#5 ルート分岐が細かすぎる件【ソード・A・お蔵入り 編】
この世界は空想であっても、虚構ではない――。
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まずは剣を作るのだ、そして何かを斬るのだ。”何か”をな!!!
待ちに待ったような気がする、ある晴れた日。
俺は何度目かもわからない景色を目の前にして、ふと、前回考えていたことを考える。
――「パンツ増量作戦」と銘打った、自傷を前提とする攻略法。
パンツ一丁で《りすぽうん》してしまう鬼畜仕様にどうすれば抗えるのかと自分なりに考えたものだ。
例えば、意識だけは持ち越されるので、パンツを脱いで捕まり、《りすぽうん》した際に回収していつかは全身をパンツで覆う、なんて感じのあまりにもダサいアイデアなのだが……これくらいしか思いつかない。
さて、ここで考えるべきは周回効率だ。
どうすれば一番早く戻ってこれるか、そして次のパートに進めるかということ。
なぜなら何かしらのミッションをクリアしなければ、いつまでたってもこの状態のまま過ごすことになるため、せっかく与えられたチャンスを生かせないことになってしまうからだ。
あるあるの展開として、この島は美少女しかいない、とかそういうものだあるのだが、残念ながら……
「既にゴツい人たち見ちゃってるんだよなぁ……」
残念になって足元を見ていると、どうも感覚が今までと違う気がした。
この下を掘れ、といわんばかりの衝動が足裏から伝わってくるような、錯覚のような曖昧な感覚ではある。
「うーん」
掘るか。
掘らないか。
二択に悩まされていると、不意に前提条件との矛盾に気づく。
「あっ。。。」
深く、あまりにも不覚だった。
「そもそも掘るものすらない……しかも砂って掘っても周りが崩れだしてまた埋まるよなぁ……」
なら、諦めて、パンツ作戦を施行するしかない。
「さて、まずは脱ぐとしよう……よいしょ」
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その後の事は憶えていない、というのが本音だ。
ぷっつり、パンツを脱いでから記憶がないのだ。
そういえば、以前も脱いだことがある気がするが、全く記憶にない。
「なるほど……パンツも鍵なのね……」
どうすれば当たりなのかもはや見当もつかなくなってきた
パンツ作戦は施行一回目で《りすぽうん》する場所が今までとは違っているから、この作戦はうまくいかないのだろうな
「そういえば……ここはどこだ?」
一面に広がるのは、精緻に構築された電子世界のような、どこまでも繋がっている闇だった。
何処を見渡しても、自分の意識はあるのに何一つ目視できないのである。
その状況下で何事もなかったように考えにふけていたと思うと……少しばかり笑えてくる。
それほどまでに切羽詰まっていると脳は判断しているのかもしれない。
「まずは……禁忌を犯しまくってみるか」
そう、条件をすべて反転してしまえばいいと思った。
つまり、裸で街を駆けまわり、学校につき、少女と話をする、捕まらずに太陽も沈ませないということだ
「俺ならいける」
よくわからない自信がわいてきて、でもそれに頼るしかないのも確かなので頼ってみることにした。
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簡単に言うと、施行三回目で警告が来た
それこそ表現するのは難しいのだが、表現するとすれば、視界が突如フェードアウトして《予知夢》を見せられる、みたいな状況になる
なので
「死ぬかと思った……」
血塗れの戦場、その中央に自分が立たされて火刑に処されているような映像が瞼の裏に見えた
それはこの世界の異常さを表すものでもあるのかな
恐怖をどうにか逸らして、考えてみる。
どうするか、ではなく、何をしたいのか。
何のためにここに来たのか。
――しらない
どうしてここにいるのか
――しらない
自分は一体だれなのか
――しらない
本当に何も知らない
どうしたらいいのかなんて分かるはずもない
思考の糸が絡まる。
そしてしゃがみこんでしまった。
「うぁああああああああああああああああああああああああ」
詰んでいる
詰んでいる
詰んでいる
だから、諦めろ
諦めろ……諦めろ……
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剣と云うものは古代からあるそうだ
人を殺すために正当化した、形式化した凶器とも呼べるわけだが、真の意味はそうではない
磨き上げられた美しい長刀が、洗練された使い手の技量によって、全てを洗いざらい斬り裂いていく――それこそ一刀両断するように
そういう意味が剣にはあると思う
刀も剣もナイフというものも厳密には全部区分されている
だけど、何かを終わらせるには、綺麗さっぱり消さなければならない
それには、剣はピッタリだと思うのだ
だから、オレは決めた
あの子に会うために変えてやるんだ、この世界ごとすべて
手元にある長刀は青白い光を放ちながら、その閃光を揺蕩わさせる。
もし――これを展開すればどうなるか
光が膨張し始めて、両手に加わる負荷が増していく。
「そんなことはもう決めているんだ」
両手で剣を振り上げる。
タイミングを見計らう。
いいんだ
「モブはモブらしく――負け犬らしく、世界破壊を企てるのさ! 展開、ホライゾンバスターッ」
シュ―――――――ン ガガガガッガガッガ ヴァァグァアアアアンンンン
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違和感は3秒前。
微かに、地面が揺れた気がした。
――いや、これは
「悪いが、ここは譲れねぇ――っ」
無意識のうちに”誰か”に向かって叫んでいた。
「ハハハハ、いやぁ良い吼え方じゃないかエエーっ???」
紳士服を上半身に纏い、下はジーパンという何ともファッションセンスが感じられないコンビで現れたその男はそう言ってこちらを見つめてくる。
眼鏡を掛けていて良く見えないが、殺意の塊ソノモノが込められたモノは空気伝導でも理解することは可能なのだ。どこまでも澄む黒の奥に、邪悪なものがある、ただそれだけの話。
ただ、それだけだからこそ、許せない
殺意があれば慈愛があるはずなのだ
誰かを守りたいという、意思が
なのに感じることができない。これは彼に”救い”の概念がないことを意味する。
千里眼、そんなものはなくてもこれくらいは見極めがつく。
「なんで……だよ」
「ハハ、お兄さん、もう考えている時間はないのだよ、この世界の線はもう既に切れている」
悠長に、どこまでも優しげに彼は語る。
一滴の甘みも一瞬の希望も許さず、ただ絶望を突き付けるようにただ語る。
ゆるせない……
何のために来たか、そんなもんはわからないけど
「それでも、俺は死ぬためにいるわけじゃない」
今度こそ、泣かずに自分の選択をするんだ
決意を固めて、パンツを上に引っ張る。
伸びろ、伸びろ、と祈りつつ。
「クハハハハハハハ、なんですゥそれエエエエー」
「見ろ、これが俺のパンツだ」
■■:「クハハハハハハハ」
悠葵:「てめぇ……」
作者:「……」
冬華:「わ、私はいつ出れるんですかぁああ!!」
(ナレーター):「次回、『意味の解らない解放条件 【零から始まるぱんてぃー製造 編】』お楽しみに」