?」
「やっぱり耳が良いなぁ」
この前とおんなじ三匹が空から地上に降りてきた。
俺と大臣は前と同じ色を選んで、親方はエラさんが選んだ赤いドラゴンに乗る。俺が青で、大臣が緑。
「ここからはドラゴンで移動しよう。みんな疲れたでしょ?」
「……行きますか?」
「私は初めてだな。楽しみだ」
「スティー? もう戻して良いよ」
体が色を取り戻した。ここまで来れば誰も居ないでしょ?
俺はちょっとだけ恐怖心を感じつつも、縄をグルグル巻きにした。
大臣は素早く支度を終えて、飛び立つ。
俺も親方に飛び方を教えてからドラゴンの頭に手を付け、「飛べ」と言った。
……夜だと今までの倍くらい怖いよぉ! はぁー! 早く目的地に着かないかな……
後ろから来た親方は俺よりも楽しそうだった。
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