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今回少々長めになっています。



 親父、お袋、そっちは元気にやっていますか?

まさかのZという空前の最悪運を達成した俺です。

少し前までのGという数値ですらロック鳥に拉致されたり死にかけたり、やたら襲われたりしたものですが、さらに悪化したらしいです。


「あらあら」


「完全に目が死んでおるの・・・これゲヴェーア。流石にこれは可哀想じゃろう」


「あらあら、運Zですものねぇ・・・困ったわねぇ」


困ったような表情ではあるが、余裕そうなゲヴェーアに流石に苦言を呈したアシュじい。

いいぞ、もっとやれ・・・はぁ。


「ふぅむ・・・仕方ないのぅ。あまり儂が手出しするのは良くないのじゃが・・・ほれ」


そう言ってアシュじいが手を翳すと、眩い閃光が目を貫いた。


「ぐぉぉ!?目がァ!!」


閃光耐性?なにそれ?と言わんばかりの超威力を持つ光に焼かれて目を抑えて転げまわる。

ぐぉぉ・・・流石アシュじいということだろうか?

輝き具合が半端ではない。


「すまぬのぅ。じゃが、ほれ。ステータスをもう一度よく見てみい」


涙を流す俺にすまなそうな表情ながら告げるアシュじいに従って、ステータスをもう一度表示する。



---ステータス---

個体名:ユウ・ミサキ

種族:ぱんだ?

年齢:18才5ヶ月

職業:ぱんだ 1new、銃器製造技師 5


レベル:58

生命力:10050/100050 (職業・ぱんだにより上昇補正+2000)

魔力量:2210/2210


力 :SSS+

体力:SSS+ ↑1UP

器用:EX

敏捷:SS+

魔力:B

知力:C

精神:SS+

運 :F(最高神ツェアシュテーラの加護により上昇)


ースキルー


”アクティブスキル”

武芸百般(攻)2new、竜殺しMAX、ぱんだ?1new、パンダ流秘拳・フルもっふ1new

鮮血の宴3new、殲滅の誓い3new、生活魔法MAX


”パッシブスキル”

武芸百般(守)2new、指導7、もふもふガード1new、白と黒の衝撃1new


魅了上昇1newストレス耐性7、毒耐性5、精神耐性7、耐熱冷完全耐性1、閃光耐性MAX、ノックバック耐性4


”生産系スキル”

釣り6、料理3、鍛冶4、木工4、皮革3、機械操作1、罠作成2、銃器製造3


”ユニークスキル”

早熟MAX、変幻自在、アルマトゥーラ言語MAX、インフォメーション※体験版


”祝福”

ズィッヒェルの加護(特)、シュヴェアートの加護(爆)new、ファレの加護(職・強)new、龍神の加護(友)、ツェアシュテーラの加護(運)


”称号”

苦労人、胃痛の友(笑)、器用貧乏、神認定お人好し、異世界より来る者、2柱の中級神の強き加護を得し者、神の弟子、耐える者、森の狩人、戦闘狂い、職業マニア、新職始めました、職業神に注目されし者、鬼軍曹、虐殺者、竜殺し、竜の血を浴びし者、龍神の注目、女神達ロックオン☆new、大精霊(氷)を鎮めし者、ぱんだnew、女神に狙われし者new、史上最低の悪運new、最高神に祝福されし者new



「おぉぉぉ・・・!」


運が・・・!運が普通にッ!?

アシュじい・・・おぉ、神よ。


「よしよし、あまり強く祝福してしまうと精神が持たないからのぅ。これ位しかしてやれぬが・・・」


「いやいやアシュじい!本当にありがとう!助かったよ・・・本当に」


今なら膝下に跪いて靴にキッスしてもいい。

間違いなく嫌がられるだろうけど。


「よかったわねぇ、うふふ」


「もとはと言えばお前がぁぁぁぁ!!」


しれっと無かったことにしようとしている駄目神に瞬時にキレる俺。

こうなったら神だろうが、やってやらぁ!

がるるるる、と唸る俺を全く気にした様子も無く駄目神は近寄ってきた。


「なにをするき、ぐむぅ」


「うふふ、これで許してね?」


そのまま流れるように谷間に挟まれてしまった。

あらゆるスキルが反応すら・・・腐っても神、ということか?

