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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

◯✕

作者: Ricordo*

夏休み。そう、夏休み。滅多に無い長期休暇。……だというのに、僕は何をしているんだろう。

朝早くに起きて学校の宿題を進め、昼食を終えたら塾の宿題を終わらせ、世で言う"おやつの時間"から塾へ行く。太陽も隠れた夜八時頃、塾から帰ってきたら夕食を済ませ、風呂に入って、寝るまでの間、再び学校の宿題を進める。

……つまらない。くだらない。なんて面白みのない夏休みだろう。僕がこうして馬鹿真面目に勉強をしている間に、皆は友人とゲーム機で遊んでいたり、スマートフォンで会話をして談笑をして。人によっては何処かへ遊びに行ったりもしているというのに。確かに受験生ではあるし、過ごし方として褒められるのは僕の過ごし方だろう。


でも、僕はマルを貰えない。


どんなに勉強をしても、良い成績でも、無関心な、まるで心のこもっていない声色で「すごいね」と言われるだけだ。誰からも認められることはなく、マルを貰うことは叶わない。マルどころか、バツでさえも貰えたことはないのだから。何をどうしろって言うんだ。勉強したところで、後に楽しみがあるわけでもなし。何をモチベーションにして勉強なんかやっていけって言うんだ。自分で自分にマルを与えるのが、どれだけ虚しいことか、お母さんには分からないんだろうな。周りには

「見ろよ、オレ八十点だぜ! これ苦手だったし、母ちゃんに褒められるかも……!」

なんて子もいるのに。僕は百点のテストを持ち帰っても褒められたことなんてないのに。



何をしたらマルを貰えるんだろう。何をしたら認めてもらえるんだろう。いっそ、バツでもいいから、お母さんからの関心が欲しい。なんて、ないものねだりかな。

……僕が屋根の上にでも立っていたら、心配くらいはしてくれるだろうか。落ちてみて、それでももし生きていたら、「生きてて良かった」と泣いて抱きしめてくれるだろうか。ちょっと望みすぎか。


僕は弱虫だし、お母さんからのマルを貰いたがるような子供だけど、でも――屋根の上に立つ今の僕の勇気は、僕自身が心からマルを上げられるほどの勇気だ。

空を飛ぶ直前に聞こえたお母さんの声は、僕を心配してくれていたのかな。

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