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 さぁ張り切って依頼にいこうかね!

気合を入れてギルドに戻ると早速依頼が貼り付けてある掲示板を眺めていく。


ふむふむ・・・薬草採取依頼1本銅貨1枚、畑を荒らすブルボア討伐依頼大銅貨3枚あたりが現在のランクで受けられるようだ。

宿代が一泊大銅貨2枚+食事代だから一日1回の依頼じゃ厳しいな。


一応Gランクの依頼も確認しておく。

ふむ・・・屋根の修理手伝い、引っ越し手伝い、子守に話し相手?子守って冒険者にまかせていいのか・・・?

話し相手はおじいさんの相手をするのだそうだ。報酬は銅貨10枚。Gランクじゃ結構高いな。

ふむ、子供の頃は爺様の話を聞くのが好きだったからこれいいかもな。


この街を把握するならGランクの依頼はいいかもしれないな。知り合いも出来るだろうし。

よし、斥候の確認もしたいし今日のところは薬草採取を受けておこう。

早めに終わるようなら話し相手も受けてみようかな。


掲示板から依頼を剥がしてもっていく。

朝に居た受付の女性は居なかったが、代わりに立っていたベテランっぽいおばさんに依頼を受け付けてもらい早速出発する。


薬草の形とかわかるのかって?

これでも1月森に暮らしてたんだぜ?生傷絶えなかったしな・・・。

ボコられては手当、初見の魔物に反撃食らっては手当の毎日さ。

おかげで医療職まで開放されちゃう程だよ?

全く自慢にならないけどな!


さて、採取した薬草を入れる袋が欲しいが笑えることに無一文だ。

ミーネからはあげると言われたが断った。与えられすぎると堕落しそうだしな。

せめてもの情けで宿代だけは1週間分払ってくれている。


腕を組んで考える。

寝る場所と食事は保証されているわけだが、苦労するからこそ工夫が生まれるんだし!

束ねるのはズタボロにされた服を切って縛ればいいかな。

エルさんにもらったものだから一応取ってあるんだよ。


この街に来る前に群生している場所は見ているから迷うことはない。

走って片道30分ってとこかな?さくっと行ってこよう。


腰には採取用のナイフと鉈、腰には手斧を装備した。

森に少し入るから武器として斧を持っていくことにした。

森のなかでは手斧が使いやすくてスキルが一番高くなってしまった程だ。

鉈も斧扱いのようで伐採に使ってたっていうのも大きい。

む、そう考えるとスキルの低い武器にすべきか?


そうだな。そうしましょう。

手斧をポーチにしまって、代わりに短槍を取り出した。

ゲームみたいに背中につけてもいいが、それじゃ取り出しにくい。

手に持っていくことにした。


よし、慣れないせいか準備に手間取ったが、今度こそ出発だ!



ギルドカードを衛兵に見せて門から出ると記憶にある薬草の群生地に向かって走っていく。

10分程で森へと到達。他の冒険者が狩ったのか、今のところ魔物に会うことはない。


森へと入ると、なんだか頭が冴えてくる。

ミーネが言うには称号で狩人を持っていると森にいる時に感覚補正が少しかかるんだとか。


ちなみに異世界人は幸運値、苦労人は体力と精神に補正が少しかかるらしい。

スキルや能力より称号の方が人に見せるのに躊躇するようなステータスカードだ・・・。


通ってきた道をそのまま通って群生地へと歩いていく。

切り開いてきた道のが早いしな。

帰りも同じ道だと飽きそうなので別の道でもいいかもな。

そんなことを考えつつ進んでいき、無事に群生地に辿り着いた。


森のなかにあって少し開けた場所に群生地はあった。

通りがかりに気になったので覚えていたんだ。

早速薬草を採取しましょう。



 依頼ってことは仕事ってことだ。

仕事は誰の為にあるか。

勿論、お金を得る為に働くわけだが、需要あっての供給。

お客あっての仕事ってのがオレの考え方だ。

だから出来るだけ満足してもらう仕事をしようと思っている。

それは異世界に来ようが変わらない。


プロじゃないからなんて言い訳にならないよう丁寧に根から採取する。

この薬草、名前はずばりクスリ草。

まんまじゃねぇか!って?

