表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/42

チャプター6:「邂逅」

 ゴンドラの奥側に位置する区画。そこに設けられているのは、シンプルだが上品な客室空間。


 そこで見える光景は、何かを囲うように位置している、軽装から重装鎧までの黒衣の兵たちが数名。

 そしてその黒衣の兵達に囲われている、一人の人物が見える――それは、一人の美麗な少年であった。


 深い緑色の、ショートの髪が美麗に主張し。その元には端麗な造りの顔が覗く。

 160cm後半程の身に纏うは、何らかの民族衣装のような衣服。

 一見、美少女かと見紛うそれ。


 しかしその美少年から、次にはその身体の柔らかさを見せびらかすような、大外蹴りが放たれ。

 その民族衣装の、スリットの入った前垂れスカートから覗いた、華奢だが確かな骨付きの美脚が。彼が確かに男児であることを証明する。


「ぐがっ!?」


 そしてその華奢な美脚が、次には彼を囲っていた中の一人、黒衣の軽装兵の首に直撃。

 それは軽装兵の首を折り、死に至らしめたのだろう。次には軽装兵は蹴り飛ばされると同時に折り崩れ、床に沈み動かなくなった。


 見れば、床には他にも何体もの黒衣の兵の屍がある。それは全て、その少年の技が成したものであった。


「ふんっ、この程度っ?」


 そしてその美少年が、蹴りの一撃の成功から姿勢を復元しつつ、次に発したのは。

 その美麗な顔にナマイキそうな悪戯な表情を作っての、黒衣の兵達を嘲る台詞だ。


「野郎、馬鹿にしやがってっ!――ぐこ゜ぉっ!?」


 少年のそれに感情を逆撫でされ、別の軽装兵が怒りに任せた様子で、剣を振りかぶり襲い掛かったが。

 それよりも速く、相手の懐に入るような動きと合わせて少年が繰り出したのは。その手持ち構えて居た杖のような細身の剣。

 それが軽装兵の首元を見事に貫き。また屍の仲間へと加えた。


「ふふん、魔帝兵もこんなものなのかなっ?」


 そしてまた少年は、その美麗な顔に悪戯な顔を作って敵兵を嘲る。

 その戦う姿はまさに、舞い踊るかのようであった


「……っ――ぬぉぉっ!」


 次に動きを見せたのは、黒衣の重装鎧兵。その動きは巨体をもって、少年の動きを封じ捕まえようとするものか。


「そんな鈍亀の動きで、捕まえられるワケ――」


 それにまた、揶揄う色で発しながら。少年は軽やかに側方に飛び、それをも容易に回避して見せた――しかし。


「――ぐぁ……っ!?」


 直後。少年の脇腹に、重い衝撃と鈍痛が走った。


「しまっ、新手……!?」


 少年が飛び逃げた側方、空いていたはずの空間に。相対し掌握していた頭数以外の、別の重装鎧兵がいつの間にか現れており、少年の横腹に籠手で覆われた拳をめり込ませていた。

