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臆病者のスナイパー

「それで、お前は仲間を捨てて逃げてきたと? 」


 作戦司令室で最上の低い声が響く。

 その言葉に相模は何も答えることができなかった。


「最上さん、そもそもスナイパーの彼にこういうことを任せること自体おかしいのですよ……それに今回のも彼女自身の勝手な行動が招いたわけでありますし」


 小久保なりのフォローを入れるが、今そういう言葉はダメ出しに過ぎない。


「こんな時に東郷さんは何してるんですかね……」


 川浦が気まづい空気を変えようと話題を変えた。


「東郷には潜入任務を続行させている」


 最上はそう言い、机にタブレット端末を置いた。

 そこには方眼紙のようなマス目と赤い印が真ん中に一つあった。


「これは? 」


「東郷の居場所だ……というよりターゲットの居場所だな」


 最上は赤い点に指差し説明を続けた。


「東郷にはターゲットのボディーガードとして潜入してもらっている」


「この短時間でよくできましたね」


 川浦は手で口を隠すポーズで驚きを表していた。


「まぁ性格はあれだが、仕事に関しては逸品だからな」


 最上は手を顔の前に組み、小さく言う。


「それはそうと、相模……今を持って今作戦においてお前を除外する」


「わかりました……」


 相模は当然である命令であると自覚しているが、それを受け入れられない葛藤にかられていた。


「しかし、戦闘員が今東郷さんしかいない状態ではどうすることもできませんよ」


 小久保が最上に忠告し、現状の深刻さは彼女の顔が物語っていた。


「しかしだな……こいつがいてもいなくても大差変わらないだろ。それともちゃんと撃てるのか? 」


 きつい言葉は相模の顔を曇らせた。

 最上は険しい表情で彼の顔を睨みつける。


「自分は……」


 言葉の詰まる相模を見て最上は横に首を振る。


「それでは、任せられない」


 悲しげな顔で最上は小久保に目を向けた。


「代わりのスナイパーを今から用意できるか? 」


 彼女は少しばかり戸惑いながらも小さく頷く。

 相模は自分の不甲斐なさと、仲間を見捨ててしまった自分の臆病さに拳を強く握った。 


「自分がこのチームのスナイパーです。自分にやらせてください! 」


 その声にはターゲットへの怒りと、自分への憤慨が入り混じったものであった。

 最上もその気持ちが伝わったのか、小久保に向けていた顔を相模に戻した。


「わかった。じゃお前に任せる」


 顔向ける彼の言葉に相模は顔を明るくした。


「だが……今回撃てなければ次はない。失敗すれば四条は死ぬ、それだけの責任があることを心に刻め」


 相模は大きくそれに返事をした。


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