15
カリンと正式にパーティを組んでから一週間が経った。
色々あったが、まずはパーティ登録。
パーティを組む際に名前が必要だったので、カリンに相談したところ丸投げされ、悩んでつけたのが風花、チーム風花だ。
風花ってのは晴れの日に小雪がちらつく美しい景色って聞いたことがあって、この世界の綺麗な景色を見てみたい俺達にぴったりに思えたのだ。
正直、自分で言っておいてかなり恥ずかしいのでオレのおっさんな精神がガリっと削れてしまったが、カリンとその隣りで聞いていた姐御が気に入ってしまったので決定したのだ。
ちなみにおっさんは巨人の腕がいいんじゃねぇか?とか言ってたな。
姐御に却下されてたけど。
オレはおっさんと、カリンは姐御と訓練しつつ依頼を受けてこなしていき、オレはDランクまであと1件、カリンがあと2件ってとこまできている。
パーティメンバーの平均がパーティランクとして決まってしまう為、パーティで依頼を受けたい場合は注意が必要だ。
だからパーティを組む冒険者は基本同じか1つ前後するランクで固めるらしい。
とはいえ、高ランクになって有名になりたいわけでも金が欲しいわけでもないので特に焦ってはいない。
オレの目標は世界を旅すること、そしていつかミーネを越えること。
カリンは世界の色々な場所を見て、色んな食べ物が食べたいらしい。
最近作るのも興味が出てきたらしく、カリンが稼いだ金は食費と調理器具に消えていく。
旅に出れば自分で作る事も多いだろうし、こっちもありがたいから援助は惜しまないようにしている。
オレの方では残ったお金はパーティ共用にして、まずは防具を仕立てるのに使っている。
カリンに紹介してもらった職人がいい人で話が合ったので持ってる魔物素材は全部任せることにしたのだ。
オレは硬革鎧と格闘でも使えるように作ったガントレットとクウィス。
カリンは手甲と丈夫なブーツ、矢を払ったり野営でも便利ということでフード付マントを作った。
少しずつ装備を整えながら訓練してきたので、短期間で相当強くなっていると思う。
なお、訓練でレベルは上がらないが、ジョブレベルやスキルは上がるらしく見習いシーフが上がった後は早速格闘職に転職しておっさんに戦いを挑んだらモリモリ上がった。
それだけおっさんが格上ってことなんだろう。
上級職なのは勿論、レベルがおかしいに違いない。
それから各スキルは10でMAXって表示されるからそれ以上上がらないのかと思ったらその先があった。カリンが転職した際に魔法が進化したのだ。
名称自体が変化してレベルはまた1に戻るらしい。
ただしその武器に応じた職業、それも上位職でないとスキルも上位に進化しない。
オレは基礎職しかやっていないから全く進化しないからね。
見習いシーフが上がりきった後は予定通り格闘職になって気力操作を覚えた。
上位にならないと覚えられない人もいるらしいが、覚えられてホッとしている。
もしかしたらユニークの器用貧乏が関係してるのかもしれないが、検証のしようがないので放置している。
ちなみに格闘職|(ストライカー見習い)だったが、おっさん相手にしてたら驚く程のスピードでMAXへと至った。
なんか、はぐれメ○ルや這いよるこん○ん相手にレベル上げした記憶がチラついた。
本当におっさんの経験値がウマすぎる。
腹立たしい事におっさんも微妙に強くなっているらしく、最初にやりあった頃から一度も勝てていない。
まだ育つのかよおっさん・・・流石に格下相手だからか上がり方は非常に遅いみたいだが。
戦闘回数が異常だからな・・・訓練という名の実戦だよあれ。
正直言ってジョブレベルやスキルが上がっていくのが楽し過ぎて依頼を忘れそうになってしまう。
装備やら道具やら宿代やらを稼がないといけないから真面目にやってるけど・・・ね。
