さよなら、恋心
一緒に帰り道を歩く度、同じ長さの影が目の前に伸びる。
「桜那ちゃん、今日ちょっと疲れてない?」
「そうですか?」
「もう、自分でも分かってないなんて桜那ちゃんらしくないなあ」
春、夏、秋、冬。全部の季節の中に言いたい気持ちをうずめて、只二人の影を眺め続けた。
「咲樹、」
「ん?」
振り返れば私達を包む太陽。その色と同じ色の瞳をした貴女がふわりと微笑みかけた。いつも咲樹は周りをよく見ていますねと貴女は言う。
「私の事なのに、私よりよく理解してくれて有難う御座いますね」
目の下に青黒く陰りが出来ていた。それなのに、貴女はこんなに綺麗。
「…やめてよ、それこそ桜那ちゃんらしくないよ」
私の大事な大事な人は、悲しいくらいの頑張り屋さんなの。
本当はそのくらい分かるよって言いたい。だって、私はいつも桜那ちゃんを見てる。だから無理もしないで欲しいんだよ。貴女は何時までも気付いてくれない。
でも、それで良いよ。私と貴女はすれ違ったままが正しいの。
好きなものも似てて、小さい頃からいつも一緒で、気が付いたら好きになってた。
貴女もこうじゃ困るでしょ?
でも咲樹は我が儘だから思っちゃう。同じ長さの影を見て、もしも桜那ちゃんも私と同じ事思ってたらなって。
「それでは、私はこの道ですので。さようなら」
「ねえ、桜那ちゃん、」
何時までもこのままじゃ、駄目だよね。
「さようなら?何言ってるの、最後まで一緒に帰ろうよ」
「…え?」
「えっへへ、冗談だよ。真面目に考えちゃう桜那ちゃんかーわいいっ」
曲った事が嫌いな貴女に曲った恋をした私を、許してね。
「じゃあね、桜那ちゃん」
じゃあね、私の恋心。