だがこんなことで俺の怒りは・・・


ふにふに


こんな・・・俺は


ふかふか


はへぇ・・・


「あっさり懐柔されとるのぅ」


「うふふ、可愛いわねぇ」


「むぐむぐぐ」


頭上で交わされる会話を半分聞き流しながら巨大な胸に埋もれ続ける俺。

これは・・・だめ、だ・・・抵抗、する・・・気力が・・・。


「ダラッシャァァァァイ!!」


「きゃっ」


抵抗する気力が奪われ尽くす寸前に、最後の力を振り絞って脱出。

そのままゴロゴロと転がって壁際まで後退、すぐに戦闘態勢へ。


「ふぅ、ふぅ・・・あやうく堕ちるところだったぜ」


「普通に受け入れておったように見えたがのぅ」


「そうねぇ」


「ちがーう!断じて違うぞ!」


なんとか危機を脱出した俺は、もう一度ステータスをよく見てみることにする。

何度も運の部分を見て確信してから、全体を見た。


パンダの力でHPがとんでもない数字になっているが、それでも死にかけたばかりの俺としては多い事に文句などあるはずも無い。


問題はこのパンダである。

レア職業、ということになるのだろうか?

この場合ユニークと言うべきか?


とにかくパンダとやらになった事で、なぜか種族までぱんだ?になっているのは少し納得出来ないものがあるが、生きていく上で種族が問題になった場面に合ったことが無いのであまり気にしないことにする。

気にしたらきっと生きていけなくなりそうだし。

え?ぱんだ?とか言われたらどうしよ・・・考えるのは止そう。


謎の秘拳まで使えるようになっているが、このスキルだけは使用する時に技名を叫ばないといけないらしい。

スキルについての詳細には声の大きさとテンションで威力が増幅するとある。


・・・これを使うことは無いな。

なぜか熱血ロボット乗りみたいな事を強要されていることに疑問を持ちつつ読み進める。

着ぐるみパンダだぞ?

中身はムサイ男、さらに中身はおっさん。

マトリョーシカか俺は。


スキル・ぱんだ?は、敵の視線を引き付ける効果があるようだ。

他にもそれっぽいスキルはあるのであまり使いたくはないが、襲撃された時には役に立ってくれそうではある。


もふもふガードは単純に防御力が上がるらしい。

パッシブということなので、かなりタフになりそうだが・・・ステータス+黒竜の鎧とどちらが防御効果が高いのかは検証が必要だな。

着ぐるみ来てないと使用出来ないらしいが、まぁ当たり前か。

脱いでもモフモフって意味が分からんしな。


・・・高所からの落下ならパンダ一択だが、そうそう高所落下など無いはずだ・・・そう信じたい。

ふむ、そういえばパンダスーツ着てるんだったな・・・あまりにもフィットしてて何かを着ている気がしないが、とにかく着てはいる。


ちなみに頭のかぶりものだけは外して手に持っている。

遊園地裏の休憩中のパンダみたいだなよく考えると。

おつかれーす、休憩はりやーすみたいな。


いくら押し付けられたといっても全身着ぐるでみ流石に神に会うには失礼かと思ったんだけど、あの凶悪胸に襲撃を受けると予想していたら・・・うん、やはりかぶらなかったな。


おっぱいに罪はないからな。


「そうだわ~、パンダちゃんに転職したのでしょう?早速見せてちょうだい?」


ぱん、と手を叩くとゲヴェーアがそう言って期待したような表情でこちらを見てきた。

そういえば職業神が女神達に脅されたとか言ってたっけ。

パンダスーツは着ているが、見せろということはアレか。

この情けない顔をしたパンダヘッドをかぶれ、ということか。


「まぁ・・・かぶる位なら」


少し考えて、かぶることにした。

どうせ減るもんじゃなし、気にせずいこう。

すぽっと妙に困った表情をしているパンダの頭をかぶる。


ビカ!ビカ!ビビビビビビッッ!!


「うぉぉ!?急に眩しく・・・何も見えん。ナニゴト!?」


「あちゃぁ~、見つかっちゃったわねぇ~」


「ほっほ、仕方のない子らじゃのぅ」


二人とも何があったんだ?

