表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/74

話が切れなかった・・・ボリューミィな文章でお送りします。

 この世界に来て初めての街の宿。とりあえず地球にいた頃からの癖で、設備の確認の為に部屋の中を見回した。


小さな机と白いシーツが敷かれたベッド、コートなんかを掛けるハンガーらしきものもある。

窓は総木製で、上に持ち上げて開けるタイプのやつだ。小雨位なら開けっ放しでも大丈夫そうだな。

ちなみにガラスは今のところ見てないからこの世界にはまだ存在しないのかもしれない。

確か石英とかいるんだっけか・・・うん、わからん。

見上げると手が届く程度の高さにランタンのような照明器具がぶら下がっていた。夕方に入ったからか、点灯していたのは助かるが、手持ちのランタンと操作の仕方が違うようで消し方が分からない。あとでミーネに確認しよう。

部屋の隅には壺が置いてある。

壺の上には丸い穴が開いた板が置いてあってここに用を足すらしい。トイレ文化の早急な発展を祈る。切実に・・・。


その辺でするよりはいいのか・・・?うん、あまり考えずに異世界の文化を受け入れよう。


コン、コン


1人下水事情に絶望していると、扉をノックする音がした。ミーネだろう。


「開いてるよ」


「入るわね」


そう言って入ってきたのは予想通りミーネだった。そりゃそうだ、約束してたもの。


「とりあえず夕食の前に確認しておきましょう」


「そうだね。・・・ミーネ。まず初めに言っておきたいんだけど・・・」


思わず口ごもる。改まって言うのが恥ずかしいんだが。ええい、男は度胸!


「なにかしら?」


「今日まで本当にありがとう。ミーネが居なかったら野垂れ死んでた。鍛えてくれたおかげで目標が出来た。訓練してる間に夢が出来た。感謝してもし足りない」


そう言って頭を下げた。しばらくして、ゆっくりと顔を上げるとミーネは照れているのか真っ赤になっていた。おや・・・?想像と違う反応だ。


「・・・ユウ。感謝したいのはこちらの方よ。神殿で、神である私に鍛えて欲しい、もっと強くなりたいと訓練を願う騎士や冒険者は沢山いたけれど・・・誰もついてこれなかった。最後まで付いてきたのはユウだけ」


そう言って遠い目になるミーネ。

ミーネは訓練になると鬼軍曹になるからな・・・見た目とのギャップがすごいから余計逃げたくなるのかもしれない。慣れると気にならないんだが。

でも、ミーネの言葉はオレの夢を後押ししてくれたように感じた。

気のせいかもしれないけど。

今言うつもりは無かった・・・けど言ってしまおう!オレは立ち上がって右拳を心臓の辺りにあてた。

無意識で尊敬する相手に対する最大限の敬意を示す為に勝手に体がそう動いていた。


「ミーネ・・・いや、闘争を司る女神ミーネに言おう!貴方の弟子として、オレはもっと強くなる!あらゆる武器を使い!あらゆる技能を駆使し!いつか必ず貴方を追い抜いてみせよう!ここにお誓いします!」


湧き上がる思いのまま、言葉を放ってからミーネを見つめた。

不遜ととるかその意気やよしと喜ぶか・・・弟子は師をいつか越えるもの。昔、仕事を教わった職人から言われたことがある。越えてくれないと技術が進歩しねーじゃねーかと。あんま不甲斐ないと師匠が心配になって引退出来ないんだぞ、なんて笑ってたけど・・・彼には本当に色々教わったものだ。今でも尊敬している。


そのミーネはというと、びっくりしたのだろう。

しばらく目を見開いた後、ゆっくりと笑顔に変わった。


「ふ・・・ふふふ・・・あはははははは!本当にユウは面白い!いいわ!いつか私を越えてみせなさい!地上最強程度は軽くなってみせなさい!私も武芸を磨いて待っているから」


