表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

目玉商品

「それでは最後の商品となります」


 司会者は今日一番の大きな声で会場を湧かせた。


「それでは……どうぞ」


 現れたのはまた檻だった。

 虎の入っていた檻とはうって代わり小さな檻であった。


「うそ……」


 四条の口から驚愕の声が漏れる。

 彼女の視線の先には一人の少女がいた。

 少女は虚ろのな目でどこか遠くの方を見ていた。


「では目玉商品のこちらの少女でございます」


 司会は手元にあるフリップボートを横目に解説を始めた。


「この娘は9歳。すでに調教等はしていますので使い勝手はよろしいですよ。どうですか男性の方々? 」


 卑しい表情で会場の男たちを掻き立てる。

 

「人身売買が目玉って……」


 相模は異様な空気に飲み込まれてしまっていた。

 彼は改めてこの裏オークションの非道さに気づいただろう。

 オークションが始まる前からとんでもない金額が会場のあちらこちらから聞こえてきた。


「まぁまぁ皆さん落ち着いてください」


 彼は手を振りながら熱くなる参加者をなだめる。


「この商品はなんとあのギル様からの出品なんです」


 その言葉に会場がざわつく。

 それは四条、相模二人も同様であった。

 仮面をつけお互いの素性を隠すこの会でわざわざ名前を公表するなどもってのほかな行為なのだ。


「それでは、ギル様に登場していただきます! 」


 司会者は上座に手をめいいっぱい広げ、特別ゲストを招いた。

 ギルの登場は更なる混乱を生んだ。


「やぁやぁ紳士淑女の皆さん」


 彼の声で会場にまばらな拍手がなる。

 

「皆さん元気がないですけど、大丈夫ですか? 」


 司会者が気を遣わせ参加者に声をかけた。

 そして大きな拍手を生ませた。

 ゲルは彼に軽く会釈し、マイクを口に当てた。


「それではこの特別な商品のオークションの説明をさせていただきたい」


 丁寧にいう彼は正体不明な怪物が後ろに立っていそうな威圧があった。


「今回はですね、お金以外のものでオークションしていただきたい」


「どういうことでしょうか? 」


 司会者が間も無く尋ねる。


「そうですね……今回は体の一部をいただきたいのです」


 ニヤリと笑う不敵な笑みは気味悪い一色だった。 

 だた一人だけ高らかに笑う彼に誰もが同情などできなかった。


「さぁどうします? いないならこの娘の手足を一本一本もいでいきますね」


 得体の知れない彼の奇言は参加者に恐怖を与えた。

 あまりの恐怖と不快感からか会場を去っていく者が多発した。

 次第に会場には人がいなくなり、4人だけ残った。


「ほぉお嬢ちゃん、随分肝っ玉が大きいね」


 ギルのガラス玉のような目で四条を見つめる。


「私が払います」


 その言葉にいち早く、相模が止めた。


「感情に任されて、任務を忘れないで」


 耳元で囁き、彼女を覚まそうとするがもう遅かった。 

 彼女はずかずかとステージまで歩き、凛とした表情で出品者を睨む。


「それで、可愛いお嬢ちゃんの何をくれるのかな? 」


 卑しい視線で令嬢の全身を舐め回す。

 

「お嬢ちゃんの体の一部じゃなくてもいいかも知れないけど……」


「あなた最低ね」


 四条は堂々とした姿でターゲットに吐き捨てる。


「おいおい、嬢ちゃん出品者に対してその態度はないだろ」


 顔を横に振りながら、呆れ顔で言うギルであったが、唐突にその冷静な顔が変貌した。

 刹那であった。

 ギルは怒りに任せて、力強い殴りを四条めがけて降ったのだ。

 彼女はとっさの行動ですんでのところで、かわした。


「おい、お前何者だ? 」


 令嬢の耳をかすめた拳を見ながら、不思議そうに首を傾げた。


「あなたって本当に最低ね」


 四条は毒気を吐きながら言う。

 たいそう機嫌が悪いのが見うけられる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