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仮面舞踏会

「これは? 」


 重い扉の先には優雅なクラッシク音楽に包まれた煌びやかな会場であった。

 片隅ではヴァイオリン達の弦楽器特有の音色を部屋全体に響かせていた。

 参加者が音楽に合わせて踊るものもいれば、談笑し合い、各々堪能しているようだった。


「裏オークション前の舞踏会ね」


 四条は一回り見渡し、仮面を被る参加者達の異様さに圧倒されていた。

 驚く間も無く、給仕係がそばまで寄り飲み物を勧めた。


「驚いたわね、参加者リストをざっと見たけどいざ見てみるとこう多いとはね」


 リストなど見ずとも参加者達はただの一般人ではないのは容易に分かる。

 

「こんなとこリークされたらどうするんだか……」


 相模が小声で戯言を抜かす。


「私たちも目立たないように参加しましょ」


 大胆な彼女は何事もないように大物政治家であろう輪に入っていった。

 互いに仮面を被ることでプライバシーを守る意味合いもあり、意外にも自然と溶け込めていた。


「貴方は新人の方ですか? 」


 相模は唐突に隣に立っていたメイドに話しかけられた。

 メイドはまた同様に仮面を装着していた。

 容姿端麗さは仮面越しでも分かるくらい、顔全体が整っていた。


「え……」

 

 どう答えれば良いか分からない彼は言葉選びに時間がかかった。


「いえ、答えなくてもいいですよ」


 メイドはこちらに顔向けず、断った。


「ほら、新人さん。執事たるもの主人の姿を常に見とかなくては」


 彼女の指導に相模は従いながら、謎のメイドに考えを張り巡らせていた。


「そう言う貴方も、こんな新人に勝手に話しかけて良いんですか? 」


 四条の談話する姿を一片たりとも逃さないように正面を向き続ける。 


「これは一本取られてしまいましたね」


 相模の言葉にメイドもほくそ笑みを浮かべる。

 相変わらずその面を彼には見せない。


「ところでなぜ私が新人だと思ったのですか? 」


 相模は少しずれたネクタイを整えた。


「それはわかりますとも、なんたって昔の私を見てる感じがしたので……」


 趣深い表情で彼女は微笑んでいた。

 

「長いんですか? 」


「えぇ、まぁかれこれ10年目ですかね」


「えっと……」


 10年と言う言葉に相模は自然と彼女の年齢を予測していた。

 外見を見る限り、四条と同じように見えた。


「いけませんよ、レディの年齢を予想しては」


 彼女はまるで全て見透かすように茶化す。


「いや別に……そう言う……すみません。手癖が悪くて勝手に計算してしまいました」


「別に構いませんよ、それに別に年齢がバレたところで困ることもないんですし」


 正直に打ち明けた相模に彼女は再びほくそ笑む。


「因みにいくつなんですか? 」


「因みに聞くんですね」


 頑固な相模の姿に彼女の口元は緩んでいた。


「19ですよ」


「奇遇ですね、私もなんです」


 彼女との共通点が生まれ、素性もわからない二人は少し和んでいた。


「じゃ小さい時からずっとって感じですか? 」


「えぇ、そう言う家なので」


 彼女は悲しそうに肩を落とし、小さく呟く。


「あなたは? 」


 今度はメイドが相模に質問を投げかけた。


「自分は……実は」


「別にお答えしなくても良いのですよ。なんたってこれは仮面舞踏会。もともとお互いのプライバシーを守るための会ですし」


 メイドは相模の言いかけた言葉を遮り、答えを求めなかった。

 彼女ならと相模も刹那に思わせてしまうほど、彼女との会話には何かの魔力があったのだろうか。


「それでもお互いなんだかんだで情報交換してますけどね……」


 彼女は付け加えて言い放ちながら、主人の方へと歩みんでいた。

 主人であろう者は強面な男。

 葉巻きたばこを蒸し、大柄な笑いで談笑に悦に浸っていた。

 メイドは主人に何かを告げると、主人は怒ったような口調で彼女を怒鳴りつけていた。

 そしてそのまま二人はどこかへと行ってしまった。

 彼女は去り際にこちらに手を振っているようにも見えた。

 相模はその一部始終を見ていた。

 気づけば手は力強く握りしめており、彼の怒りに近い何かを表していた。


「…い……おーい、こら、執事なのに主人の言葉を無視しないの」


 メイドの後を見続けていた彼の目の前にはいつの間にか赤いドレス姿の四条が立っていた。

 表情はかなり怒っているようで、睨み方が極道のようであった。


「すみません……」


 なんども頭を下げ、謝罪をする執事に四条は呆れていた。


「あなた任務だってこと忘れてない? 」


 彼女の図星な言葉に相模は我に返り、握った拳を緩めた。


「ありがとう……」


 小さく照れ臭くなり、彼は小さく呟いた。

 彼女には聞こえていないようだった。


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