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 ギルドに戻ると早速アーシェさんから二階に行くように言われた。

心なしか今日のギルド内には人が多く感じるな。


二階に上がり、案内された部屋にはいる。

中にはジョージのおっさんにミリーの姐御、ムッキムキのおじいちゃんや歴戦の強者って感じの壮年の男などギルド関係者をはじめ、何組かのパーティらしき男女もいた。

チーム毎に別れているらしく、何人かで固まって座っている。


オレ達が入ると軽く自己紹介されてから早速、報告した。

シャルさんからは報告よろ~と言われたのでシャルさんが見た方は聞いてまとめておいた。

報告書にしたかったが、帰ってきた途端に会議だったので書く暇が無かったんだ・・・。


「・・・というわけでオーク共はかなり本格的な侵攻準備をしているようです。何か質問はありますか?」


昔やった会議のつもりで質問はあるか?と聞いたが、普通こういうのって司会がやるんだっけ・・・?まあいいや、もう言っちゃったし。

なんだかムキムキなおじいちゃんが感心したように見てきたが、恥ずかしいのでスルーする。


「一ついいか?キングは確認していないと言っていたが、本当にキングが出たのか?」


顔の真ん中に切り傷を持った強面の男が聞いてくる。

それに頷いて、印象やナイトが歩哨に立っていたことも再度説明した。


「なるほど・・・立っていたのは間違いなくナイトなんだろうな?悪いが、君のランクでナイトやジェネラルが分かるとは思えないんだが」


カリンがムッとした顔で男を睨むが、背中を叩いて抑える。

言い方は悪いかもしれないが、率直で分かりやすいと思うし、確実に把握しておくのはリーダーとして当たり前だと思うしね。


「懸念はもっともですね。こちらのカリンはトルペード神の加護を持っています。あの変態・・・じゃなかった、神様から対象を識別する魔眼も授かっていますので、情報は間違いないと思います」


「加護持ちで魔眼だと!?その子供がか?・・・信じられんな」


「まぁまてカンピラン。ユウが言っていることは本当だぜ?オレが保証する。それでいいか?」


ジョージのおっさんが口を出してくれた。

ナイスフォローと感謝を込めておっさんにウィンクしておく。

物凄く嫌そうな顔をされたが気にしない。


「それ以外ではありますか?」


辺りを見回すと女性パーティのリーダーが手を上げた。

Bランクパーティの天使の翼というパーティらしい。

珍しい女性のみで構成されたパーティだが、弱そうには見えない。

皆さんアマゾネスのように勇猛そうな体付きでいらっしゃいます。


「いいかしら。あなた達で偵察した時にマジシャンが居たって言ってたわよね?弓を持った個体は居なかったってことでいいかしら」


「ええ。2箇所から確認しましたが見当たりませんでした。雑魚と上位種は全員近接装備で、上位になるほど重量武器を持つように感じました」


「わかったわ」


「他にはねぇな?・・・それじゃ作戦を立てるぞ。地図を見てくれ」


ジョージのおっさんが部屋の壁に貼り付けてあった地図を指した。

一応オレも地図を出して三人で見える位置に置いた。


「アイシーンがここで・・・オーク共の位置がここだ。森に一番近い西門を守るのは警備隊と騎士隊が連携する。俺達が求められているのはオーク共を削ることだ」


「削るだけ?・・・オーク共をここまで来させるつもりか!?」


「カンピランの懸念も最もだが、オーク共1500に周辺に散ってた部隊も合わせると2000近くいるんだぜ?単純に戦力が足りねぇ。森を焼けば相当殺せるだろうが、伯爵から禁止されてる。理由は分かるな?」


「・・・なるほど。深奥にいるSランククラスを刺激したくないわけね?」


「そうだヴルヴァ。オーク共を殺す代わりに奴らを怒らせたらこの街は地図から消えちまうよ。だから森を焼くってのはナシだ。同じ理由で範囲火魔法も禁止だな。範囲撃つならそれ以外だ。出来る限り森に被害を与えない攻撃が望ましい」


