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二日毎に更新を心がけてきましたが、なかなか筆が進まず遅れ出しております。

楽しみにしてくれている奇特な方はすみませぬ。


 王都門が見えてきた。

ようやくこの旅も終点である。

遠目から見え出した時から思っていたが、白亜の城が高台にあって外からでも見えるし、外壁で遮られて見えないが、城の周囲には街並みが広がっているのだろう。

街道まではみ出した商人達の馬車や旅人、冒険者らしきパーティと共に門に立つ衛兵にカードのチェックをされると、ようやく到着となった。

これで依頼も無事達成である。


「おぉ・・・これが王都かぁ」


「ん・・・大きい」


「人が沢山いるねぇ」


シフは驚く俺達を微笑ましそうに見ていたが、ふとその美しい表情に影が差した。

表情を暗くしたわけではない。


文字通り・・・頭上に何か・・・雲か何かが太陽を覆ったような。


そして、ふと上を見上げたシフの顔が思わずといった風に、ひきつった。


「・・・は?」


その無防備な声に、もしくは空を覆った影に気が付いて顔を上げた人々が悲鳴を上げて逃げ出すのが視界に入った。


無理もない。


「えぇぇぇぇぇぇぇ!?なんでこんなとこにロック鳥が・・・ッ!?」


思わず叫んだシャルさんと後ずさるカリン。


見上げたロック鳥の視線は・・・


「・・・なんかこっち見てね?」





 ロック鳥。

大空の覇者、魔の大鳥・・・空の王者グリフォンやワイバーンすら捕食の対象とするこの鳥、とにかくデカい。

その足は巨大で片足で獲物を軽く持ち上げられる強靭さ。

その翼は広げれば10mを越え、まるで空を往く要塞だ。

くちばしも巨大な上にいい感じで鋸のようにギザギザしていて咥えられたら間違いなく致死。

爪とて1本1本が人間の頭を貫いた日には爆散して何も残らないのでは、と思わせる鋭利さと強靭さを同居させている。

挙句の果てに鳥頭のくせに賢いらしい。

謎だ。


「くッ・・・場所が悪すぎる・・・!」


対空攻撃はあまり考慮していなかった・・・というかこんなパターン想定出来るわけもなく、ポーチの中にも相手になれそうな武器は入っていない。

周囲には逃げ出す人々がパニックに陥っていて、とても素早く退避とはいかない。

つまり広範囲に及ぶ魔法や攻撃は不可能。


周りを見渡すシフも流石に想定外の事態に焦りを隠せないが、剣の柄に手をかけた彼女には戦意は有っても怯えは無かった。

流石はSランク・・・胆力が違う。


相手の狙いが俺達の誰かであるのに間違いは無さそうだが、誰なのかまでは不明だ。

分散しても誰かが犠牲になると思えば、トラウマを抱えたシャルさんは勿論、俺もカリンも選べまい。


「と、にかく・・・情報だ。カリン!」


びくんと肩を震わせたカリンが慌てて識別の魔眼でロック鳥を調べ始めた。


「ンッ・・・南方の海に・・近い崖に住む。主な獲物は大型の海生動物や怪魚・・・またサハギンなども好む」


サハギンなども・・・好む。


「なぁ・・・最近サハギン見なかったか」


「あれ~・・・なんか川でもいけるぜ~とかいってたけど・・・逃げてきただけだったんだねぇ・・・」


茫然とした表情で言うシャルさん。

つまりは・・・あのいきなりのサハギン襲来はフラグ、であったと。


そんな真実。



「気づくかァァァァッ!!!んなもんッッ!!!」


運命のいたずらか駄目神のせいか・・・思わず空に向かってこの不条理に対する怒りの叫びが轟いた。

そして。


「あ、ば、馬鹿者!」


叫んだ俺に向かって視界一杯に広がる足。


「どぉうわぁぁ!?」


自分でもどうかと思う謎の叫びと共に横っ飛びに回避するが、自分の格好を失念していた。

旅の為にフード付きマントを装備していたことを・・・。


「え」


「ユ、ユウ!?カリン!魔法魔法~!!」


「あわわ・・・風よお願い刻んでかめぶ・・・噛んだ」


あまり表情が変わらないから分かりにくいが、相当混乱しているらしいカリンが魔法の詠唱をファンブル。


かめぶ・・・


可愛いけど今やらないで欲しいッ!!

