ヘサームの受難
過程はあまり気にしないように。なぜこの場面にいたった、とか。
ライオンの姿を取っているヘサームは今、少女に跨られていた。
「ほらほら、速く!」
「まだよ。まだできていませんわ」
そして何故だか、鬣を編まれていた。もう既にいくつものリボンが結ばれており最後の一本に取り掛かっているところであった。
(どうしてこうなった)
頭を抱えたくなったが、生憎と今は両手両足がふさがっており抱えられない。
「ねぇアンヌまだ?」
「まだよ…あと少し……できた!!」
「よっし、行けえええぇぇぇぇぇ!」
(行けじゃねえええぇぇぇぇぇ!!!)
少女が、いや、ガヴィネル王国第二王女リュエルが、想定外に強い一撃を食らわしたおかげで脇腹がジンジンする。だがヘサームは動く素振りすら見せまいと足を踏ん張った。
(子守はごめんだっ!冗談じゃない)
「も・さ・も・さ!早く!」
動こうとしないヘサームにリュエルが頭をたたいて催促する。
この王女、基本的に動作が荒っぽい。髪の毛を伸ばしていなければ少年と思ったかもしれない。いや確実に思った。ガヴィネルの王である彼女の父親に顔がそっくりでこの年の少女にしてはひどく凛々しい。
言動がすべてを台無しにしているのだが。
「もーさーもーさー!!もぅっ、つまんない!!お兄様のところ行く!!」
しびれを切らしたリュエルがヘサームの背中から退いた。ほっ、と心の中で安堵の溜息をつく。
「リュエル、おやめなさい。今あなたが兄上を訪ねてはご容体が悪化してしまわれるわ。」
「お兄様に体にいいお昼ごはんを作ってあげる!」
「きっと朝餉を召し上がったばかりよ」
「ぶーっ」
頬をふくらましたリュエルは幼く見えとても子供らしく可愛らしい。
だが次の瞬間、ヘサームはそう思ってしまった自分を後悔した。
「もさもさ、遊ぼう?」
薄気味悪い壁画のような笑顔を浮かべ振り返る。
後ずさるヘサームを逃がしてなるものかとリュエルが構えたとみて、逃げるのも面倒になったヘサームは脱力しもうどうにでもなれとやけくそで腰を下ろした。