そう言って、ミーネは本当に嬉しそうに笑ったのだった。




「おう!・・・・・・まぁとりあえず飯食いにいこうか」


「あ・・・・・・そうね」


二人してテンションが上がってしまい思わず言い合ってしまったが、冷静になった途端二人して恥ずかしくなってしまった。


空いていた席に座ると夕食を注文する。初めてなので親父さんにお任せしておいた。

運ばれてきたのは大きめの具がゴロゴロと入ったシチューに白パン。木のジョッキに入った赤ワインだ。

二人で乾杯した後は黙々と久しぶりのまともな食事を堪能した。


「うまいな!」


「美味しいわね」


人間の振りをしているミーネにとって食事は嗜好品ということになるんだが。

二人共ここの食事が気に入ってしまった。この街で活動している間はこの宿を利用しよう。


食事を終えて裏手の衝立の奥で軽く水を浴びた後、部屋に戻ってまず窓を開けた。

この窓からでは位置的に月は見えないようだ。


だけど綺麗な星空は十分に堪能出来る。

地球に居た頃、ここまで綺麗な星空を見上げたことがあったろうか。

今では魔道具となった愛用のオイルライターで煙草に火をつける。


「ああ・・・綺麗だな」


地球に居た頃はストレスで胃をやられながら、気を使って生きてきた。

弟達が心の病気で中々働けずオレが長男だから頑張らないととか、中間管理職だから組織の潤滑油にならないととか色んな考えで必死に生きてつもりではあるけれど。

結局はオレが楽しめていなかったんだ。

やり甲斐はあった。喜びもあった。生きがいを感じていたとも思う。

結婚はしていなかったけれど、いつかは・・・と思ってはいた。それについて後悔はない。


だけど。


本気で生きていると感じたことは無かった気がする。

この世界に飛ばされて。

右も左も分からないオレをエルさんとミーネが助けてくれた。

他にも知らない神が助けてくれているのだろう。あ、シュヴェアートさんは除くけどな!


命と命の戦い。地球では野蛮と言われていた武器を手にとっての闘争。

この世界では当たり前の、オレにとっては新鮮な生き方。

訓練を重ね、武器の扱いを覚え、己の能力を駆使して戦う日々の素晴らしさ。

日に日に重く、沈んでいた・・・でも人間として大切な本能とか生きる事への必死さみたいなものが湧いてきて、同時に仕事に追われる日々だったオレの心が開放されていくように思えた。

