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80 他国の会

 

 玄関の方からガチャッと音がした。タグュールさんが帰ってきたのかな。


「すみません、お待たせして。あの、参加しても大丈夫だそうです」

「あ、ホントですか? ありがとうございます!」

「ただ会といってもそこまで大きな規模じゃないですよ?」

「いやでも、ありがたいですよ!」


 ありがたいのは間違いない。だって他国なんてどうやって見つければいいのか分からないし。少しでもヒントになればそれでいい。


「次に会が開かれるのっていつですか? そこに参加出来たらなぁって」

「えー、三日後ですかね」

「どこですか?」

「うーん……なんとも説明しづらいところにあるので、まずは私の家を(たず)ねてもらえたらなと」

「三日後また来ます。エラさんは大丈夫?」

「はい! もちろんですよ!」


 それからもタグュールさんには沢山の質問をした。すると日が暮れてきた、ので帰ることにする。


 食文化のことや、ファションのことなどは前から大体知ってるようなことが多かった。

 新しい知識としてはウィールドが王政ではなく民主主義的な制度(せいど)が取られていたということ。それでも元々の身分によって有利不利があるみたいだったけど。

 他にもドラゴンを信仰してる宗教があるんだとか、武器はやっぱり弓矢が主流になっているんだとか。


 とにかく質問はいくらでも浮かぶので、今度またこよう。三日後の会合(かいごう)の時にその話もしておかないと。


「それでは今日はありがとうございました」

「いえいえこちらこそ」

「また三日後で」

「はい、お気をつけて」


 前に出会った髪の長い女性に見送られて外に出る。いやぁ……ずっと同じ姿勢だったから疲れた。

 それはエラさんの方でも同じだったようで、グググッと背筋(せすじ)を伸ばしている。


「おつかれ。じゃあここで解散にする?」

「そうしますか? 今日はご飯は……」

「いや! 今日は家で食べようかなー!」

「残念ですねー。でもタグュールさんが本当の他国人だとしたら相当近づいた気がしますね」

「そうだね。でも話も具体的だったし、本物じゃないかなぁ」

「まだ分かりませんよぉ? とにかく鵜呑(うの)みにすることなくいきましょう!」

「それはそうかもね。とりあえず今日はおつかれ、また明日?」

「分かりました! それでは」


 その後市場(いちば)で適当に食材を買って帰った。

 その食材の仕込みをある程度終わらせた後、家の中、一人でボーッとしているとルドリーが話しかけてくる。


(ドラゴンの巣か。我には心当たりがあるぞ)

「マジで?」

(メスのドラゴンを中心とした群れだ。女王があらゆる指示を出している)

「マジで蜂みたいだな」

(そもそもメスのドラゴンは少ない。だから巣が出来るのも珍しいのだ)

「へぇ……でも、なんでタグュールさんは生きてんだろうね」

(女王の指示だ。理由は知らないがこれだけは間違いない)


 へぇ、女王か。そいつもルドリーとかみたいに喋れたりすんのかな。

メスが少ないって話もしてたけど、そうなるとルドリーって独身? ドラゴンの未婚者(みこんしゃ)のことも独身っていうの?


「……ルドリーって奥さんとかいるの?」

(……さぁな)


 居そうだなぁ。そういう重たい過去を背負ってそう。

 一人の部屋で壁に()りかかりながら天井を見るでもなく見て話を続ける。


「ルドリーは冒険行きたい? それともこのままがいい?」

(どちらでも良い。どちらにせよお前が選択することだ)

「女王って大きいかな?」

(大きいぞ。たらふく栄養を(たくわ)えているし、常に安全な場所に身を隠しているから死なずに成長を続ける)

「強い?」

(そもそも辿り着くまでに無数のドラゴンを倒さなければならない。そう考えると強いな)


 戦ってみたい気持ちが僅かに湧き上がってくる。けど! 無理だなぁとか、めんどいなぁってのもある。

 でも剣を握った時の感触(かんしょく)って忘れられないんだよな。


「……まだかなカエデさん」


 ルドリーが応答してくれるかと思って呟いたけど、どっか行っちゃった。世間話には乗ってこないらしい。


…………


「ただいま帰りましたぁ。あれ? どうしたんですか?」

「……あ、おかえり……寝てた」

「お仕事お疲れ様です! すみません帰ってくるのが遅れて」

「いやいや、カエデさんもおつかれ」


 仕込んであった食材を炒めたり、盛り付けたりしてテーブルへと運ぶ。いつもと同じだ。


「いただきまーす」

「いただきます!」

「カエデさんって他国の人見たことある?」

「ないかもしれません……」

「実は他国の人の(あつ)まりに呼ばれたんだよね。あ、あんまり人に言わないでね」


 ならなんで話したんだ。まぁ、カエデさんは信頼出来るし大丈夫だろうけど。


「スゴイですね! それならいつか他の国も見つかりそうですよね!」

「そうだね、うん。このまま上手く行けば見つかりそうかも。カエデさんの方は仕事順調?」


 転職活動を手伝えなくなった負い目から仕事の話を聞けてなかったけど、流石に気になってきた。


「はい! 王子様とも仲良くなれて……グェールさん? のお陰です!」

「良かったぁ。俺のせいで仲悪くなってたから……」

「そんなことないですよ! アキラさんのせいじゃないです!」


 必死に否定してくれてるけど逆に辛い。中途半端に手を出したせいで関係が(こじ)れちゃったんだよ。あぁー、申し訳ない!

 他国が見つかったらマジでちゃんと手伝おう。とにかくカエデさんが休みをもっと取れるようにするくらいならなんとか出来るだろ!


「………もうちょっと待ってて……」

「え?」

「あ、今、ルドリーに話しかけられてて」

(話しかけてないぞ!)

「そうだったんですね。私もルドリーさんとお話ししてみたいかも……」

「……いつかは出来るようになるかも。てかやろうと思えば今からでも出来るんじゃない?」

「どうやるんですか?」

「ルドリー? カエデさんになにか質問とかある?」

(いきなり質問なんてあるわけないだろ)

「……質問はないって……ごめんやっぱ難しいかも」

「そんなに落ち込まないでください……私は大丈夫ですよ?」


 ルドリーも協力してくれていいのに……やっぱり契約(けいやく)するしかないのかな……

 食器を洗いながらルドリーの力を許可しようと試してみたが、ダメだった。きっかけがないと無理なのかな?



見てくれてありがとう!

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