 まだ、敵の仲間が部屋の外で活動しており。それが少年の隙を突くべく、駆け付けたのだ。


「よしっ、捕まえたぞっ!」

「このガキが!散々暴れてくれたな!」


 拳を打ち込んだ重装鎧兵が。動きの鈍った少年を、そのまま羽交い絞めにして捕らえ。

 残っていた兵たちがそれを囲い、一人が罵声を浴びせる。


「くぁっ……は、放せぇ……!」


 羽交い絞めにされた状態から脱出を図り、必死で藻掻く少年。しかし彼の武器は主として、身軽さを持っての機動力、腕っぷしでは黒衣の兵たちに引けを取る。

 必死に藻掻くその動きも、無駄な抵抗としかならなかった。


「『塔城』から逃された童か。ありもしない希望のために、ご苦労なことだったな」


 そんな少年の抵抗の言葉には耳を貸さず。場のリーダー格らしき一人の重装鎧兵が、そんなような言葉と合わせて少年を嘲る。


「糞!コイツに何人やられたんだ……!?お返しに捻り殺してくれる!」

「まぁ待て、どうせ捕まえた反乱分子の末路は知れてるだろう。このガキは雄だが顔がいい、魔物や戦奴の慰み物になって、惨めな最期を辿ってもらおう」


 憤り、少年を甚振ることを提案するの一人の重装鎧兵に。

 だが対してリーダー格の重装鎧兵は、冷たい色で発し。言葉の最後はまた嘲る色に作りながら、少年の向けて紡ぐ。


「……っ!」


 それを聞かされた少年は、憎々し気に睨む表情を作るが。その顔色には微かに青ざめた色が隠せていなかった。


「くくく、そうだ恐怖しろ。そしてせいぜい嬲られながら、貴様の罪を泣き喚き後悔するといい――連れて行け!」


 そしてまた嘲笑ったのを最後に、リーダー格の重装鎧兵は少年を連行するよう命じる。


「ぐぅぅ……よせ、くそぉぉ……っ!」


 少年は自分を捕まえる重装鎧兵の腕中で、激しく暴れ抵抗するが。それも虚しく甲斐無く、その場より連れて行かれようとした。


 ――ドゥン、と。


 鈍く、しかし衝撃を体現する音が響いたのは直後。


 そして同時。少年を羽交い絞めにしていた重装鎧兵が、何かに打ち叩かれたかのように揺れて退き。

 次には、グジャリと。力の全てを失ったかの様子で、鎧の音を鳴らして床に崩れ沈んだ。


「ぅぁ……!?」


 そしてその影響で。少年は乱雑に放り出されるようにだが、連行を間逃れ解放される。


「は……うわ!?」

「なっ!?」


 そして聞こえた黒衣の兵達の狼狽の声。

 少年も、何が起こったのかを確かめるために、よろめき部屋の端に逃げながらも振り返れば。

 今まで彼を羽交い絞めにしていた重装鎧兵の兜は、顔面は。しかしなんと、大穴が開いて潰れており。

 そこからは赤黒い鮮血に、微かな血肉が飛び散っていた。


「!」


 そして黒衣の兵たちが仲間の惨劇に狼狽する中。少年は一番に、その気配に気づき視線を向ける。


 そして現在の客室空間の端、入り口付近。そこに立つ、黒衣の兵たちとはまったく別の存在が、少年の目に飛び込む。


 それこそ、大口径リボルバーを片手で突き出し、立ち構える――他ならぬジョンソンであった。




 ゴンドラ内の奥区画へと踏み込んだジョンソンは、そこで黒衣の兵たちが少年を囲い、そして拘束している様子を発見。

 少なくとも敵性、害ある存在である黒衣の兵たちが、また別の存在に加害を加える光景に。

 ジョンソンは迷うのも無意味と、突入と同時に引き金を引き。少年を羽交い絞めにする重装鎧兵を一人を仕留め無力化したのだ。


「こちらはVAC AFだ。告げる、投降しろ。それなら命と「人道的」な扱いを保証する」


 そしてジョンソンは、驚きこちらへ視線を集める残りの黒衣の兵たち向けて、そんな言葉を告げる。


 人道――荒廃し、非道暴力のまかり通る世界から。長い時を掛け、多大な苦難を乗り越えて復興し。

 つい最近になって、ようやく再び聞けるようになった言葉。


 もっともその言葉を。

 再興をしたばかりのこの世界を、再び踏み荒らしに来た正体不明の連中に提示するのは、正直不愉快の最たるとジョンソンは思っていたが。


 その証拠に、言葉に反して。銃口と合わせて向けたジョンソンの眼は、それだけで相手を射貫き屠らんまでに尖り険しく作られていた。


「な……!貴様ぁ、何をほざくかぁ!!」


