真っ白
「そこ」は、果てしなく白かった。
目の前に広がる真っ白な空間。
黒い柵に囲まれた「そこ」はまるで、まだ足跡がつけられていない雪原のようだ。
あまりに真っ白なものだから、汚してみたいという衝動が沸々と沸き起こってきた。
だが、どう汚せばいいかわからないまま、いたずらに時が過ぎていく。
結局、汚すことは出来なかった。
だから今も「そこ」は真っ白なままだ。
真っ白な「そこ」は、ただ静寂に支配されている。
カチ、カチ、カチ……
どこからか聞こえてくる、時を刻む針の音。
そろそろ、戻らなくてはいけない。
この汚れ一つ無い世界から、汚れきった現実の世界へ――
「試験終了です」
読んで下さり、ありがとうございます。