79 ドラゴンの巣
タグュールさんへの手土産に今度はお菓子を持ってきてみた。セントラルでは伝統的なお菓子でクッキーみたいな見た目だけど中にハーブとかが入って、ちょっとだけ塩気もある。
俺はそこまで好きじゃないけど、定番の菓子折り的なやつらしいので持ってきた。
ちなみに今日のエラさんの布は真っ白だった。
「それじゃ、いくつか質問させてください。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
「まずはどうやってセントラルにやって来られたんですか?」
その道を辿れば、きっと他国へと行けるはず!
「それが、ずいぶんと昔のことで曖昧なのです……しかもよく分からなくて……」
「それでも良いですよー?」
「それでしたら、お話しします。あれは私が……友人と狩りに出掛けていた時のことです」
そっちでもドラゴン狩りの文化があったんだな。武器とかは何使ってたんだろ? それも後で聞こうか。
「しかし中々ドラゴンが見つからなかったのです。そこで私たちは森の奥の方へと進んでいってしまいました。これがいけなかった……」
「「……」」
「森の奥には山を覆い尽くす、ドラゴンの巨大な巣がありました。それはまるでハチの巣のようになっていて、無数にある穴の一つ一つに4、5匹のドラゴンが住んでいたのです」
「……エラさんはそんな話聞いたことある?」
「えーっと……ないかもしれないですね。ドラゴンは基本的に簡易的な巣しか持たないとされています。もし、本当に巨大な巣があるとしたら、セントラルのドラゴンもそこから来てるのかもしれません」
「……続けても?」
「あ、すみません、話の途中に……」
「お気になさらず」
山ぐらいデカい巣かぁ。流石にちょっと怖いなぁ。
「えー、それを見た私たちは一心不乱に逃げ出しました。巣を発見した時、幸いにもドラゴンにはバレていなかったみたいでしたから」
「なるほど」
「しかしその途中で私が別のドラゴンを踏んづけてしまったんです。そのグワーッという鳴き声が巣の方にまで届いてしまったようで…….」
絶望だぁ……それからどうしたんだろ。
「背後から聞こえてくる音が次第に増えていき、このままでは二人とも死んでしまう……と思ったので私はおそらくまだ見つかっていなかった友人と二手に分かれることになりました」
「……」
「思った通り、ドラゴン達は私の方にだけ来ました。必死に逃げていたのですが一匹のドラゴンに捕まってしまいまして……」
「……はい」
「これはもう……お恥ずかしいばかりなんですが……そこから先の記憶が……あの、気を失っていて……」
「……それは目覚めたらここに来ていたってことですか?」
「はい……肝心な部分が曖昧で申し訳ない……」
「いえいえ、ありがとうございました!」
普通に考えたら死んでるよな? それだけ沢山のドラゴンがいたら腹減ってるやつもいるだろうし、なんで生き延びることが出来たんだ?
……もしかして死んでるとか? 俺も死んだことでこの世界に来た訳だし、いやぁ……なんかその可能性はあんまり考えたくないかも……
「気を失ったことで死んでると勘違いして食べなかったとかですかね? でも食べられちゃいますよね? 普通は」
「やっぱり巣が関係してるのかな……巣を見たから生きてる?」
「確かにドラゴンの知性であれば何かしらの決まりや規則のようなものがあってもおかしくないですね。しかし、そうだとしてもセントラルに来た理由が分からないですね」
「隠す為? だとしたら殺せば良いもんね……いや分かんないなぁ」
「蜂のように女王がいるのかもしれませんね。それがセントラルへとタグュールさんを運ばせた」
「……すみません、私が気を失ったばっかりに」
「いやいやそんなことないですよ。ご無事で何よりです」
他にも質問考えて来てたけど、これが気になってしょうがないな。もしかして考えても分かるようなことじゃないのかもしれないけど、頭から離れない。
「あ、ただ気を失う直前に、なんていうんですか? 地震? みたいなのが起こってましたね」
「地震?」
「……それだと……地震でパニックになったドラゴンがタグュールさんを食べずに投げ飛ばした……これが一番納得出来そうな感じかなぁ」
「それなら分かるかも。この世界って地震多い?」
「たまぁぁに起こりますけど、私も今までで五回ぐらいしか経験したことないです」
「え? ならドラゴンがパニックになってもおかしくないか」
ひとまずこの質問はこれぐらいにしとこうかな。ここで二人で考えすぎてもタグュールさんにも迷惑かかるだけだし。
「次の質問に移っても大丈夫ですか?」
「どうぞ」
「えっと……他国の人を探す方法って聞いても良いですか?」
「……これはあんまり人には教えないでくださいよ? あの実は……我々はセントラル外の人間は定期的に会合を開いて会っています」
「えぇ! ホントですか!?」
「休日や祭日になると予定の空いてる人がそこに集まるのです」
「エラさん、知ってた?」
「いや、知らなかったです! 私は村から来たのでそんなことがあるなんて知らなかった……」
「ん? もしかして君も私たちと同じ?」
「それは私が他国人かってことですか? だとすると半分は当たりです。私にも他国の血が入っていますよ?」
「……一応、俺も違う世界から来たので……他国といえば他国です……」
ダメ元で言ってみた。
俺たちも参加させてくれないかなぁ。そこに行けたら後は楽に他国を見つけられそうだし。
「そうでしたか……それなら少しお時間をください。もしかすると君たちにも許可が得られるかもしれません」
「あ、ありがとうございます!」
「絶対ではないですよ? 期待はしないでくださいね」
タグュールさんは立ち上がり、部屋の外に出て行った。こんなに進むとは思わなかったぁ。
「見つかりそうだね。他国」
「まだ分かりませんよー? ここからが大変そうです」
実際に行かないと見つけたことにならないならそうかも。
タグュールさんの帰りをワクワクしながら待つことにした。
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