 しかし、慈悲に近いそれすら敵は受け入れず。

 それよりも仲間を殺された怒りが優先。ジョンソンに一番近い位置に居た中装甲鎧の兵が、剣を振るい襲い掛かって来た。


「――げぁっ!?」


 だが――ガゴッ、と。

 衝撃音と、合わせての悲鳴を上げながら。その襲撃行動は、直後には真横から阻まれた。

 ジョンソンに意識を取られていた中装甲鎧の兵は。真横からそのタイミングを狙い、後続し現れたフレキシオのダイナミックな蹴りを受けて。

 そのまま真横に吹っ飛ばされる。


「ぎゅぇっ!」


 そして床に叩きつけられる前に、続く動作で撃ち放たれたサブマシンガンの銃弾を浴びせられ。

 絶命。その後に床に突っ込み崩れた。


「ぐぉぉっ!」


 そこへ間髪入れずに、そのフレキシオの攻撃後の隙を狙ったか。別の重装鎧兵が体当たりにも近い動きで突っ込んで来る。


 しかし瞬間に。フレキシオは半歩、身を捻り後退させるだけの動作で回避。


「な――がっ!?……ぎゃばぱぱっっ!?」


 そして次には、サブマシンガンの銃口ノズルが。重装鎧兵の兜と首の装甲の隙間から捻じ突きこまれ。

 「中身」を狙い、何の遠慮も無しに発砲。その「中身」を撃ち貫き、妙な悲鳴を上げさせ。

 それが収まると、重装鎧兵は膝を折ってガシャリと音を立てて床に崩れ沈んだ。


「な……!」


 兵たちが立て続けに屠り沈められ、その場に唯一残されたのはリーダー格の重装鎧兵。

 その口からは、あからさまな狼狽の声が漏れる。


「もう一度だけ言う、投降しろ」


 そのリーダー格の重装鎧兵に、ジョンソンは再度告げつつ。大口径リボルバーを突き付けながら、間合いを詰める。


「くぅ……ぬんっ!」


 しかし次には。なんと重装鎧兵は背負っていた得物の巨斧を繰り出すと同時に、身を翻し。

 そしてその重装鎧の重量と合わせての、勢いに物を言わせた大振りの薙ぎ払いで。背後のゴンドラの壁面を破壊し、外へと逃走したのだ。


(何者だあれらは……っ?この世界は、危険かもしれぬ……!本陣に知らせを……)


 その逃走を図ったリーダー格の兵は、内心でそんな事を思い浮かべながらも。

 ゴンドラより外に飛び出し、仲間の本陣に向かうべく。その向こうへ懸命に焦り走ろうとした。


「?」


 しかし、何か妙な感覚が次にはリーダー格の兵に走る。

 懸命に足を動かしているはずなのに、周りの景色が流れていないように感じる。


 それは事実であった。

 重装鎧兵のその重く堅牢な巨体は、しかし「宙」に浮かび。その脚は虚しく空回りをしていた。


「なにがっ……ぬっ?」


 その違和感の正体に辿り着く前に、リーダー格の兵は今度は己の頭部に。兜越しに何か掴まれるような感触を覚えた。


「――こ゜ぐぢょ゛っ?」


 それが、リーダー格の兵が覚えた最期の感覚となった。

 直後にはリーダー格のその頭部は兜ごと、「圧し潰された」。


「オイタは見逃さねぇよ」


 それを成したのは、そのリーダー格の頭を片手で鷲掴みにして、吊り上げていた青肌の巨体――他でもないコース。

 外で待機していたコースは、逃走を図り外部へ飛び出したリーダー格を丁度待ち構える形となり。

 そのままその巨大な腕に腕力をもって。重く堅牢な重装鎧兵の身体を、しかし容易く捕獲して持ち上げ。

 そして片手の握力だけで、兜ごとその頭部を圧し砕き潰し。リーダー格の兵を屠って見せたのであった。


「あァ、「黄身」まで潰しちまった」


 そしてコースは。その兜ごとリーダー格の頭部を砕き潰した自身のムーブを、そんなふざけた言葉で表現しつつ。

 拳を開いてリーダー格の兵の、鎧を纏った屍をグシャリと地面に落とし。


 場の敵性存在の無力化を締めくくり、周囲の制圧掌握をそれをもって完結させる。


「浚えたな」


 それを視認し、ジョンソンはその周囲の無力化完了を、そんな表現の言葉で示し。


「な……えぇ……っ?」


 そしてその背後、ジョンソン等以外では唯一残り。その一流れの戦闘行動を見た、見せられた少年が。目を丸くして、驚きを表す声を零していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