視界が微妙に悪くてよく分からなかったが、突然体が動かなくなった。


お!?

なんだなんだ!?

これが噂の金縛りか!?

寝てないのに!?風魔おそるべし・・・!

自分でも頭が空転しているのが分かる程、動揺していると視界に女性の顔が映った。

狭い視野の中には女性の顔顔顔・・・ヒィィ!?


「「「ッキャーー!!ぱんだかぁわぁいい~!」」」


おごぉッ!?

苦労して頭を左右に動かすと、見渡す限りの範囲に女神女神女神・・・。

こんなに居たの!?という程の女神が視界一杯に広がっていた。


なぜか視界の端で爆笑しているシュヴェアートと笑い過ぎて白目をむいたエルさんが居たような気がしたが、気のせいだと思うことにする。

気にしたら負けだ、心頭滅却、心頭滅却・・・無理!


なにより体中をまさぐられて正直、怖い。

今ならきっと困った表情のパンダヘッドが心情とマッチしていることだろう。

時間経過で涙も追加されるかも。


諸兄は女に群がられて羨ましいとか思うだろうか?

身体が動かなくても?

無理矢理モフられても?


わざとなのか力加減がおかしいのか体中がやたら痛くても!?

もふもふガード!仕事しろ!!

いたいいたい・・・ちょ・・・やめ・・・


俺は逃げたい、今すぐ逃げ出したいが空いた空間が存在しない。

この狂乱を修めるにはアシュじいに怒ってもらうしか・・・誰だ!?尻撫でた奴!

手つきがイヤらしかったぞ!?


おい!股間はよせ!!

そこはパンダじゃなくてパオーンしか居ないんだ!


いた、痛い、痛・・ちょ、やめ・・・アッーーーー!!




その日、俺は女神恐怖症に陥った。



巻き添えにならぬように壁際で混沌とした空間を眺めていたシュヴェアートはようやく収まってきた笑いを口の端に残しつつ、同じ理由で隣りに佇んでいる同僚を見た。


「くく、あぁ~笑ったわ。女神共がなんかコソコソやってると思ったら新職作ってたのかよ」


「笑い過ぎだシュヴェアート。ユウの奴もあれで・・・くく」


「くはは!ズィッヒェル、お前さんも笑いが漏れてんぞ~?しっかし、地球産の動物が神界で流行ってるなぁとは思ってたが」


「こちらにも実装するよう最高神様に上奏したらしい」


同僚の言葉に、片眉を上げる。

世界で生きる者達は知らないことだが、この世界に必要の無い生命など無いのだ。

それはつまり今がベストであり、ある程度進化する余地は有っても全く新しい生物を持ってくる程余裕があるわけではない。


それが分からぬ者は神界に居ない・・・はずだ。


「おいおい、どういうことだ~?」


「よく見ろ、シュヴェアート。女神達と言っても」


顎で示されてもう、もう一度騒ぎを眺める。

と、確かにそこにいるのは一部の者達。


「下級神がほとんど、中級神はゲヴェーアだけ・・・そういうことかぁ?」


同僚はいつの間にかいつも通りの真顔で頷いた。

一見冷たい無表情であるが、よく見ると瞳は優しげだ。


「そういうこと、だな」


「まぁ、中級神でンな事したら一発で封印処理だよなぁ」


「直接関わらなければそこまで厳しい沙汰は無いだろうが・・・最高神様が星々をお作りになられたとはいえ・・・生命系統、ルール造り、世界が荒廃しないよう文明誘導等、管理運営すべき我々中級神以上の存在がそのようなことをしてしまえば世界のバランスが崩れてしまう。封印処理で済めば良い方、だろうな」