口調が完全に変わったのもこの頃からだ。魔物や獣を殺すことへの忌避感もあまり感じなくなった。

それと同時に命に対する尊敬みたいなものを感じている。

命は尊い。だけど、必要ならば殺すことを躊躇うな。

無闇に殺すな。そして、生きる為に殺すことで糧を得ていることを忘れるな。


一度、目をつぶって再確認する。


吸い殻を塵に変えて、窓を閉めた。

手こずりながらランタンの明かりを教えてもらった通りに操作して消す。

そろそろ寝るか。


あ・・・これからの事を相談し忘れたな。まぁいいか。明日にしよう。

横になってみると毛布一枚とは雲泥の差だ。よく干してあるのか太陽の匂いもする。


野営とは違うベッドの感触に、目を閉じたらすぐに眠ってしまった。




翌朝。

朝食を終えたところで、二人してオレの部屋に戻ってきた。

これからの予定を相談するためだ。


「今日は冒険者ギルドで冒険者登録する、だったわね?」


「ああ。登録した後は考えていないけど、出来るなら依頼を1個こなしてみたいかな」


「分かったわ。・・・本当はもうしばらく同行するつもりだったのだけれど。ギルドに登録したのを確認したら神界に戻ることにする」


「・・・そっか。まぁ、あんだけ啖呵きっておいて、もうちょっと同行してよぉ!なんて言えないな」


「うふふ!そうね!」


「そいじゃもう少しお付き合いの程」


「ええ、いきましょう」


短い準備を終え、ついにファンタジーの鉄板である冒険者になりにギルドへ向かった。


冒険者ギルド・アイシーン支部は森の熊さん亭から近い場所にある。

この辺りでは珍しい石造りの3階建で、物凄く目立つ建物だった。

入り口は重厚なドア・・・ではなく、スィング式の簡易ドアが付いているのが何だかアンバランスだが、荒々しい冒険者相手では破壊されてしまったりするのだろうか。

付け替えたばかりのように綺麗ではある。


一瞬、躊躇した心を振りきって中に入ると、小説なんかで見たようなイメージそのままの内装だった。

入ってすぐに受付カウンターがいくつか並んでいて、カウンター上の天井付近には各案内がついている。新規登録、依頼受付、ギルド員相談窓口・・・なんてものもあった。

奥は食事も採れる酒場になっていて、テーブルで相談している冒険者や、食事をとっている者もいる。

入ってきた瞬間、鋭い視線を感じたがすぐに止んだ。


「おお・・・冒険者ギルドっぽいなぁ」


思わず漏れた独り言が聞こえたのだろう、手前の新規受付・依頼受付カウンターに座っていた女性がこちらを向いてにっこりと笑った。


「うふふ!初めての方ですね。登録ですか?依頼ですか?」


「あ、登録にきました!」


「分かりました、そちらの方も登録でよろしいですか?」


「いいえ、こちらだけよ」


「あ、分かりました。それではこちらに必要事項の記入をお願いします。文字の読み書きは大丈夫ですか?」


「?・・・ああ、大丈夫です」


一瞬、馬鹿にされているのかと思ったが、そういえばこの世界では識字率が高くないんだった。

ちなみにオレは異世界言語のスキルがあるので、読み書きは問題ない。地味に重要なスキルだよコレ。


手渡された紙に必要事項を記入していく。

名前、性別・・・いるのかこれ?まぁいいや。

戦闘経験・・・あり、っと。

使用武器・・・あー、全部?っておかしいか。


というか受付のお姉さんの視線を感じて落ち着かないな。

だから手が止まったのも見えたのだろう。


「何か分からないことがありましたか?」


「えっと、使用武器のとこですが、普段使う武器結構たくさんあるんですけど」


「複数の武器をお使いの場合は得意武器を書いていただければ大丈夫ですよ」


「あ、わかりました」


全部得意って言ったら痛い子に思われて笑われそうだな・・・じゃ、斬撃武器と打撃武器がいいか。シンプルに剣と鎚にしとこっと。

出身地はミーネと相談してある。一応、実在はしたが少し前に滅びた村があるそうなのでそこにした。

こんなとこかな?


「出来ました」


「はい、では確認いたしますので少々お待ちくださいね」


そう言って受付のお姉さんが渡した紙を見ながら手元で何やら操作している。

ステータスカード見せなくて良いのだろうか?と思ったが、ここで人に見せる状態にしてしまうと不特定多数に見られてしまう可能性があるから見せないのだろう。

ステータスカードないと街に入れないしな、そもそも。


「それでは最後に、戦闘技術を見る為の試験があります。準備が良ければ奥の扉から訓練場に行けますがすぐにやりますか?」


「お願いします」


「では、訓練場までお願いします。試験官は・・・この時間だとジョージさんね。ジョージ教官という方がいますので話しかけて試験を受けてください」


「わかりました」


ミーネは受付で待っているとの事なので、1人で訓練場へと向かった。

さて、試験ってどんなのだろうな。


訓練場は野球の試合が出来そうな広さで、弓の的らしきものが掛かった場所や、剣や槍の訓練で使うのだろう案山子、魔法の訓練なのか色が違う壁なんかもあった。壁には人型や狼のような形に線が書いてある。

そこを狙うのだろうか。

静止している獲物を狙うにはいいかもしれないな。


訓練場では何人かが訓練していた。教官らしき女性に見られながら弓を射る者や模擬戦をしている人達もいる。それを見ているのは仲間だろうか?

ほうほう・・・なんだか色々工夫されてて面白そうだなぁ。


「よう、訓練か?」


辺りを見回していたら壮年の男に話しかけられた。

振り返ると、そこには青い髪を適当に後ろに流したような頭に顎鬚を伸ばした男性がいた。手には訓練用の木剣を持っている。

この人が教官か?


「はい、受付でジョージ教官という方に試験を受けろと言われてきました」


「ほう、オレがジョージだが・・・見たとこ純粋な剣士スタイルか?よし、ともかく軽く模擬戦すっか。それで討伐の依頼が受けられるか見るからよ」


「はい!おねがいします!」


「おう、そんなに畏まる事はないぜ。冒険者に礼儀は不要とは言わねぇが、冒険者同士じゃ返って余所余所しいって言われちまうぞ」


「はい・・・えっと、おう!ジョージさんよろしく!」


「ハハハ!素直で結構!そいじゃやるか。木剣でいいか?」


そう言って壁際に置いてある沢山の武器を示された。ここから訓練用のを選べってことだろう。

剣やら鎚やらあったが、その中で握りが良さそうな木剣を見つけて軽く振る。うん、いけそうだな。


「はい、得意武器のとこにはとりあえず剣と鎚って書きま・・書いたよ」


「クク、とりあえず書いたかよ・・・その言い方じゃ色々持ってそうだなお前?」


「厳しい師匠に鍛えられたからね」


「そうか。得物はそれでいいんだな?そいじゃ始めよう。いつでもかかってきな」


そう言ってダラリと構えとも言えない構えを取るジョージ教官。隙だらけにみえてこりゃすごいな!