「その条件では厳しいな・・・」


カンピランが深刻な顔で呟いた。ちなみにヴルヴァと呼ばれた女性は天使の翼のリーダーだ。

カリンが言うには魔法の中で最も攻撃的で威力が高いのが火魔法らしい。

風や土系統は元々補助系が多い為、単体や複数範囲程度ならともかく大規模になるとほとんど無いんだと。


ともあれ消極的な作戦では面白くない。

良いか悪いかは別として、提案だけはしてみるかね。


「おっさん、守りを考えなくていいのなら精鋭部隊でこっちから奇襲かけるのはダメか?」


「キングに奇襲かけて倒すってことか?・・・シャル」


「うん~、夜ならオークも寝るだろうからいけるかも~。でもキングを確認出来てないから名持ちかどうか分からないのが辛いけど~」


「そうか・・・カンピラン?」


「俺達はそれで構わない。守るより攻める方が性に合ってるしな。商隊の護衛ならともかく街を守れと言われても戸惑うぜ」


「それもそうか。ヴルヴァ?」


「私達もそれでいいわ。ジェネラルと・・・来たらマジシャンは私達が受け持つわ」


「いいだろう。キングはオレとミリー、シェイドで殺る・・・それから補助でユウ。お前等も来い」


「分かった」


「カンピラン達は歩哨ナイトの始末と周辺のオーク共を近づけないようにしてくれ」


「ちょっとまってくれ!俺達もキングと戦うぞ!そこの小僧よりよっぽど使えるはずだ」


カンピランが思わずといった感じで叫んだ。

再びの侮辱と取れる発現にカリンの目つきがもはや座ってきている・・・怖い。


「落ち着けカリン。こういうのは役割だ。俺達の武器は柔軟性、どんな相手でも器用に戦えるチームだろ?逃げ足も早い」


「ほらみろ!!ジョージさん!こんな腰抜けに任せることはない!」


カンピランは熱くなっているが、そういう性格だから補助に向かないって判断で選ばれなかったんだと思うんだけどなぁ・・・。


「カンピランさん、俺達はあくまで補助だよ?外で戦うパーティのが重要だってば。俺達じゃ抑えきれるか分からないしね」


そう言われてプライドが刺激されたのか、カンピランはそれなら任せろ!と言って黙った。

ちょろいなこの人・・・。

おっさんと姐御が呆れたようにこっちを見てきたが気が付かないフリをする。

逆にヴルヴァという女性は軽蔑したようにこちらを見てきたが、気にならない。


オレが戦いたがっていないように見えるのだろう。

こういうのは役割をきちんとこなせるかどうかの方が大事だと思うんだけどなぁ・・・。

個人の武勇を見せるところでもないし。

重要なのは街を守ることであって、出来るかどうかも分からないのに請け負う場面じゃない。



そも今回、奇襲作戦の主戦力はおっさん達教官パーティ。

おっさんと姐御、少し話した事がある位だが斥候職関係の教官シェイドさんの動きは見たことがある。

特におっさんがどう動くかはだいたい分かるから、フォロー役ならオレ達が一番いい。

おっさんもそう思ったはずだ。


カンピランのパーティは分からないが、装備からして全員ナイト系のパーティのようだし遊撃で動かすよりも戦線維持の壁役をさせた方が良いだろう。


ヴルヴァのパーティは柔軟で素早い動きで翻弄するタイプに見える。

盾持ちもいるが軽盾で受け流すように使うのだろう。硬革の鎧を着て丸い盾を使っているようだ。

流石は高ランクというべきか、彼女達は何が得意なのか分かっているのだろう。

真っ先にジェネラルの排除を志願した。

偵察で見た位置的にマジシャンが出てくれば彼女達が相手をすることになるはずだ。


次におっさんは、オレ達が入室してからずっと沈黙していた虎の獣人を見た。


「バルドル達4本の爪には陽動をやってもらいたい、派手に暴れて下がる、また暴れて下がるを繰り返す。頼めるか?」


「・・・承知した」


「風の谷には食料庫を破壊して欲しい。掘り出して二度と使えないように完全に破壊しろ。出来るな?」


「任せてくれ!」


黒鉄製の重い鎧を着た青年が胸を叩いて請け負った。


「じじい、こんな感じでいいか?」


そこまで決めておっさんがニコニコしながら見ていた筋肉じいちゃんに話しかけた。

老齢を感じさせない物凄い覇気を感じる爺様だ・・・。

この人を怒らせるのは止そう。


