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SweetStrawberryRondo 4  作者: M11
9/11

再会

 そして私は今現在、成田にいる。

 運行とは紆余曲折あったが、何とか説得してきた。私だけじゃなく、タマちゃん先輩と佳菜子先輩までもが直談判に参戦してくれた。出来るガイド2人に言い寄られては、運行課長は白旗を揚げるしかなかった。何で、あの2人はここまで肩入れしてくれたのだろうか。謎だ。

 私の目の前には、各地からの到着便を案内する表示板がある。しかし、まだ私が待ちわびる便は表示されない。案内カウンターに聞いてみたところ、該当機は確実に日本へ向かっているとのこと。乗客の名前に関しては、規定により教えることが出来ないとのことだ。だから私は、ひたすら待つしかない。

(しかし、何でこんな事してるんだろうね、私)

 恋人でもない、ただのメル友。デートらしいことは1回きり。そんな赤の他人なのに。

 たぶん、あのテロ事件を見て、私の心の何かが変わったんだと思う。

 あのマッキーさんが、居なくなってしまう。

 日常が、非日常に変わる瞬間。

 言い表せぬほどの不安感。未だに、彼女との連絡が取れない。

 様々な事が重なり合った結果、一つの結論に辿り着いた。


(いつの間にか私、彼女のことが……)


 そう考えを巡らせていたとき、案内板の表示が変わった。私の待っている便名が表示された!

「30分後か……」

 着陸は後30分後の予定らしい。しかし、国際線はそこからが長い。入国審査や通関でやたらと時間がかかる。到着ロビーに現れるのは、着陸から約1時間半後と見た方が良い。この辺は、空港受けの仕事なんかで要領はわかっている。

「トイレ済まして、飲み物買ってこようかな……」

 長丁場を覚悟して、用事を済ませることにした。乗っているかもわからないけど、信じて待つしかない。


 該当機が着陸してから1時間半後。

 案内板に表示されていた到着ゲートに現れる人も増えてきた。おそらく、この人達が該当機の乗客だろう。目をこらしながら、待ち人を探す。

 何時もなら、団体名の入ったステッカー(バスで団体名を表示する用紙)を掲げて待っているのだが、今回は準備もそこそこに空港へ駆けつけたので、その類は持ち合わせていない。その場で自作しても良いけど、字が汚いと恥ずかしい。

 国際便だから、海外のお客様がやっぱり多い。アジア系とは違い、がたいがいいから見分けは付く。女性もグラマラスな人が多い。羨ましいぞ(泣)。

 2時間が経った。

 段々、人の数も減ってきた。

 もう、ぽつぽつとしか人がいない。

(乗っていなかった……のかな?やっぱ)

 となると、何処で何をしているんだろう。相変わらず、直電入れても繋がらないし。

 更に15分経過。

 乗客らしき人は殆ど見当たらず、空港職員が忙しそうに右往左往しているのみ。

 (最後に……もう一度だけ)

 一途の望みで、電話をかける。これで繋がらなかったら、私どうしたらいいんだろう……

『プルルルルル……』

「えっ、呼び出し音鳴ってる!?」

 今までテンプレ音声案内しか言わなかったスピーカーが、呼び出し音を奏でている!

『プルル……はい、もしもし、美佐さんですか?』

 つ、つ、つ……

「繋がったぁぁぁ!」

『きゃっ!ど、ど、どうしたんですか?一体』

「一体今まで何をどうしてたんですかっ!!」

『は、話が見えないんですけど……』

「今、何処にいらっしゃるんですかっ!」

『成田ですけど?』

「成田の!何処に!いるんですか!」

『ちょ、怖いです美佐さん。今、通関を終わってゲートに向かってますけど』

「それなら、早く来て下さいっ!」

『どういうこ……』

 彼女の返事も聞かずに、電話を切った。

 よかった!乗ってた!この飛行機に!!

