81 一生ついて行く
そこそこ真面目に極彩色の花々が描かれた布を巻いたエラさんと他国の集会でなにをするのか話していた。
質問する内容やどんな風に立ち振るまつのか接するのかを大体決め終わると暇になる。なにしよ……
「あ、そうだ。明日は休みね? で、明後日がタグュールさんのところ。一応朝はここに集合でいい?」
「はい」
「ちょっと、今日話すこともうない? 解散にする?」
「あ、提案があるんですけどいいですか?」
「うん。もちろん」
「大臣さんのところに行って、ドラゴンを外界探索に利用しても良いか許可を取りにいきませんかー? きっと必要になる時が来ると思うので」
「じゃあ大臣のとこ行こっか」
「許可取るんですか?」
「うん。許可を取りに行く」
そんなわけで城の廊下を歩いている。特に何事もおこることなく大臣の部屋に入ると、中には親方が居た。珍しい!
「あ、親方」
「お前か。そちらの女性は?」
「私ですか?」
「そうだ」
「エラです。隊長が率いる外界探索隊の隊員ですね」
「なるほどな……それでは帰ることにしよう。お前! 今日、ウチに来い」
「え? まぁはい。分かりました」
何事? きっとアレかな? 外にドラゴン狩りにでも行くのかな?
「で、君たちは何しに来たの?」
「えっと、この前ドラゴン乗ったじゃないですか? アレについての話なんですけど」
「あぁ、アレね? また使いたいの?」
「まぁ、そんな感じですね」
「勝手に使っていいよ。ほら君たちの分の縄もあげるから」
「え? 勝手に使っていいんですか?」
「うん。だってドラゴンなんていくらでもいるじゃない?」
いつものように笑みを浮かべながらちょっと怖いことを言う大臣。確かにいくらでもいるんだけどさ……
「じゃあ、お邪魔しました」
「じゃあねー? 国探し頑張ってね?」
大臣の許可? を得た後は仕事に戻る。明後日までに話すべきことも話し終わるとちょっと暇になった。
「隊長は今日、ご予定がありましたよね?」
「ん?……あぁ、親方のところに行くやつね」
「はい。それならもう終わりにしますか? 少し早いですが」
「そうしよっか。じゃあ、終わりで」
まだ夕方だけど、もう親方の家行っても大丈夫かな? 迷惑じゃないかな。
いいか、ちょっとぐらい待たされても。
そんな感じで親方の家の扉をトントンと叩く。あれ? 前に勝手に入っていいって言われてたような……
もしこれで親方が来なかったら、入ろう。いや、もう一回ぐらい叩こうか。
……トントン……
来ない……いや、もういいや! 入っちゃおう! 良いって言ってたよね? 記憶違い?
躊躇いながらキキーッと扉を開けて、物置へと向かう。家の中には誰もいる気配がない。居たとしても地下に居るんだろう。
スタスタッと土の階段を降っていくと、地下とは思えない明かりが付いていたので、ここに親方がいるということが分かった。
「あ、お邪魔してまーす」
「お! 早かったな!」
親方はちょうど鎧の試着をしていて、しかもその鎧を脱いだタイミングと俺が来たタイミングがぴったり合ってしまった。
「あ! ごめんなさい!」
「ん? 勝手に入っていいと言っただろう? 謝る必要なんてない」
「いや、そういうことじゃなくて……」
「どういうことだ?」
そうだった。親方ってこういうの気にしないんだった……気にしないんだったらもうちょっと……いや! 何考えてんだ! ダメだダメだ!
「俺、上に居ますんで、着替え終わったら教えてください」
「そんな面倒な……だが分かった。少し待っててくれ」
俺もそろそろ慣れないと……でもこんなのに慣れたらダメじゃないか? 倫理観とかモラル的に。同じか?
階段の一番上で座りながら待っていると、鎧を脱いだ親方が来てくれた。
「もういいぞ。いや、ここで話すか」
「なんで呼ばれたんですか? 俺」
そう、ここに来た理由は親方に呼ばれたからだ。たまたま出会ったのに命令みたいに呼ばれた。
「お前、休みはいつだ?」
「え? まぁ、明日です」
「お!! なら今日の夜ドラゴン狩りに行こう!」
「えー、それってバレないようにですか?」
「その通りだ。カエデにもバレないようにしてくれ」
「でも、街から出て行く時に門番が居るじゃないですか。それはどうする?」
「魔法を使えば透明になれる。スティーも来てくれるから魔力の心配はしなくてもいいしな」
スティーが来る? てことはもしかして……
「え、それって大臣も来るってことですか?」
「あぁ、アイツも来るぞ。だからこれから会いに行こう。まだ街の外にも人が沢山いるだろうしな」
「……」
「ん? もしかして乗り気じゃないのか? もし、ダメなら」
「いや、行きたいんですけど……」
「なんだ?」
行きたいけど俺、弓の練習とかしたいんだよなぁ。でもそれを目の前の親方に言うのはちょっとだけ勇気がいる。でも、親方なら大丈夫かな。
「親方とかは剣使うんですよね? なら、俺、弓矢使っても良いですか?」
「なに?……分かった。ならそうすると良い。遠距離は任せたぞ?」
「はい!……あの、弓矢ってどこで貰えば……」
「それもついでに取りに行こうか。そうと決まれば出発だ!」
親方は自信満々に前に進んでいく。その背中を見ているとアイラが親方に心酔している理由が分かった。
親方! 一生ついて行きます!
読んでいただきありがとうございます!
よろしければ下の☆マークからの評価などもよろしくお願いします!
ありがとうございました!