そんなわけでランクアップも急いでないし、慌てて上位職になる必要も無さそうだということで、基本職をやりまくっている状態だ。
見習いシーフ➝見習いストライカー➝見習い剣士ときて昨日見習い剣士MAXになったんだぜ。
一つずつ極めた方が強くね?って思うかもしれないが、派生職があるかもっていう期待が大きいのと、職業毎に覚えたスキルは違う職に変わっても消えないし、そして一つの武器に絞るつもりがない。
勿論、その分各武器術の進化が遅くなるが、ランクが低い内に出来るだけスキルを得ておきたいのだ。
高ランクになってからスキルを育てる余裕があるかどうか分からないからな。
通常メイン武器として1つ、サブ武器もしくは補助武器として1つ、多くても2つってのが冒険者の標準的なスタイルになる。
それも当然の話で、装備に金がかかる、沢山の武器を扱う技術を磨くのに時間がかかる、なにより全ての冒険者がアイテムポーチを持ってるわけでもなく持っていても容量の問題もあるわけだ。
普通に考えたら全部の武器を持とうなんて阿呆の所業。
おっさんも唖然としてたもんな。
だがまぁそれは他の人の話。
オレには器用貧乏と早熟、成長率アップの加護がある上に最初から色んな武器をもらい、今のランクで相手にしている魔物は幸い武器を消耗させる程ではなく、買い替えの必要もない。
その上ポーチの容量もまだまだ底が分からない程入る。
だからこそ選べるんだろうけどな。
オレだけのスタイルってやつだ。
そうそう、器用貧乏といえばやけにレベルアップが早いと思っていたら、いつの間にか進化が可能になってた。
進化したら 器用超貧乏 とかになったらどうしようとか悩んだ末に、考えるのも面倒になっていい具合に進化しろ!と念じたら進化した。
説明は省くがエルさんの加護が関係してるのは確かなようだ。
つまりはオレに合ったユニークスキルになったってことだ。
カリンも順調に育っている。
姐御からある程度の魔法を教えてもらった後は、実際に防御や回避する練習やカウンター魔法をしかける練習、模擬戦もやっていた。
姐御もおかし・・・素敵な強さなので成長率に補正の無いカリンもかなりジョブレベルとスキルが上がったらしい。
おかげで早々に転職して上位職にもなった。
見習いが外れただけだから上級なのかなんとも言えないのだけど。
魔法使い上位職の為、魔力量がかなり上がってるしスキルも増えたり進化した。
威力も上がっていて依頼で森に入った時、ゴブリンに以前倒した時と同じ魔法を使わせてみたら上半身が消し飛んだ。
二人で唖然としたのは記憶に新しい。
そんなわけで概ね平和だった。
ところが現実は山あり谷ありなわけで。
古い話にあるように禍福は糾える縄の如し。
順調過ぎてすっかり油断した頃に、事故っていうのは起こるもんだ。
オレはそれを完全に忘れていた。地球であんなに痛感してたのにな。
訓練も一段落して本腰入れてランクアップを目指そうかと話し合っていた。
そのため次の転職について悩みながら、カリンと二人神殿に向かっていた。
転職ついでにシュヴェアートの奴に会うつもりだ。
しつこいようだがあくまでも転職がメインだ。
カリンに成長率アップの加護を付けてあげたい気持ちはあるが、カリンまでステータスで遊ばれそうで警戒してるのだ。
奴は油断できん。拳に力を入れておこう。
さて、本当に今更だが神殿は重要施設であり街の人達にとっては心の拠り所でもある。
そんなわけで砦に近い。
街の人達は勿論、魔物と頻繁に戦う騎士なんかが祈りを捧げていくし、貴族だってくる。
勿論、冒険者もランクに限らず沢山くる。
この街は黒い森があるだけに高ランクの冒険者が多い。
神の前では皆平等ってことで、神殿の中では階級の上下も関係ないし争いは禁じられているので静かなものだが、一歩外に出れば上下関係もあれば、喧嘩上等な血の気の多い奴らもたくさんいるわけだ。