「よかろう。ちまちま削るのは面倒じゃしな!一撃で奴らの全てを破壊してやれ!」


なんて豪快な爺さんだ。

まるで魔王みたいなセリフだが、マスターになる人間の頭が悪いわけがないから、冷静に考えていけると踏んでるのだろう。

信頼されているようでうれしくなるね。


全員が頷いたところで、解散になった。

作戦開始は今日の夜中、日付が変わる頃に出発することになっている。

他のパーティが話し合いながら出ていくのを眺めてから出ていくことにする。

カリンはカンピラン達の近くに居たくないだろうしな。

全員が出たところで、オレ達も体を休めたいし退室しようと腰を上げたところで


「ユウと言ったか?少し儂と話をせぬか」


爺様に止められて振り返る。

シェイドさんはいつの間にか居なくなっていたが、おっさん達教官組は席を立つ気配がない。

興味津々でこちらを見ていやがる・・・。


「ええ、なんでしょう?」


「儂に敬語なんぞいらん。いつもどおりに話せ」


「分かった。それで何か用かい?」


「おう、それで良い。先程、お主が侮辱されたのに反論しなかったのはなぜだ?それどころか怒る素振りも無かったが」


「さっきって・・・ああ、カンピランの事かな?んー、大事なのは街を守ることであって、俺達が目立つことじゃないだろう?それに複数パーティで取り組むのは初めてだけど、こういうのってそれぞれが何が出来るか、求められているのはどういう動きなのかを把握してその通りに動くのが一番大事なんじゃないかな~と思ったんだよ」


「ふむ・・・だが怒りは湧くじゃろ?」


「ん~、彼らのが強いとかオレ達のが強いとかはどうでもいいしなぁ。カンピランは求められている内容をあまり理解していないみたいだったし、むしろ心配になったよ。こんなとこでアピールしてどうすんだろうなぁって」


爺様が驚いたような表情になった。

そんなに不思議なこと言ったかぁ?


「お主・・・変わっとるの。お主位の若者なら普通、腰抜けとか軽蔑される事に耐えられない年頃じゃろうに」


「精神年齢が高いんだよ」


自分にとっては事実を言ったつもりが、爺様にとっては驚く事だったのか目を見開いた後は突然笑い出した。


「フハハハハハ!!カンピランの奴よりも精神年齢が上か!ブハッ!こいつはいい!」


呆気にとられていると、シャルさんがニヤリと笑った。


「ユウの方がひどいこと言ってる気がするけど~この場合事実だよねぇ~」


「ん。アレは大きな子供」


カリンの発言におっさんと姐御が噴き出した。


「クハッ!嬢ちゃんに言われちゃおしまいだぜ」


「フフッ!ほんとね」


「むぅ。事実」


真面目に言うカリンの言葉に全員の笑いがしばらく止まらなくなった。






 ユウ達が退出した後、ジョージとミリーの二人を見てギルドマスター、レナード・ジャルフはニヤリと笑った。


「面白い小僧だったのぅ。久しぶりに笑った笑った」


「あいつぁクソ度胸だけはあるからな。それにどんな武器でも使いこなす器用さがある。なにより冷静で視野が広いからリーダー向きだろうな」


「ジョー、それ本人に言ってあげなさいよ。喜ぶわよ?」


「へっ!そんなこといったら調子に乗るに決まってる」


「もぅ・・・素直じゃないんだから」


「ククク、二人共相変わらず仲が良いのぅ」


「やかましい!それよりじじい。伯爵の方は大丈夫なのか?」


「なに、何とか説得するわい。まぁ・・・奴の事だから自分が行きたがると思うがな」


「戦いが好き過ぎてそれ以外に興味が無いって位に戦闘狂だからな・・・なにせ自分の子供の名前すら分からないって位だ」


「ほんと・・・あの伯爵からカリンちゃんみたいな子が産まれたのが不思議でしょうがないわよ」


「じじい。なんとか抑えてくれよ?じゃねぇとカリンの嬢ちゃんがあぶねぇ。下手すりゃ集中出来ずに死なせかねん」


「分かっておる。なに、儂にとっても孫みたいなもんだ。何とかするよ・・・力づくでもな」


ククク・・・と怪しく笑うレナードに引く二人。

レナード・ジャルフ。彼は元近衛騎士団長にして王族からの信頼も厚い男。

ついたアダ名は鉄壁のジャルフ。

彼がこうと決めたら必ず実現することを皆知っていた。

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