うん、オレも最初ツッコミました。


このクスリ草、根っこは熱さましに効くし弱いが鎮痛効果もある。

依頼されているのは傷薬になる葉の部分だが、依頼表の備考には根もあれば買い取るとあったので無駄にならないだろう。

仕事内容が客に喜ばれてギルドの信頼につながったって評価されると追加報酬みたいなのがあるみたいだし。


受付のおじさん曰くクスリ草3本で傷薬が1つ出来るらしい。

だから持ってくるのは3×?本で頼みたいとのこと。


絶滅させないように間引くように採取していく。

ガーデニングや畑の経験は無いけどそのほうが良さそうに感じたのだ。

品質を左右するのは魔力の濃度らしいが、地力も大切だろうし。


丁寧に作業したとはいえ、30分程でそれなりの数が揃った。

葉に傷が付かないように3本1セットで丁寧にボロ布に包んでおく。

一応言っておくけどボロ布は洗ってあるからな。


数えてみると30セットあった。ふむふむ。1本銅貨1枚だから90本で銅貨90枚か。

根の部分はどうか分からないが、同じだとすると大銅貨1枚と80枚の利益になるはずだ。

うむ、宿代にもならん。早めにランクを上げたいところだ。


ちなみに銅貨100枚で大銅貨1枚、大銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚でミスリル貨1枚だそうだ。


ミスリルを貨幣に使うのはおかしい気もしたが、この世界のミスリルは精霊銀でも魔力を通す銀でもなんでもなく、単なる緑色の金属だそうだ・・・残念だ。

ミスリル製の魔剣や魔法防具も存在するが特殊な製法でインゴット化しなければならず、かなり高価な為あまり使う人は居ないとか。

その割に産出量はかなりあるので貨幣に使われているそうだ。




さて採取完了。薬草をポーチにしまい忘れ物がないか見回しながら煙草に火をつけて一服つける。

忘れ物なし、敵の気配なしっと。

テンプレな事件でも起きたら面白いんだけど。貴族が襲われているとかな。

吸い殻を塵にして、灰を散らすと不穏な事を考えつつ適当に選んだ場所を枝を払いつつ進んでいく。


暇だから歌でも歌うかねぇ。この辺りの魔物なら瞬殺だろうし。斥候にジョブチェンジしてから感覚が鋭敏になってただでさえ気配を察知しやすくなっているようだし。

気配察知を鍛えるべくずっと意識してたが今のところ小動物しか察知していない。


「よさ~くは~てきぃ~を~きる~ぅ」


頭に浮かんだ歌を適当な歌詞で歌いながら進んでいくと、斜め前方に気配を感じた。


「へいへいほぉ!・・・ん?」


5m程の距離に近寄って見てみるとゴブリンと思われる魔物の遺体が放置されていた。

見た感じ魔石を抜いた後がないから冒険者の仕業ではなさそうだが。

もう少し近寄ってもいいが・・・磨いたカンが警鐘を鳴らしている。

理性も怪しいと訴えている。明らかにおかしい。

獣や魔物に襲われたにしては遺体が綺麗すぎるし、冒険者がやったにしては買取素材らしい角や魔石を取った形跡がない。


「ふーん・・・」


うん、思いっきり気配を感じていたから近寄らなかったんだが、隠れているつもりなのかあれ。

さっきからチラチラと木の陰からこちらを伺う女の子?らしき人物が見えていた。


「あー・・・そこのレディ。オレは冒険者なんだけど、このまま去った方がいいかな?」


触らぬ神になんとやら。ゴブリンは討伐対象なので、殺しても喜ばれるだけだし怪しい実験しようが別に咎めるようなこともない。

これが子供を殺した実の親とかだったら許さんがな。


声をかけてみると女の子はビクッとした後にそろそろと顔を出した。

バッチリ目が合う。


「あ・・・」


シュッとまた木に隠れてしまった。

よくわからないがシャイな子らしい。ところでお嬢さん隠れきれてませんよ?