剣術で言う無形の位ってやつか?これは良い訓練になりそうだな・・・!

見た目通りというべきか、かなり気さくで話しやすい人みたいだが一気に纏ってる空気が変わった。

よし、いっちょ頑張ろう!

こっちも構えを取ると先手を打って攻撃にかかった。

打ってこいって目が言ってたからね。この人はオレより強い、遠慮は無用!


「シッ!」


「お、なかなかおもしれぇ剣筋だ。その調子、うぉっ!」


まずは様子見に軽く上段斬り・・・と見せかけて途中で剣速を変えて右片手中断斬りへ!

剣速を変えてかなり見えづらい剣は、あっさりと防がれた。

簡単に防がれたが構わない。弾かれた勢いに逆らわずに回転しながら下段蹴りと同時に右手の剣を溜める。剣に意識がいけば蹴りが決まって軸をずらせる。

これも防がれた。ならっ!下段蹴りで屈んだ足に力を入れて地を抉る勢いで立ち上がると同時に剣を逆袈裟に振るった。


「おぉ!?足癖わりぃな!」


「あっさり!防いで!おいて!」


またもあっさり受け止められた。一旦距離を置いて教官を見る。

汗一つかいてねー。ミーネ程じゃないんだろうがかなり強いなこの人。

ジョージ教官のレベルが高くて身体能力が違うんだろうか。

そうだろうな。スキルレベルも恐らくかなりの差がありそうだ。受けられた剣はまるで揺るがない。


でも関係ない。こんにゃろう!絶対一撃入れてやる!

もはや試験など頭から吹き飛んでいる。ただ一撃入れたい!


剣技に差があるのは間違いない。

ではどうやって一撃入れる?

意表をつくしかない。


目潰し?その程度避けられそうだ却下。

武士の仕合で剣を投げて意表をつくってあったな?

無理そうだ却下。

ええい!考えるだけ無駄だ!とにかく状況を動かせ・・・!


剣を片手正眼から逆手に握る。刃を隠すことで間合いを読まれないようにする。

こんなのは大して効きもしないだろうが、小細工を積み重ねるつもりだ。

次は通じない?

今効けばいいんだよ!


「おまえどんだけ変則的なんだよ!?」


ジョージ教官が叫んでいるが、構わずに斬りかかる。

途中で速度を変えてフェイントにしながら、

右手を


振り


「っ!?」


背中で左手に持ち替えた剣を間髪いれずに振る。


「このっ!」


「ガフッ!」


そこで


意識が


途切れた。

---ステータス---

個体名:ユウ・ミサキ

種族:ヒューマン

年齢:18才3ヶ月

職業:中間管理職くろうにん、(剣士職開放)(格闘士職開放)(狩人職開放)(斥候職開放)(斧士職開放)(盾職開放)(商人職開放)(鍛冶職開放)(医療職開放)


レベル:10

生命力:100/575(27UP) ※気絶

魔力量:300/300



力 :C+

体力:B

器用:A

敏捷:C+

魔力:E

知力:D+

精神:A

運 :C


ースキルー


”アクティブスキル”

軽盾術5、鎚術5、剣術7(1UP)、短剣術5、刀術6、斧術8、棒術4、槍術4、杖術5、拳闘術4、蹴撃術5(1UP)、投げ技3、関節技3、投擲術6、弓術5、手当6


生活魔法AX


”パッシブスキル”

防御8、足捌き5、ステップ4(1UP)、持久走5、軽業4、地図2、方向感覚3、サバイバル5、部隊指揮3、指導3、登攀2、魔力操作2


ストレス耐性6、毒耐性5、精神耐性5、耐寒1、耐暑1


”生産系スキル”

釣り3、料理3、鍛冶2、木工2、皮革2、機械操作1


”ユニークスキル”

早熟MAX、器用貧乏9(1UP)、アルマトゥーラ言語MAX


”祝福”

ズィッヒェルの加護(特)、シュベアートの加護(笑)


”称号”

苦労人、胃痛の友(笑)、器用貧乏、神認定お人好し、異世界より来る者、中級神の強き加護を得し者、神の弟子、耐える者、森の狩人、戦闘狂いnew


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