最強ぼっち死す。
魔王である俺、ルークは魔界でも最も危険と呼ばれる魔の森に住んでいた。
どれくらい危険かと言うとただの下位の竜なら5分も経たずにそこに住む魔獣達に食べらてしまうくらいの場所である。
何故そんな危険な場所に俺が住んでいるのかというと俺が滅茶苦茶強いのとそんなおれを他の魔族が怖がるからである。
簡単な経緯としては
魔族「怖いんでここから離れてください。」
俺「じゃあ、どこに行けばいいんだ?」
魔族「魔の森でお願いします。」
といった感じだ。
実際はもっとシリアスだったが。
まぁ、そんな事があって俺はこの魔の森で長い間住み続けて今日400回目の誕生日を迎えた。
「誕生日おめでとう」
誰も居ない居間で俺は一人自分に呟いた。
住むには広すぎる大きな城にたった一人で住んでいる。俺は自分が呟いた言葉が城に吸い込まれ消えていくように感じた。
一人でいるのが本当に辛い。
そんな思いは歳を重ねるごとに強くなっていた。
友達が欲しかった。
たった一人でも何かを話せる友達が欲しかった。
400歳という魔族の平均である300歳を100年も長い間生きた。
寿命が近いのか身体には力が入らず瞼は重い。
その上走馬灯のようなものが見えてきた。
産まれながらにして大人の魔族を超える力を持っていた俺。
5歳という若さで魔族の四天王を倒した俺。
7歳で魔王を倒して魔族最強になった俺。
10歳で魔族全体から恐れられて誰も近寄ろうとしない事に寂しさを感じた俺。
15歳にて俺のことをよく思っていない反魔王派達が人間の最強と呼ばれる勇者を手引きして俺を倒そうとするが、瞬殺して元の国送り返したのち反魔王派全員を見せしめに潰したら余計に恐れられる俺。
16歳にて魔族の国を纏める魔主に魔の森に引越しして欲しいと言われ引越した俺。
80歳にて国にある全ての本を読み終えた俺。
150歳にて魔族の魔法を全て覚えた俺。
180歳にて掃除洗濯料理といった家事全般を極めた俺。
200歳にて孤独が耐えれなくなり友達を作る為に行動を起こすも全て失敗、更に彼は生贄を探してるという噂が流れて会うことすら難しくなり城に戻り引きこもる俺。
250歳にて何度か自分の方が強いという魔族や何代もの勇者たち、加えて自分試しの武芸者などを倒しては送り返すを繰り返している内に彼らの剣術や体術などの技術を体得した俺。
300歳にて戦うのが怠くなってきたので城に結界を貼り誰も来れないようにして以後静かに暮らす俺。
そして今400歳にて死にかけている俺。
心も身体もボロボロで、友人は居らず、碌に人と話したことすらない。
死ぬことに対して思う事が無い訳ではない。
少し怖くもあるがそれ以上に生きたいと思えないのだ。
ただ未練はある。
それは友達を作れなかったことだ。
どんな財宝よりも高価で、どんな星よりも遠くにある。
何よりも価値があるそれを俺は手に入れることが出来なかった。
だから誰に向けていない最後の独り言を言う。
「寂しいな…」
その言葉で俺の生は誰にも看取られず幕を下ろした。