慌てて駆けつけようとするシフとシャルさんを余所に、ロック鳥はそのまま大空へ舞い上がった。

俺のマントを引っかけたまま・・・。


「ぬぉぉぉぉ!!?」


思いっきり尻から持ち上げられて、思いっきり上に引っ張られて・・・空を飛んだ。


「くっ・・・閃ッ!!・・・届かないかッ!」


剣を抜きざまに放った遠距離攻撃らしきものもロック鳥のあまりの上昇速度に届かず、カリンがようやく組み上げた魔法を・・・


「貫け貫け・・・風槍!」


ヒュゴォォ!!


「へぶッ!?」


狙いを焦ったのかなぜか俺に直撃。

マントに亀裂が入ったが、依然ロック鳥の爪に引っかかったまま・・・その衝撃で意識がぶっ飛んだ。









・・・ル・・・!


誰かに呼ばれたような気する。


ル・・・ルルゥ!


うるせぇな・・・そんな大声出さなくても聞こえてるよ。


グルルルゥ!!


「やかましいわッ!!・・・うわぁぁぁ!?俺飛んでる!?飛んじゃってる!?」


どうやら意識を失っていたらしい。

妙に鳩尾が痛むが、なぜだろう・・・。


慌てて見渡せば空の上。

風圧に呼吸が苦しいが、上を見上げれば巨大な爪とバッサバッサと羽ばたくでけぇ翼。

あぁ・・・おじさんロック鳥にさらわれてしまったらしい。


「おいおい・・・昔の物語じゃないんだからよ・・・アラジンだったっけか・・・」


務めて冷静に考えるように己に強いながら・・・辺りを見渡す。

眼前には巨大な山脈が広がって、その裾野に沿うように森がある。

川は木に隠れて見えないが、切り立った崖から大きな滝が豊富な水量を地上に落としているのが見えた。


「すげぇ・・・」


その自然が作り出す美しさに現状を忘れて見入ってしまう。

雄大だとか、美しい自然だとか、テレビや本では分からない・・・見たことがある者にしか味わえない感動がそこにあった。


「いかんいかん・・・とりあえず現状をどうするか・・・マントを切って脱出するのは多分可能・・・問題は落下したら多分死ぬってこと位だな」


うん、詰んでるね。

パニックになりかけている自分を感じながらも出来るだけ考える。

思考に逃げたともいえるかもしれない。


こんなんどうしろっつうんだよ!!

そう叫んで八つ当たりしたい気持ちで一杯である。


「なにかないか・・・なにか・・・あるはずだ」


どんな物語の主人公も機転とある道具を工夫して何とかしてたんだ。

これでも読書量なら・・・質はお察しだが・・・読むだけならそれなりのもんなんだ。

今こそその成果を見せる時ッ!!


「テントを使ってパラシュート・・・保留。風圧を伴うような範囲攻撃を下にばら撒いて反動で落下速度を制御・・・出来るか馬鹿。このままぶら下がる・・・一対一でロック鳥と闘っても多分死ぬな、却下。だいたい足場があるかどうかも分からねェ。戦闘は考えるべきじゃないな。最後の手段にしとこう」


その後も悩みに悩んだ末に2つの方法を取ることにした。


その①

テントを使ったパラシュート作戦


眼下の森に向かってマントを切ってダイブ。

ある程度落下したところでポーチから予め取り出しておいたテントを頑張って広げてパラシュート。

これで貴方も空挺部隊!


