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最後の復讐

第11話「仮面舞踏会」

第19~25話の話が伏線としてあるので、読み直すとすんなりと話が入ると思います。


 屋上に一人の影が月に照らされていた。

 夜風が男の頬を触れていった。 

 男はおもむろに携帯を取り出すと話を始めた。


「最上だ」


「お疲れ様です、最上さん」

 

 最上の渋い声とは対照的な可愛らしい声が電話の向こうから聞こえた。


「メイドの方かよ」


 最上は残念そうな表情でため息をつく。


「そんな言い方無いと思いますけど? 」


 少し拗ねたような言い方で言う。


「そう言えば、オタクこちらと接触したでしょ」


「えぇまぁ、仕事を行う人がどんな人かを知るのはこちらの自由でしょ? 」


 悪びれもなく話す彼女。


「で、どうだった?」


「まぁ可愛らしい感じの男の子って感じですね。食べがいありそう」


 最上の大きなため息。


「お前まだそんな歳じゃ無いだろ」


「あら、若いって言ってくれてるんですか? 嬉しいー」


 ふざけている彼女に最上はそれ以上は言及しなかった。


「それでそっちのボスには繋がるかな? 」


 最上は本来の目的へとシフトした。


「もう少し最上さんとお話ししたいですけど、変わります……」


 しょんぼりした声がした直後に低い唸るような声に変わった。


「あぁどうも最上くん」


「いえいえ」


 挨拶を交わし、お互いの声を確かめる。


「それでなんの用かね」


「2つほどありまして……」


 最上は胸ポケットからタバコを取り出し、火を着けた。


「忙しいから手短にね」


「ではまず報酬の件についてでして」


 向こうの男も最上同様タバコを吸っているようであった。

 

「すぐ金だな、今回の仕事はちと雑だったから最初の金額より高くすると次から頼まなくなるよ」


 男の煙を吐く吐息が電話越しに流れる。


「いえいえ、金額ではなく。送金先の話で……」


「あぁ、孤児院のやつか。本当に物好きだな」


 電話の男は呆れたような声で話す。


「約束ですので……」


「約束ね……健気だね君も。まぁいいけど」


「ありがとございます」


 電話越しであるが、最上は小さくお辞儀する。


「それで2個目の要件は? 」


 急かすように電話の男は早口に話す。


「今回のターゲットについてです」


 その言葉に電話の男が煙にむせ、咳き込む。


「……げっほ。今回のターゲットについてだって? それは干渉しないのが雇われ殺し屋の決まりじゃないのかな」


「そうなんですが、今回は少し事情が異なりましてね」


 最上の声に何処と無く恐怖を抱く電話の男のタバコの吸う回数は増えていた。


「君は何が言いたいんだ? 」


「我々の中にどうしても今回の件を許せない輩がおりましてね」


 困ったような表情で最上は囁く。


「おい、まさかお前……」


「なんのことでしょうか」


「とぼけるな!! 」


 電話の男は声を荒げる。


「何かやましいことでもあるんですか? 」


 鎌をかけるように尋ねる。


「な、何にも無い……」


「そうですが……それじゃサイコパスジェネレーターはあなたの研究では無いでよろしいでしょうか? 」


「な……なぜお前がそれを知っている」


 さぁと最上は知らない風に装う。


「こんなのがバレたらあなたの人生終わりそうですよね……まぁどうでもいいんですが」


 最上の冷たい声は止まらない。


「な、なんだ? おお脅しか? 金ならい、い、いくらでも出す」


 男は動揺し、呂律が回らなくなり始めていた。


「すぐ金だな……」


 最上は嫌味たらしく先ほど言われた言葉を返した。


「お前!! こんなことしてどうなるかわかってるだろうな」


 血相をかいた男は強気に言い放つ。


「そうですね、こんな弱小雇われ殺し屋はどうにかなってしまいそうです」


 乾いた笑いで茶化す。


「お前……人をなめるのも大概にしろ! おい、メイド! 今すぐ最上一味の殺害を依頼しろ。 金は言い値でいい」


 メイドに命令をする。


「おっと怖いですね」


「強気でいられるのも今だけだから……」


 電話の男は絶対的な力を手に入れたのか気持ちが大きくなり、自信満々に言う。


「おっお前、どこからここに……! 」


 それも直ぐに情けない声へと変化した。


「そろそろ到着したみたいですね」


「お前、こんな小さなガキを刺客に出したのか? 笑わせるな」


「その子どこかで見覚えはありませんか? 」


「知らない、知るか! 」


「あら残念、アリシアちゃん右腕を撃っていいよ」


 電話越しに銃声と男の悲鳴が響きわたった。


「さぁ誰でしょうか? 」


 最上は恐ろしい表情で問い詰めた。


「本当に知らない、嘘じゃ無いこんなガキに出会ったことすら無い」


「おし、アリシアちゃん今度は左腕を撃とうか」


 再び銃声と男の悲鳴が響いた。


「ほら、携帯を拾って……メイドにも頼んで」


 携帯を落とす音から最上は命令する。

 電話の男もはっと何かに気づき、メイドを大声で呼んだ。


「はい、ご主人様」


「お前何してる、早くこのガキを殺せ」


「それは出来かねます。私には人殺しのスキルはございませんので」


「お前……お前の一族を潰してやる……お前を母親と同じ末路を負わせてやる」


 かすかに聞こえた男の声がクリアに聞える。


「メイドちゃんどーも」


「いえいえ、これくらいしかメイドには出来ませんので」


 メイドの可愛らしい声の裏で男の呻く声がする。

 おそらくガムテープか何かで耳に固定しているようだ。


「それじゃそろそろ正解を発表しますか」


 最上は楽しそうに話す。


「正解はギルさんの孤児人の子供の生き残りでしたー」


 最上の声と同時にメイドの拍手が聞こえる。


「お前ら、あんなちっぽけな男の復讐のためにここまでしてるのか? 」


 腕から血がで、少しでも気を抜くと死んでしまう状況で男は叫ぶ。


「お前はそれだけのことをしたんだ。人の人生をめちゃくちゃにした罰は重い」


「頼む命だけは……」


 命乞いする男の声はかぼ細い。


「四条あれを打ってやれ」


 四条の歩く音と何かを注射器を取り出す音がした。


「待て待て、なんだそれ……」


 男は一連の流れでその注射に入っているものは何かを大方察している。


「サイコパスジェネレーター……良いネーミングね」


 四条は何も言わずにそれを男の首筋に刺した。


「最上さんはなんでも揃えられるのよ、仕事のためなら」


 彼女は強く注射器を何本も打ち続けた。


「おあ、ああおおおおお前っっおぼえ、、とけ、ころぉっすぜったいこ……」


 男の苦しむ声は断末魔に変化していく。


「どうだ、自分で作った薬を打たれた気分は?……もう答えられないか……みんなお疲れそこから離れて良いぞもう」


 最上は鼻で男の末路に鼻で笑い、四条たちに退散させた。




 

 ぐぐぐぐ


 ぐぐ


 あああぁああ

 男の頭には血管が浮き出ていた。


 撃たれた穴から血は絶えず出ている。


 猛獣のようなその男は苦しみから逃れたいのか葉巻の灰皿に自分の頭に打ち付けていた。


 そしてゾンビのようにふらふらと屋敷から出た。


 トボトボ歩くその姿は哀れ以外ない。


 それを狙う光がちらっと光る。



「お前に……生きる資格はない……躊躇することもない……」


 相模はスコープにターゲットが映るやいな、引き金を引いた。


「せめてあの世では善人になってくれ」


 そう言い残し、頭が砕け散った化け物をただ眺めていた。



 満面の星空に一つの流れ星が流れた。


「ギル神父様」


 少女は小さく呟き、それに手を合わせた。

 


 


一旦この話はこれで終わりです。


本当はもう少しそれぞれの経緯を書きたかったのですが、あまりにも壮大すぎたので割愛しました。もし感想などで書いて欲しいという要望があれば、外伝として投稿するつもり。




全35話できっかりと終わることが出来、達成感でいっぱいです。ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。感想、レビュー等いただける筆者の次作のモチベに繋がりますのでよろしくお願いします。




p.s




メイドはもともと殺し屋設定でした。途中で省きましたがw

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