78 パーフェクト
地上に戻るとやっぱり安心する。まだ死にたくないよ!
「どうだった? 問題なさそう?」
「そうですね。結構スピード出てましたけど、安定はしてたと思います」
「なら良かった! 僕はまだ作業があるから帰るね? はは!」
「あ、お疲れさまです」
大臣は俺たちとドラゴンを置いて街へと帰っていく。てか、ドラゴンは!? このままで良いのかな……
まだ夕方にもなってないし、これからどうしようか。
「はぁ……不思議な感覚でしたねー?」
「そうだねー。あ、そういえば今日の朝どこに行ってたの?」
「へぇ? 朝ですか?」
休みだと思ってなかったんなら居なかったのはちょっと不思議だ……聞いてみてから思ったけど人の予定を聞くのって失礼だったりするの?
「あ、前の大臣さんのところに行ってました」
「そうなんだ……」
俺はそれを聞いてどうするつもりだったんだ? 自分から聞いた事なのに会話に困ってるじゃないか……
このまま沈黙が流れたら気まずいので、話題を考えないと……
「……明日はタグュールさんのところだよね?」
「はい、そうですね」
「それじゃ、今日はもういいかな……大臣も居なくなっちゃったしね」
「あ! それならご飯行きません? どうですか?」
あぁ、たしかにちょうどいい時間だな。いや、お腹空きすぎたぐらいだ。行こうかな。
「じゃあご飯行こうよ。ハヤトのところでいい?」
「いや! 出来ればもう少しゆっくり話したいです。紅茶とかでも飲みながら」
「良いね……お店は任せちゃっても良い?」
「ご飯行きますよね?」
「うん、よろしく! お腹空いたしね」
「任せてくださいよー、行きましょう!」
エラさんについて街の中に戻る。
そのままついて行くと、お洒落なカフェみたいな店に連れてかれた。この世界にもこんなところあるんだなぁ。
「いらっしゃい……あ、エラじゃない!」
「ただいま〜」
「隣の人はどなた? ハヤトくんじゃないよね?」
「私が所属してる外界探索隊の隊長さんです」
「あ、よろしくお願いします、アキラって言います」
この方はどなた? まさかこんなにアウェーな場所に連れて来られるとは思ってなかったからびっくりしてる……話の感じだとハヤトもここに来たことあるのかな……
「知り合い?」
「そうですねぇー。知り合いというかもう家族ですね。母親です」
「あ、はじめまして……」
「どうも! いつも娘がお世話になってます!」
「いやいや、こちらこそ」
この世界でもこういうやり取りあるんだな。
「じゃあ、早速ですけどご飯食べます?」
「お腹空いたし食べようか。何あるの?」
「食べれないものってないですよね? あったりしたら今の内に教えておいてくださいな」
「基本的にはなんでも食べれるよ。うん」
「ならばお母さん、任せます」
「分かった! 待っててね?」
一体、何が来るんだと少し不安に思いながら待っていると、エラさんの母親がなんか山盛りのパフェを抱えながらやってきた。
なんかホイップクリームみたいなやつとかチョコが付いた棒とか色々入ってる……え、これ主食?
「これ、お昼ご飯?」
「はい。え、もしかして食べれませんか? だとしたら私たちで食べる事になっちゃうんですけど……」
「いや、塩っぱいものを想像してたからさ」
「あぁ! それハヤトくんも言ってましたね。塩っぱいものだと思ってたって」
「やっぱりハヤトも食べたのか……ちなみに食べ切れてた?」
「はい。二人で食べ切りました。ハヤトくんは足りなかったみたいで、串焼きとか帰り道に買ってましたよ?」
「……俺も頑張るか……」
ハヤトが全部食ったんなら俺も食わないと。負けた気になるし。
「い、いただきまーす」
「どうぞ! 感想とか聞かせてください」
山盛りのパフェにふさわしい大きなスプーンで生クリームを口に運ぶ。
……うーん……甘ーい……生クリームの味だぁ……
「どうですか? 美味しいですかね?」
「うん……おいしい……」
「私も頂きますよ? 良いですか?」
「もちろん食べて、ドンドン食べて良いよ……」
布を外すとパクパクと口にスプーンを運んでいくエラさん。これ、ハヤトの時もほとんど一人で食べたんじゃねーの? そんな感じがするぞ?
「遠慮なさらず食べてください? 果物とかも入ってますよ?」
「じゃ、それ食べようかな」
甘くなさそうなスポンジケーキ的なやつとか果物とかを選んで食べていると、笑われてしまった……どうしたのだ! 何がおかしい!
「ハヤトくんと好きな物が一緒なんですね? おんなじのばっかり食べてる」
「やっぱ似てるのかな。ははは!」
「たんとお食べ! まだおかわりも有るよ!」
「おかわり要ります? 私的にはまだまだ食べられそうなんですけど、隊長はどうですか?」
「……」
(ここで断らなかったら地獄だぞ?)
「うーん。ちょっと……ちょっとだけ?」
(オイ)
ちょっとだけと言って出てきたのは普通サイズのパフェだった。多いよ!! もう無理だぁ……
その後、俺がおかわりしたパフェのほとんどをエラさんが一人で食べた。帰り道に屋台で串焼きを買うとまたエラさんに笑われてしまった……
「やっぱり似てますね?」
「そうかもね……」
空腹なのにご飯が食べたいという不思議な気持ちのまま、家に帰った。ご飯行きたがってたのってそういうことだったの? 母親を紹介したかったの?
そんなことを考えながら、そして吐きそうになりながらあったかいスープを作って飲んだ。
はぁ……疲れた!
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(°し=°)