「そこんとこ下級神はある程度自由だよなぁ。俺らと違ってよぉ」


愚痴とも取れる発言に、ズィッヒェルはフン、と鼻で笑った。


「世界の生物と直接やり取りするのが主な役割だからな。精神性にも遊びが必要だろう。そんな事を言って、お前も今の仕事が気に入っているだろうに」


図星だったのか、シュヴェアートは頭を何度か掻いてそっぽを向いた。

しばらくなにやらモゴモゴとつぶやいた後で話を変える為か言った言葉にズィッヒェルが思わず吹き出した。


「しっかし、ユウの奴。あいつらが中性体だって知ったらどんな反応するかねぇ~?」


「ブホォッ!」





ようやく抜け出した・・・。

もみくちゃと言う名の暴行を受け続けてすっかり疲弊した俺は、座り込んでいた。

正直立ち上がる気力がない。


「死ぬかと思った・・・」


装備変更で着ぐるみを脱ぐことを思いつかなかったら本当に死んでいたかもしれぬ。

あいつら脱いだ瞬間、速攻で消えたからな・・・物凄い複雑な気分だ。


内心でさっさとパンダ卒業しようと決めて、気合を入れて立ち上がる。

辺りを見渡せば、いつの間にやらアシュじいと駄目神は消えていた。


「ありゃ、駄目神はともかくアシュじいにはお礼を言いたかったんだけどな」


せめて、と心の中でしばらく祈っておいた。


「さて・・・エルさん、とおまけも待たせたな」


「な、お前心配してやった俺に向かってなんて言いぐさだ!」


「どうせ眺めて爆笑してたんだろ?」


「うん」


「さて、エルさんにお願いするのは気が引けるんだけどさ」


「ああ、気にするな。ユウの仲間の事だろう?彼らはこちらに向かうそうだ」


その言葉に驚いた。

多分、アンラッキーボーイの俺に任せてたら一生着かないんじゃないかとか考えて、あちらから合流に動いてくれた、ってとこだろうな。


まったく、久しぶり・・・でも無いのだろうが会いたいなぁ。


「今日明日には着くだろう。それと、また色々やっているようだな」


そう言って微笑するエルさん。

ほんと神だからか、紳士で美形なエルさんが微笑むと物凄い威力だよなぁ。


「あ~、まぁいつも通りだよ。なんだか放っておけなくてなぁ」


「くく、そういう生き方を否定はせんよ。好きに生きているのだろう?」


雁字搦めで息苦しい生活であった地球時代を知っているエルさんの言葉に力強く頷く。

いやぁ、好き勝手し過ぎてなんだか最初は距離感というか、世界との付き合い方みたいなものが分からなくてちょっと苦労したけど、段々無茶苦茶過ぎて面白くなってきたよ。


「くくく、パンダもか?」


エルさんの言葉に思わず苦笑する。

これでも神様には感謝してるんだぜ?

言葉には出さずに呟く。


心の言葉を聞いたのであろうエルさんの笑みが深くなる。

隣りのシュヴェアートもなんだか嬉しそうにしているが、こっちはまぁどうでも良い。


「はぁ、恩返しかよ~?」


呆れたような声で言うシュヴェアートだが、顔が笑ってんぞ?


「ま、何度もは無いけどな!流石にこれ以上フザケられたら俺も怒ると思うぜ・・・」


最後は疲れたようにそう言う俺に二人は笑った。


「あいつらに代わって礼を言うぞユウ」


「ま、お前は良くも悪くも神界で注目されてるからなぁ~。これからも色々あると思うぜ~?」


ニヤニヤしながらそういうシュヴェアートを小突いて、エルさんは手を上げた。

そろそろお別れみたいだな。


「また会おう。今度はもう少しゆるりと、な」


「楽しみにしてるよ」


「そろそろインフォ実装する予定だからな~?楽しみにしててくれ~!」


「適当に待ってるよ」


「俺だけ扱い雑ッ!!ちょ・・・ズィッヒェル引っ張るなっ・・・あぁぁ」


シュヴェアートがなんだかブツブツ言っていたが、エルさんが引っ張って連れていってくれた。


パァン!


両手で頬を叩いて気合を入れる。

最初は思いっきりやり過ぎて顔が捥げるかと思ったが、最近は力加減も結構出来るようになったので、音だけである。

赤ちゃんでも安心してご利用いただけます。


「さぁて、それじゃあいつらが来るまで頑張りますかねぇ・・・その前にスティか。すっかり忘れてた」


疲労と希望となんだかよく分からない気持ちのまま、部屋を出る。

まずは宿屋、だな!

お読みいただきありがとうございました。

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