貴族だって例外じゃない。外に出た途端に皮肉合戦している貴族の奥様方を見たこともある。
その時は関係がない上に、口喧嘩してるだけなので放っておいたんだが・・・。
問題は神殿に入る直前に起こった。
「おい、そこの二人組止まれ」
「兄上、どうされました?」
「そこいるのはカリンではないか?」
振り返った先にいたのは二人の若い貴族。
背が高く、痩せ気味で頭脳労働っぽい身体つきの男と、磨かれた鎧に高価そうな剣。真っ赤なマントを羽織ったいかにも騎士っぽい男。
これがカリンのクソ兄貴共か・・・。
いつか会うかもとは思っていたが、実際にあってみると驚いた。
カリンは心なしか青ざめていたが、気丈に唇を引き結んで黙っている。
カリンの手がオレの袖を掴んで小さく震えているのに気がつくと、怒りが湧いてきた。決めた、こいつらには絶対に譲らない。
「・・・・・」
「おいおい、久しぶりにあった兄に対して挨拶も出来ないのか?これだから下賎な女から生まれた者は・・・」
「おい!兄上に返事位したらどうだ!礼儀も知らないとは我が家の面汚しめ!」
カリンが渋々何か言おうとした、が止めた。こいつらにカリンが何かを譲る必要なんてない。
「カリン、相手にするなよ。そんな価値は無い」
「そこの男、聞こえているぞ!下賎な平民の分際で!貴族に対する口の利き方も知らないのか!」
「よせ、アンドレア。一々愚鈍な平民を相手にするな」
「しかし兄上!」
「よせといった。それよりも、だ。久しいなカリン。3、4ヶ月ぶりになるか?何処かで野垂れ死んでいたかと思ったぞ。ん?」
「・・・・」
優しげな声だが、初対面のオレでも分かる。
完全に見下した目、嘲るように弧を描く唇、遊んでやがるな。
それにニヤニヤと笑う隣の騎士野郎も嬲る気だ。
しかし・・・領主をやるような貴族の男児が戦えないはずはないだろうから兄の方が魔法使い、弟の方が剣士だろう。
ガントレットの傷の具合から拳闘もやるようだな。
そこまで見て取ると、ポーチに手を入れた。街中だからナイフ位しか身につけていないが、これでいつでも武器を抜ける。
異世界ファンタジーでお馴染みの鑑定眼や識別が出来ないからレベルは分からない。
この辺境で騎士やってる位だから戦闘経験も豊富だろう。
たぶんオレよりも。
まぁ・・・負ける気はしないけど。
しつこいようなら予定通りカリンをギルドに逃がすのが勝利条件・・・かな。
殺すわけにもいかないし。
オレが考えている間、ずっとニヤニヤしていたアンドレアはオレが観察するように見ているのに気がつくと不快そうに眉を寄せた。
外見はなかなかの美男子といえるが、表情が三下っぽいな。
なお、オレはカリンの味方なので偏見が入ってるのは認める。
「オイ平民!貴様さっきから何を見ている!俺達はこの娘に用がある!さっさと消えろ!」
「はぁ?申し訳ないが俺達はパーティ組んでるんです。貴方達みたいに暇じゃないので邪魔しないでくれませんかね?」
「なんだと!貴様ぁ・・・」
「アンドレア、少し黙れ」
「しかし兄上!」
「二度は言わん」
「グッ・・・すいません」
おい、弟君。それでなんでオレを睨むのかね。
怒られたのは君のせいだと思うよ。ざまぁ!
「そこの平民。名を聞こう」
「人に問う前に貴方が名乗るべきでは?」
「貴様!言わせておけば調子に乗りおって!兄上!シュバイツ家を馬鹿に・・!」
「アンドレア。私は野良犬に吠えられたところで何とも思わんよ。それしか出来ないのだから。そうだろう?」
アンドレアはそれで満足したのか黙った。
せっかくだからもっと挑発したいが、こいつらを怒らせても意味がないので我慢している。え・・?もう挑発してる?・・・おっかしいなぁ!
