チャプター5:「空撃」
ジョンソンは自ら2個班を率い。引き続きの住民の捜索救助を兼ねて、今程に目撃された『空飛ぶ船』の調査に向かった。
墜落予想現場までを繋ぐ街路に交差路を、通過し、曲がり。
さほどはかからずにジョンソン等は、『空飛ぶ船』の墜落現場を進行方向の向こうに見止めた。
向こう、また一つの交差点上。
その地上に、『空飛ぶ船』が崩れ沈む姿で損壊して墜落している。
そしてその上空真上には、それを追いかけ現れ、今も狙うであろう『飛竜』が。小型のそれが三体ほど旋回している姿が見える。
さらには、それとは別の中型の飛竜が一体、『空飛ぶ船』の間近までふわりと降り近づき。
背に乗せていた数名の黒衣の兵を、降下させる光景を見せた。
『竜』を用いた空中機動降下から、『空飛ぶ船』を制圧しようとする動きであることは明白であった。
「ジョーダンをいくつ用意してんだッ?」
見えた光景に、またコースが皮肉気に零しながらも。彼は近場の瓦礫に20mm機関砲を据えて一旦カバー。
ジョンソン始め、他隊員各員も散会から遮蔽。進行を一旦停止して向こうを観察する。
「狙撃配置ヨシ」
ジョンソンの近く隣では。狙撃銃を据え構えたエドアンズが、いつでも狙撃できる状態を取り、それを伝える。
「あぁ。だがひとまずは「空から」に任せる」
それに了解しつつ。しかし合わせてジョンソンが返したのは、そんな表現での示す言葉だ。
《――少佐、CF15です。そちらを街路上に視認、真上を通過し進入します》
直後、ジョンソンの身に着ける簡易無線機に通信音声が響き寄越される。
名乗り来た識別は、ヘリコプター隊に組み込まれる小型機。チャイルドフレンド機の内の一機からのもの。
そしてまた直後には、ジョンソン等の背後後方よりバタバタという振動音が響き届き。
そして瞬間、ジョンソン等の真上にCF機が飛来。街路に沿って低空スレスレを、けたたましい飛行音を立てて飛び抜けた。
真上を飛び抜け、ジョンソン等の進行方向の向こう低空に姿を現したCF機は。交差点の手前で速度を殺して滞空。
突然目の前に出現した、あちらからすれば得体の知れないらしい飛行物体に。
飛竜やその騎手、地上の黒衣の兵達はあからさまな驚愕に動揺を見せ。次いで攻撃の気配に前動作を見せたが。
――直後。
それは無用、無駄と知らしめるように。
CF機の搭載する、20mm機関砲2門と12.7mm機関銃2門が咆哮を上げた。
CF機が機体を左右に揺らすようにしながら撃ち注いだ銃砲火は、向こうの交差路上の宙空にまんべんなくばら撒かれ。
その凶悪な火力は、ゆったりと旋回していた飛竜たちに。一体二体、三体と順に注ぎ浴びせられ。
飛竜たちの鱗の装甲に覆われた体を、しかし容易く貫き。操る騎手共々、千切り砕いて宙空で血肉の花火へと変えた。
《20mmがカンバンだ。CF16、残りを任せる》
ここまでの戦闘行動の影響で、CF15機は今の一投射をもって20mm機関砲が弾切れとなったが。
CF15機の機長から無線に流れた声は、それに焦る様子は無く。僚機に伝え任せる旨を発する。
《――了解》
そしてその言葉を、動きに光景で証明するように。
CF15機が滞空を解いて上空へ上昇退避すると同時に。入れ替わるように後続待機していた二機目、CF16機が街路上低空を飛び抜け、ジョンソン等の真上を抜けて進入。
同様に機関砲と機関銃を唸らせ。今度は護衛を無くして残された中型飛竜の胴を撃ち貫き。
多少は大きな肉片へと変じ、地上へとばら撒き落とした。
到着し、行われた二機のCF機による掃射行動によって。
交差点上の真上は、あっけないまでに綺麗に一層された。
「残敵排除します」
CF機による交差点上の掃討が完了されるのを見た後。間髪入れずに発したのはエドアンズ。
それはジョンソンに狙撃行動の開始を伝えるもの。そしてエドアンズは許可を待つことはなく、もちろんジョンソンも止めるつもりなど無く。
向こうで狼狽える黒衣の軽装剣士に、それにすでにスコープのクロスを合わせていた狙撃銃を。その引き金を引いた。
甲高い射撃音が響く。
そして向こうで、射貫かれた勢いで吹っ飛び崩れる黒衣の軽装剣士。
それが合図となり。他、配置していた各員のサービスバトルライフルに、分隊支援小銃等が順次発砲を開始。
注ぎ込まれた各個射撃は、向こう地上で飛竜の援護を無くし、狼狽していた黒衣の兵たちを。時間をさしては要さず、間もなく残らず地面に沈めた。
「――排除」
『空飛ぶ船』の周りの敵の排除、無力化を見止め。一つの戦闘を締めくくる言葉を上げたのはエドアンズ。
「エドアンズ、交差点を見渡せる建物上階に上がれ。4班は距離を取って展開援護、1班は自分と接近し調査する」
それを聞くと、間髪入れずに。
ジョンソンはエドアンズに狙撃援護を。1個班にも展開援護を指示し、1個班には調査のために自分への随伴を要請。
「行くