謎の少女
「ここは……」
四条は目をゆっくりと開いた。
そこには無数の檻があり、動物含めあらゆるものが監禁されていた。
彼女も例外ではない。
猛獣は彼女を見てヨダレを垂らしながら、睨み続けていた。
四条は少し見渡すと商品として売り出されていた少女を見つけた。
彼女は自然と少女に視線を向けた。
「大丈夫? 」
四条は隣の檻にいる少女に声をかけた。
少女は無言のまま、虚ろな表情で俯いていた。
四条は檻から手を伸ばし、少女に触れようとした。
「きゃっ」
恐怖に怯えた少女の悲鳴が監禁室に響きわった。
「ごめん、驚かせるつもりはないの……」
四条は初めて少女の声を聞き、少なくとも生きていることは確認した。
「私ね、四条。あなた名前は? 」
彼女は質問をし、場を和ませようとした。
「……」
無論少女は答えなかった。
それどころか、まるで極寒の地に放り出された遭難者のように唇を小刻みに震わしていた。
「何に怯えてるの? 」
優しい口調で探りをいれる。
すると少女は小さく呟くように言う。
「あなた……」
予想していたものと遥かにかけ離れた少女の言葉に四条は唖然とした。
「どうして? 」
「あなた。人。殺した。」
檻の隅っこに逃げるように離れていった。
「それは……あなたを守るためよ」
四条は真意を語り、怖がらせないよう注意をはらう。
「あの人も。そう言って。人。殺した」
「あの人? 」
検討もつかない彼女は首を傾げながら聞く。
「ギル……様」
少女は悪夢を見ているかのように、怯えていた。
「ギル・ゲーズボロね」
「あなた。知ってるの? 」
少女は些か驚いた表情で赤いドレスの令嬢を見つめた。
それは見つめたと言うよりか、物珍しいものを発見した科学者の目であった。
「えぇ、私は彼を殺すために来たの」
「やっぱり。殺す。のね」
たどたどしく言う言葉一つ一つに絶望という糸が織り込まれているようであった。
「彼は危険な人物よ、あなたがよく知ってるじゃない。奴隷みたいな扱いで監禁するなんて」
四条は言いくるめるように、少し強めな口調で少女に正当性を示そうとした。
「ギル様。危なくない。昔は。優しかった」
少女らしい顔に少しづつだがなっていた。
「どう言うこと? 」
四条は困惑し、少女の言葉に疑問符をつかけるほかなかった。
「だから。昔。優しい。人だったの」
しみじみと言う少女に四条は嘘をついていないと確信していた。
「詳しく教えてちょうだい」
興味深い話であると同時に、相模の言っていたターゲットの過去を見ることで撃てなくなってしまう原因を探ろうともしていた。
彼と同じ気持ちになってみようと決意した。
少女は刹那の沈黙を経て、重い口を開いた。
死んでいた目は、奥の方にかすかに光があった。