三又の黒龍
焼けたような色の草原に、数え切れないほど多くの弓矢兵がいた。それは、今にも矢を放とうとしている。
数え切れないほどの矢が弓から離れる時、この辺りが震えるほどの爆音が鳴った。けたたましく鳴るその音が、夕暮れ時の草原に響きわたり、強張った空気をさらにピリッと引き締める。その矢の先は大きな大きな大きなドラゴンだった。
首が痛くなるほど見上げなければ瞳が見えないほどの巨体へ向かい、無数の矢が襲いかかるが、『三又の黒龍』は、右の首をビュンっ、と素早く一振りし、一瞬で全ての矢を振り落としてしまった。弓矢兵の絶望したような声があちこちから聞こえ、ドラゴンの前からどんどん兵が離れていく。
「……撤退しろ!」
号令により、全ての兵が撤退した。すると満足したのか、地上が揺れるほど巨大な咆哮を上げた後、その場からバサバサと奇妙なシルエットで飛び立っていく。
今までこれほど大きな龍の討伐を報告されたのは数匹しかいない。それも伝説のような、確証のないものばかりだ。
いつかは殺さなければならない。殺さなければ、殺せなければ、殺せなくても人間が滅びるだけだった。
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