面倒くさそうなのでそのまま去ろうとする。


「あ・・・・まって」


「ん?何か用か?」


「あの・・・その・・・」


なにやらモジモジしている女の子。

ゴブリンやったの見られて照れてる?・・・んな子いるか!!こわいわ!!


「私も・・・冒険者」


「・・・そうなのか?見たとこゴブリンを魔法で一撃か。なかなかやるな。オレはユウ。君は?」


「・・・カリン。20才」


どう見ても冒険者に見えない格好だが・・・ゴシック系っていうのか?真っ黒なドレスみたいなのを着ている。赤いフード付きのポンチョまで装備して森舐めてんのか!と怒りたくなる。

まぁ・・・魔法装備で見た目以上に歩き易いとか?ファンタジーならありえるな。

なんで魔法と分かったかというと杖を持っているのは木の陰から丸見えだったからだ。


そして年齢は聞いてない。んだが答えてくれた。まさかの年上なのか・・・。

明らかに20才には見えないがそういう種族とかもいるのかもしれない。ドワーフとか少年でもおっさんに見えるらしいしな。


児ポ法対策じゃないよ?YES!ロリータ!NO!タッチ!の精神を忘れるな。

誰に言ってるんだオレは。


「おう。そいじゃな!」


何かに言い訳をしながら去ろうとしたところでまた止められた。いつのまにやら袖を掴まれている。

この子なにもかも特殊っぽいからさっさと帰りたかったんだが失敗したようだ。


「・・・あの」


「お?」


「・・・ゴブリンの買取素材が・・・」


「頭の角と魔石だったと思うぞ?剥ぎ取りは出来るか?」


頭を横にふるふる。

ですよね~。ナイフ持ってる様子ないもんね~。

・・・はぁ。仕方ねぇな。


「仕方ねぇな。ナイフはない・・・よな。はいはい、じゃこれ貸してやっから。ココの角な?ココをさくっと切り取って。ん?カリンがやらなきゃ意味ないだろうが。ナイフだけ貸してやっからちゃっちゃとやる!はい次左っ側な。そうそう、上手いじゃねぇか。はい、そんじゃ魔石は心臓辺りにあるからな。・・・いや肋骨に刺したら難しいだろうがよ。そこは避けるの。・・・そうそう。そこの辺りにあるだろ?そうそうソレだ。はい、終了~」


「うー・・ん・・・?・・・ん」


横から口出して剥ぎ取りさせていく。

カリンがただのお嬢様なら代わりにやってやって報酬をもらうところだが、冒険者だという。

なら自分でやらないと意味がない。

せっかく魔法で倒したのに、剥ぎ取り依頼で報酬がパァになっちまうからな。

高ランクならともかくゴブリンじゃむしろ赤字だ。

よってやらせた。以上。


ポーン

〘指導スキルが上昇しました〙


ぬお!?って体験版のインフォメーションか!

突然頭の中に音が響いたからびっくりした。


・・・しかしこいつ無口だな。おじさん無口キャラとか初めて会ったよ。

魔石を嬉しそうに見るカリンを眺めて一服する。

カリンに剥ぎ取りが終わったらゴブリンを埋めるか塵にするかするように言ったら、魔法で穴を掘り出したから眺めているところだ。




しかし・・・テンプレな事件来い!とは思ったが、こういうのもテンプレなのか・・・?

これでパーティ組む!とかならテンプレなのかもしれないがな~・・・。

Fランクじゃソロのが効率良さそうだし。



まさかこれがフラグになるとはその時のオレが考えつくはずもなかった。

次回は3日の0時になります。

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