76 またまた空を……
お城の仕事場。つまりエラさんの家の扉をトントンと叩いても反応が無い。勝手に入るわけにもいかないのでボケーッと待ってもう一度叩いたが、イネイ!
(居ないな)
「まぁ……でも朝早いし、起きてないとか。今日休み?」
(そもそもお前が予定を知らないのはおかしくないか?)
「それはそうだね。今度聞いてみよ……もっかいノックして居なかったら今は諦めよっかな」
(そうだな)
コンコンと強めに叩いても反応は無い……また昼頃になったら来よっかな。
それならついでに大臣のところにも行こう。前は忙しそうだったし。
「すみませーん。大臣いますか?」
「あぁ! 君かぁ! 久しぶりだね!」
「あ、久しぶりです……」
「会いたかったなぁ……いやぁ、いま時間あるかなぁ?」
テンション高い。こういう時の大臣はちょっとだけめんどい……
「昼までなら大丈夫ですけど……なんですか?」
「ドラゴン乗らない? 前よりも安全だよ?」
「えー!……えー、どうしよ……」
「一応君の分のドラゴンもいるから、遠慮しなくて大丈夫だよ? はは!」
乗りたいなぁ。でも乗ったらまた冒険したくなる……いや? これも外界なんとか隊の活動の一環だ! だってドラゴンで空を飛べたら、実際に探すときに死ぬほど役に立つはず! 乗ろう!
「乗ります! どこにいるんですか?」
「ははは! そういうと思ってたよぉ。倉庫にいるからついて来て?……あ、これ持って?」
「縄?」
大臣から受け取ったのは長ーい縄だ。これでドラゴンを操作とかするのかな? それとも身体に巻き付けるやつか?
お城の外に向かって歩いているとエラさんがいた……オレンジの布を巻いている……
「あれ? どうしたんですかー?」
「エラさんこそどうしてたの? 今日って休みだった?」
「あ、そうでしたっけ? アレ?」
「いや、俺、いつが休みとか知らないから」
「え? そうなんですか? 私も知らないですけど……」
あぁ、俺が決めないといけないのか。隊長なんだから当たり前か。今までとんでもなくブラックな環境だったのかもしれないなぁ……
エラさんだから許してくれてるところもありそう……
「ごめん。休みとかは今度からちゃんと言うから」
「あ、気にしないで大丈夫ですよ?」
「君たち仲良くなったねぇ。そうだ! エラも一緒にドラゴン乗らない?」
「え? ドラゴンに乗る?……それって本当のドラゴン? だとすると死体? それとも何かの比喩をしてるとか?」
「生きてる、しかも飛んでるドラゴン……乗るでしょ?」
「それは今からですか? となるとお仕事が……」
「あ、今日は仕事休みにする? エラさんがいいならそうするけど……」
「……お休みですか?」
「うん。今日は仕事休もう! で、ドラゴンに乗ろう!」
そうしよう。エラさんは両手を上げて飛び跳ねながら喜んでいる……えー、カワイイんだけどぉ……なんか変だな俺。
そんなわけで大臣の部屋にもう一本縄を取りに帰った後、三人でルドリーの死体が置いてあった倉庫に向かう。まだ一部は残ってたりするかな?
「ルドリーの死体ってまだ残ってます?」
「ルドリー? どなたですか? 死体とは?」
「あ、青い鱗のデカいドラゴンいたじゃない? その子の名前がルドリーって言うんだよ」
(その子ってなんだ……)
「へぇ、どなたが名付けたんでしょうか? 倒したとされている隊長や大臣ですか?」
「まぁ……そんな感じだね」
名付け親はグェールだから、ちょっとだけお茶濁しとこう。別に俺が名付けってことにしてもいい……いやルドリーも見てるからなぁ。
「……そんな感じとはどういうことでしょう? だって自然発生的に生まれるものでも無いですよね? 誰かが名付けたはずなんですけど……」
「ははは! 僕がルドリーって名前を付けた。だよね?」
「あ、まぁはい」
「そうだったんですね! ユーリがそういうことするの意外だ……」
「名前がないと不便じゃない。管理する時とかにさ」
助かった……エラさんはお茶を濁すのを許してくれるような人じゃなかった……まぁ、別にグェールのことを知られても問題ないか。いやむしろ早めに話しておかないと後で裏切るみたいな形にならない?
もう魔法も話しちゃったし、いつかちゃんと話そ。
「話に割り込んでしまいすみません……続きどうぞ」
「なんの話だっけ?」
「ルドリー君の死体でしょ? まだ残ってるよ。ただ、鱗の以外はもうボロボロだけどね」
「鱗はまだあるんですね」
「うん……だからまたあの鎧も作れるかもね?」
「え? まぁ、そうですよね」
「……はは! また冒険したいねぇ。みんなでさ? その時はエラも来なよ。どう?」
「弓矢が苦手って知ってるじゃないですか!」
この二人も仲良いんだな。
そんな会話をしていると倉庫に辿り着いた。天井がなんか金のままだ……中に入ると腐敗した臭いと輝くルドリーの鱗がある。飛ぶためのドラゴンはどこだ?
「ドラゴンもここにいるんですよね?」
「呼ぼっか? おーーい!!!」
大臣の珍しい大声に驚いていると倉庫の高い場所にある窓の外からドラゴンが入ってきた。ちょうど三体いる。
「……このドラゴン達はどうしてユーリの言うことを聞いている? それとも言葉ではなく他の合図を出していたとか?」
「ドラゴンって意外と話出来るんだよ? ね?」
「え? そうみたいですね……」
「襲ってこない? 私たち弓矢も何も持ってないけど」
「襲ってこないよ。来たとしてもアキラ君が居るから大丈夫」
「まぁ、はい……そうかも……」
目の前のドラゴンに目を向けると、三体とも色が違う。
レッド、ブルー、そしてグリーン。良く三色集めたなぁとか感心しながら、空を飛ぶのをスゲー楽しみにしていた。
「これ、外の方がいいね? 外行こっか」
大臣がドラゴン達を連れて倉庫の外に出て行った。
それに二人でついて行った。
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(°し=°)