変化
アレから数ヵ月。
相も変わらず、黒崎様……面倒くさい!マッキーさんは、時間があるときはLINEを頻繁に寄越すようになった。私も、時間が合えば応対した。たまに変な時間にLINEが来て、既読無視みたいになって拗ねられたり、こっちがちゃんと返しても向こうが寝落ちで返事が返ってこなかったりと色々あったが、おおむね順調に関係を保っている。たまに告白紛いのことをされて喧嘩にもなったが。
ツアーにも相変わらず参加してくれている。ただし、変わったことが少々。サングラスの色が薄くなり、マスクをしなくなった。これも、私がLINE等でさんざん言った結果だ。長年……でもないか(笑)の努力が報われた。
『サングラスとマスク、何とかしてください(怒)』
『ムリポ(´Д`)』
『フザクンナゴルァ!(鬼怒)』
『おおお落ち着いて……ドウドウ』
『誰のせいですか!まったく……ブツブツ』
『取らないと……ダメ?(上目使い)』
『他のお客様が怖がるんです……って、これもさんざん言いましたよね!』
『マスクはいいけど、サングラスは……主治医と相談してみないと』
『そんなに悪いんですか?眼の病気』
『命に危険がある、不治の病でして……』
『……キレますよ?キレていいんですね?』
『ウソですごめんなさい許してください~(>_<;)』
『ホント、マッキーさん面倒くさい人ですね』
『うわーん、そんなこと言わないでぇ~(>人<;)』
『今度のツアー参加時に、変化がなかったら、この関係も終わりですからね(怒)』
『わかりましたそれまでに何とかします分隊長殿~(>-<;)ゞ』
『何ですか分隊長って……』
以上が、最近あったやり取り。私の文面も、だいぶマッキーさんに影響されてきたなぁ。当のマッキーさん本人も、相変わらず人前とのギャップガ激しい。しかし、そこが楽しくて私も彼女に付き合ってる。
「みさっぴー」
おろ、珍しくタマちゃん先輩こと、新澤珠美先輩が声をかけてきた。
「何ですか?タマちゃん先輩」
「ウガーッ、おのれも気安くタマちゃん言うな!」
「はいはい」
「んもぅっ!その微塵の反省も感じられない返事、暖簾に腕押しみたいだからやめて」
「で?何か用ですか?」
「うーむ、ま、いっか。いやね、最近楽しそうだなぁ~って」
「そうですかね」
「うん。秀美とも話したんだけどさ、スマホ見てる時間が増えたし、笑顔でメールしてるのを見てるしね」
「人をさりげなく観察しないでください。セクハラで訴えますよ」
「見てるだけでセクハラになるんかいっ!?」
「それともストーカーの方がいいですかね」
「もっとヒドイよっ!!」
こんな軽口を言っても怒られない位、仲が良いのがウチの会社のガイド陣。仕事が出来る人間に対しては、ものすごくフレンドリーな先輩達の筆頭が彼女。なので、後輩達は親しみを込めて「タマちゃん先輩」と呼ぶ。本人の前では、先程のように怒られるが(苦笑)。
「相変わらずの腹黒キャラだなぁ。メール相手にもそんな感じなの?」
「腹黒とは心外ですね。クールビューティーと言ってください」
「全然違うから!で、相手は誰なの?」
「黙秘権を発動します」
「何のキャラよそれ(苦笑)」
「っていうか、言う必要ないですよね」
「まぁそうなんだけどね。あの腹黒なみさっぴを笑顔にさせるんだもの。気にはなるよ~。密かにお付き合いしている相手?それだけでも」
「まだ腹黒言いますか。んー、別にそういうわけでは……強いて言えばメル友?」
「ふぅ~ん。本人にはその気はない、と」
「一方的に言い寄られてはいますけどね」
「何それ、男!?」
「いいえ。って食いつき良すぎません?」
「そっか~同性か~。頑張れ~。女の嫉妬は怖いよ~?気を付けな~」
「どこがどうしてそんな話しになるんですか!」
私の抗議に何処吹く風みたいな感じて、タマちゃん先輩は離れていった。
(そんなに楽しそうにしてた……かな?)
うーむ、無自覚だった。笑顔だったとこを、タマちゃん先輩に見られていたとは。やっぱ、心の何処かでマッキーさんとのLINEを楽しんでいる自分がいるようだ。寂しい寮生活のオアシス……はもう言い訳だよね。周りは知らない秘密の関係、というのが気に入ってるのかな、自分。
「しっかしこの関係って……微妙だよねぇ」
相手に告られてるのを、拒否ってる自分。彼女のためにも、ちゃんとした態度を取らないといけないのかな、そろそろ。
前に進むのか、あるいは後ろへ……自分はどうしたいの?
美佐の心に、少し変化が?