その②

追撃されないようにダメージを与えちゃうよ作戦


落ちてる最中にパクッとされたらさようなら確定なので、出来るだけ追撃させないように手傷を負わせる。ある意味で今ならダメージを一方的に与える事も出来るかもしれない。

これで貴方もダイ○ード!


「さてと・・・そうと決まれば準備開始だ」


風圧に微妙に折れ曲がった煙草を咥えて生活魔法で火を点ける。

あまりの勢いにマッハで煙草が消し飛んでいくが、頑張って吸う。


「・・・なんか吸い足りないけど良しとしよう。さて・・・状況開始」


空気が変わった。

しばらく前に起きたらしきニンゲンが何やら喚いていたが、黙り込んだと思ったら気配が消えたのだ。

せっかくのエサを落としたかと横目で確認すると、爪に引っかかったマントがはためいているのが見えた。


落下したのだろうか?

流石のロック鳥でも高速で空を飛びながら足元を確認するのは難しい。

だが、落下する時ニンゲンは思いきり叫ぶのをロック鳥は経験から知っていた。

とすれば死にかけているのかもしれない。

とりあえず巣に戻ってから考えれば良い。

ロック鳥は眼前に見え始めた崖の上の巣に向かって飛び続けた。



「うごぉぉ・・・風圧が凄過ぎて・・・!立つのは・・・無理だな」


気配を出来るだけ消して、ロック鳥の視界に入らないように神経を使いながらもなんとか足をよじ登り・・・ようやく背中に到着した。


作戦目標はロック鳥の目か頭、もしくは翼の付け根になる。

巨大な翼を支える骨や筋肉はその巨体に比して強靭だろうが・・・



「鳥類は骨がスカスカって話だが、ファンタジーでも該当するかどうかは分からねェ。とすれば狙うのは」


関節。


竜のように堅固な鱗に守られているわけでもない。

翼を包む羽は一枚一枚が大きく、風を纏っているようで遠隔攻撃にも耐性がありそうだ。

だが・・・背中からの攻撃には。


「耐えられねぇだろッ!」


片手で羽毛を掴みながら両手斧を付け根に叩きつける。


グシャァ!!


生物最強に君臨する竜爪を鍛えた大斧は片手での一撃にもその威力を存分に発揮した。

風を孕む羽を物ともせずに翼の付け根に突き立ったのだ。

羽も皮も肉も断つ一撃に流石のロック鳥も態勢を崩した。


「グルゥゥ!?」


「ぐぉぉ・・・効いてるみてぇだな!もう・・・いっちょッ!!」


ぐらつく背中に冷や汗を流しつつ、追撃、追撃、さらに追撃。


ズガン!ズガン!と人外レベルの膂力と竜爪斧の攻撃はとんでもない威力を発揮した。


「グルァァァァ・・・!!」


この高度から落下すればロック鳥といえど・・・ロック鳥だからこそ致命傷を免れない。

その巨体が落下速度と合わさって骨が折れる程度じゃ済まされないはず・・・!


当初の脱出作戦も忘れて無我夢中で斧を振るう内に、ついに翼はもげかけて、とても羽ばたく事が出来ないレベルまで破壊されていた。


そしてそれは・・・・



「あ・・・やりすぎた・・・」


俺ごとロック鳥が落下する事を意味した。

スッ、と前へと進むのを止めたかと思うと・・・数瞬の後、重力に従って当然の如く落下を開始した。


「やぁぁぁっちまぁぁぁったぁぁぁぁぁぁ!」


ロック鳥の肉が絡んで武器が抜けず、天下の名斧を手放すのも惜しいと愚図愚図している内に・・・森の木々はもうそこまで迫っていた。


「アアアアアアアアア!!!」

読んでいただきありがとうございます。

超展開わろたwとか思っていただけましたでしょうか。

ええ・・・作者にもわかりませんがなぜか出てきたんです(え

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