4月30日
4月30日
今日は記念すべき日です。
我が家に新しい住人がやってきたのです。おばあちゃんです。
彼女は私の願いをやっと受け入れて、この家で新しい人生をスタートすることに決意してくれたのです。
田舎を出ることのなかった、出ることはないだろうと信じ切っていたおばあちゃんにとって、それは勇気のいる決断だったでしょう、昨日夫と二人でおばあちゃんを迎えに行ったのですが、いよいよ出発しようと門のところまで来た時、ふいに振り向いたおばあちゃんが古びた平屋に向かって「ごめんな」と小さくつぶやいた、あの丸まった何とも言えない背中を見た時に、私の歴史の中には、おばあちゃんにかけてやる言葉は一つもなかったのです。夫も同様にそのことを感じていたことでしょう。これでホントに良いかと何度も自問しましたが、これより他にいい道はないと自分に言い聞かせてこの家に迎え入れたのです。
疲れているのか、新しい環境に戸惑っているのか、晩御飯も殆ど口にすることなく、寝室に消えたおばちゃんを黙って見送ることしか出来ない私に「これでよかったと思える日がきっと来るから」と優しく微笑む夫に私も「そうね」と小さく答えました。
おばあちゃんの家を出発しようと車に乗り込む私たち夫婦に、無言のまま深々と頭を下げたおばあちゃん。
やめてよ、頭を下げたいのはこっちなのに。でもその思いが言葉になることはなかった。
その思いはこれから長い年月をかけてかえしていかなくては。
こちらこそ、よろしくお願いします。おばあちゃん。