幻の艦隊 発見された「失われたメモ」に関する一考察
幻のメモが発見された、といきなり言われても意味不明なのでまずは説明から。本編の構想に関して、当初は今のチームとはまったく別のチームを考えていたがメモが行方不明になったのでほとんどボツになったという話を何度か述べてきた。例えば本編の第19部である「完全版個人成績表(野手編)」には次のような記述がある。
67 李健太郎
今年の2月中旬、最初にこの話全体を構想したときは敵も味方も選手が全然別物だったが、その名前を記録したメモが行方不明になったので全部ボツに。筆者の頭が記憶していた名前は「味方チームの4番打者」李健太郎と「敵チームの監督」高鉄龍(チチハルの監督に流用)のみ。(後略)
また、第188部の「後書き」でもそのメモに関して言及している文章がある。そこには以下のように書かれている。
(前略)それが具体的な形になったのは2月でした。春季キャンプを見るために宮崎へフェリーで行きましたが、その帰りにざっくりとしたチーム名や選手名を考えて過ごしました。しかしそこで考えた選手名はほとんど失われています。その辺は李健太郎の個別寸評に書かれた通りです。(後略)
平たく言うとノートの片隅に記録されていたメモが最近発見された事でこの記述が出鱈目な記憶に基づく大嘘であったと判明した、という話だ。
本来なら写真でも撮ってそれをアップロードするのが一番手っ取り早いのだが、そんな機材がないのでメモに書かれているものを全てPCに打ち込んでから色々論じてみようと思う。以下にメモの全文を記す。
遼東バトルシップス 高鉄龍監督
5 磯貝拓矢 20
6 井上陽一 36
D ルイス・マルケス→マルケス 29
8 白輝鵬 32
9 榎原誠義 28
7 小河原路彦 23
3 王一徳 33
2 栗田和美 27
4 山本球英 30
2 橋川由郎 29
3 劉一人 26
8 清島東兵 21
先 呉健太郎 31
先 寺山心一 33
先 小林春起 28
先 フェリックス・ルイス→フェリックス 26
先 白夏風 28
先 池田尚登 23
リ 清水晃一郎 22
リ 田辺省吾 24
リ 李成順 34
リ オースティン・ボウアー→ボウアー 30
リ 赤崎忠 28
リ 増子大輔 33
リ 浦野谷渉 24
記号に関しては、名前の前にある数字はポジションでDはDHを示す。磯貝から山本までがレギュラーで橋川、劉、清島は控えである。先は先発投手でリはリリーフ投手となる。名前の後ろにある数字は年齢である。背番号はない。名前が片仮名の選手には矢印で登録名を示している。現実の選手にこの表記を当てはめると「アレックス・ラミレス→ラミレス」「ジャンカルロ・アルバラード→ジオ」となる。
とにかく、一見しただけでそれまでの説明が大嘘であると分かるだろう。最初の嘘はチーム名に関してだ。「後書き」においてはまずチーム名を考えてから主役チームをどこにするか決めたかのような記述がなされていたが、実際はバトルシップスという名前は最初から主役チームのものとして設定されていたとわかる。船の上で考えたのは本当なので船に関する名前となったと考えるのが自然であろう。
地名がメモは遼東なのに本番では大連となったのは、船旅から帰ってチーム名を考える際、遼東半島から大連のほかに旅順あたりにもチームをと考えて大連にしたが地域のバランスを考えるとあんまり密集させるのも何なのでボツになったという経緯がある。
次の出鱈目は「筆者の頭が記憶していた名前は『味方チームの4番打者』李健太郎と『敵チームの監督』高鉄龍(チチハルの監督に流用)のみ」という点だ。まずは「敵チーム」自体が存在しない。ただ監督名をチチハルに流用したのは本当。
そして李健太郎であるが、投の中心ではなく打の中心と記憶してしまったのに加えて名字までも間違えているのは我ながら酷いと思う。「チームの中心選手で、というと4番かな。何とか健太郎で名字は大陸風。じゃあ李でいいや」とまあ、こんな感じだったんだろう。大陸風の名字に日本風の名前で融合をイメージというコンセプトだけは覚えていたのでこんな事になってしまった。
また、2人しか覚えていないと書かれているがフェリックス・ルイスの登録名がフェリックスというアイデアはフェリックス・アマラウに受け継がれているし、先発候補に池田という名字の投手がいるのも引っかかる。ただ言い訳をするとフェリックスはともかく池田に関しては本当に偶然である。元々池田という名字は個人的に評価が高かったので被ったのだ。これは本当の話。
私としても嘘をつこうとして嘘をついたわけではなく、頭の中では本当だと思って記述した事が脳の作り出した嘘だったという事なのだ。その時は真実と思っていても事実とは異なっていた。まったく、記憶なんて当てにならないものである。
さて、記憶と記録がまったく違うという話をし終えた所で改めてこのメモにある名前を見てみると色々と記憶が蘇ってきた。それについての簡単な講釈もしてみたいと思う。
まず20歳で1番サードの磯貝は、気性が激しくて積極的に打っていく若者という感じ。2番ショート井上は年齢でわかるようにベテランで、守備力と小技に特化したタイプ。3番DHマルケスはパワーとスピードを兼ね備えたが守備は粗いというので昔オリックスにいたブラウンのような選手か。4番センター白輝鵬は全てにおいて完璧なタイプだろう。現実で言うと全盛期の山本浩二か。5番ライト榎原はリトル白で割と打点を稼ぐイメージ。
6番レフト小河原は技術こそ粗いが一発のある若手。7番ファースト王一徳は、多分あえてファースト王としながら7番なので王貞治のように打ちまくるのではなく渋いタイプの選手ではないか。8番キャッチャー栗田はジャンプに掲載されていたアメフト漫画の登場人物のイメージを借用したものと思われる。9番セカンド山本は相当渋いイメージで出来たはずだ。移籍など人生経験が色々ある感じで。おそらく山本栄一郎が元になっている。控えは、橋川は打撃系の捕手で清島は俊足だが劉はよくわからない。多分パワーのある代打だろうが。
投手陣は先発の寺山と小林は技巧派で池田やフェリックスは本格派だろう。呉は総合的に優れたエース。白夏風は白輝鵬の弟という設定も思い出した。リリーフは、清水は多分大卒1年目。クローザーは浦野谷、セットアッパーは赤崎や増子だろう。田辺や李は出たとこ勝負というか、まずは名前だけ出しておいてシーズンを進めるうちにキャラ付けしていこうという腹だったのではないか。ボウアーは、わからん。駄目外人として処理するつもりだったのか、あるいはもっと活躍する予定だったのか。
この面子で150試合を消化出来たかは分からない。大事なのはここからの肉付けだから。実際の大連バトルシップスの選手も最初に考えたイメージからはずれていったところが多くあるし。まあ、色々と見てきたがこれが母体になった大連というオルタナティブな歴史もありえたという事で。そろそろ2月、キャンプも始まって野球の季節になってくる頃だ。