「どうせ覚えられないだろうが、私の名はカルヴァス・シュバイツ」
「ユウ・ミサキ。風花というパーティをしている。あ、覚えなくてもいいよ」
「ククク・・・口の減らない小僧だ」
「おやおや、小僧はお互い様でしょう?」
「これは警告だが・・・いい加減にその口を閉じた方がいいな。死にたくないのであればな」
「口で勝てないと権力かぁ~。流石は貴族様!自分の喧嘩も部下を使うわけですね?わかりますわかります。プッ、ほんっと大した事ないなぁ」
見下す存在に馬鹿にされて余裕ぶっていたカルヴァスも流石に我慢の限界なのか脅してきたが、まったく怖くない。
アンドレアは完全に手が剣の柄にかかっているが、抜くなら抜け。
会って話せばよくわかる。こいつらは大したことがない。
貴族の誇りと貴族の傲慢を勘違いしたボンボンのようだ。
まったく苦労してないんだな。
カリンがどれだけ強くなってるかも分からないだろう。
警戒して損した気分だ。
「・・・ふん。依頼で外に出る時は気をつけることだ。いくぞアンドレア!」
「わかりました!・・・平民!ここまで街の支配者たるシュバイツ家を愚弄して無事でいられると思うな!」
「きゃーこわーい。息が臭いからどっかいってぇ~」
耳をほじりながら言ってあげたら、真っ赤になって剣を抜こうとしたが兄に呼ばれて去っていった。
やれやれ、噂以上のクソ貴族っぷりだな。
「ふん、大したことねぇな!さ!いこうぜカリン」
「・・・ユウ」
「お?」
「ごめん・・・なさ・・」
「カリンは全く悪くないな。勘違いしちゃだめだぞ?母親の血が平民だと悪いか?手出して産ませたのは貴族だろうが。女だから?バカいうな。世界の半分は女だぜ?ま、カリンは被害者ってこった。・・・だから謝んな。そういう時は?」
「・・・ん。ありが、とう」
「どういたしまして。よし!気分変えて神殿いこうぜ」
「ん!」
貴族二人が砦へと去っていったのをチラリと見た。
まぁ・・・あれで終わるわけが無いよなぁ。
出来るだけオレに向くように挑発したつもりだがどうなるやら・・・。
あとでおっさんに相談すっかねぇ。報連相は大事だからね!
あわよくば丸投げしよう。そうしよう。
---ステータス---
個体名:ユウ・ミサキ
種族:ヒューマン
年齢:18才3ヶ月
職業:フェンサー見習い MAX
レベル:19
生命力:1550/1550
魔力量:320/320
力 :B+
体力:B+
器用:A+
敏捷:B+
魔力:D
知力:D+
精神:A
運 :C
ースキルー
”アクティブスキル”
軽盾術5、鎚術5、剣術MAX、短剣術MAX、刀術MAX、斧術8、棒術MAX、槍術8、杖術6、拳闘術MAX、蹴撃術MAX、投げ技9、関節技8、投擲術6、弓術5、手当8、罠設置2、毒取扱1、罠解除1、気配察知5、威圧3new、
生活魔法MAX、操気術8new
”パッシブスキル”
防御MAX、足捌きMAX、ステップMAX、持久走7、軽業6、地図2、方向感覚3、サバイバル5、部隊指揮3、指導3、登攀2、魔力操作3、気力操作MAX、隠密行動3、連携3new
ストレス耐性6、毒耐性5、精神耐性7、耐寒2、耐暑2
”生産系スキル”
釣り3、料理3、鍛冶2、木工2、皮革2、機械操作1、罠作成2
”ユニークスキル”
早熟MAX、変幻自在new、アルマトゥーラ言語MAX、インフォメーション※体験版
”祝福”
ズィッヒェルの加護(特)、シュベアートの加護(愛)
”称号”
苦労人、胃痛の友(笑)、器用貧乏、神認定お人好し、異世界より来る者、2柱の中級神の強き加護を得し者、神の弟子、耐える者、森の狩人、戦闘狂い、職業マニアnew
---ステータス---
個体名:カリン・シュバイツ
種族:ハーフエルフ
年齢:20才1ヶ月
職業:スペルキャスター 2
レベル:12
生命力:350/350
魔力量:780/780
力 :F
体力:D
器用:D
敏捷:G+
魔力:C+
知力:C
精神:D
運 :F
ースキルー
”アクティブスキル”
杖術6、結界術5new
嵐魔法3new、爆魔法1new、氷魔法2new、樹精魔法1new、岩魔法1new、空間魔法4new、生活魔法MAX
”パッシブスキル”
ステップ4、礼儀作法3、足捌き3、魔素操作2new、魔力貯蓄3MAX、連携3new
ストレス耐性2、精神耐性5
”生産スキル”
舞踏2、歌唱1、絵画3
”ユニークスキル”
????
”祝福”
無し
”称号”
薄幸、耐える者、芸術家、幼き魔女