 少しして、ゲートの奥の方から小走りにカートを引きながら、こちらに向かってくる人を見つけた。間違いない。私の待ち焦がれた人、マッキーさんだ。彼女は私の姿を見つけると、驚いた顔をしてゲートを抜けてきた。

「み、美佐さん!?どうし……」

「マッキーさーんっ!!」

 彼女の台詞を遮るかのように、私は声を上げて飛びついた。

「ちょ、どうしたんですか?」

「マッキーさん、マッキーさん、マッキーさん、マッキーさん、マッキーさーん、うわーーーーーん……」

 最後の方は声にならず、泣きじゃくった。

「生きててよがっだぁーーーっ!」


 この時のマッキーさんは、訳がわからず私に飛びつかれたので、オロオロするしかなかったそうな。


「落ち着きましたか?」

「はい……みっともないとこを見せてしまいました」

 今は到着ロビーにあるソファーに腰を下ろし、2人で寄り添っていた。

「事情はTV局から聞きました。まさか、あの飛行機が離陸した後にテロが起きていたなんて……」

「全く知らなかったのですか?」

「小耳にチラッとは挟みましたが、あの空港だなんて思ってもいませんでした……あぁ、だからですか。今日の通関が異様な雰囲気だったのは」

 話によると、通関でのチェックが素人目から見ても異常に思えたらしく、手荷物もセキュリティチェックが厳重に行われていたせいで、なかなか出て来なかったらしいのだ。

「時間がかかるなぁ、とは思ってましたけど……そういうことでしたか」

「それよりも、美佐さんが何故この場にいるのか、そちらの方が私にとっては疑問ですわよ?」

 真剣な眼差しを、私に向けるマッキーさん。でも、私は反論する。

「マッキーさんが電話に出ないからじゃないですかぁ……」

「え、私?私のせいなのですか?」

「テロの速報を見てから、ずっと連絡取ろうとしてたんですよ?なのに、直電もLINEも繋がらないし……」

「え、そうなのです?」

 そういって、スマホ画面を見る彼女。

「本当だ、いっぱい履歴が……」

「全く気づかなかったのですか?」

「フライト中は、国内移動の時も電源切るように心がけていますから。電話に出たのも、先程電源を入れた直後でした」

「そうだったんですか……」

 それじゃ、繋がらないわけだ。

「ほんっっっとうに心配したんですからぁ。テロに巻き込まれたんじゃないかって」

「心配かけてごめんなさいね……しかし、先程ゲートで美佐さんを見たときは、本当にビックリしました」

「ぅう、飛びついてごめんなさい」

「良いんですよ、それ位。それとね、貴女を見て安心しちゃいました。日本に帰って来たんだな~って」

「どういうことですか?」

「いくらメールやLINEで繋がっていても、貴女のいない世界は寂しかった。日本にいれば、逢おうと思えば逢う事も出来る。でも、海外じゃそれもままならない。だから、早く仕事を終わらせてしまおうと思っていたんです。結果的には、テロに巻き込まれなかったのは良かったですけど。予定通りだったらと思うと……」

「私も……」

「はい?」

「私も、普段は貴女を煙たがっていましたが、LINEを通じてその考えが改まっていったんです。そこへ、あの事件……もう、マッキーさんに逢えないかも……その事ばかり考えていました」

「どうしてそう思ったんですか?」

「LINE、楽しかった。ツアーに来てくれるの嬉しかった。あのホテルでの会話、楽しかった。いつの間にか私、貴女に惹かれていた……みたいです。だから、テロに巻き込まれていたらどうしよう?と、不安で不安で仕方なかったんです」

「私、女性ですよ?いいのですか?」

「それを言うなら、マッキーさんだって私のこと……」

「そうでしたわね、クスッ」

「男とか女とか、関係ない。『マッキーさん』を好きになったんですから」

「私達、似てますね」

「え?」

「私も、いつの間にか美佐さんに惚れてましたから」

「でも、ネットではあんなにキャラ壊れませんよ?私」

「私に対してだけは、手厳しいじゃありませんか」

 そう言い合い、笑みが零れる2人だった。そこへ、着信が入った。あ、タマちゃん先輩だ。とりま、今は無視。

「出なくて良いんですか?電話」

「いいです。用件はわかってますから」

 待ち人は見つかったのかー、早く連絡よこせーとか、そんな所だろう。

「それよりも、もう少しこうしていて良いですか?マッキーさんが生きてるって実感、もう少し味わいたいです」

「それは宜しいんですけど……あまり人が増えると、こちらも恥ずかしいんですけど」

「見せつけちゃえば良いじゃないですか」

「それはそれで困ります~」


 その後、私達が帰路についたのはマッキーさんと出逢えてから、3時間後のことでした。


本編はこれで終了です

次回はエピローグです

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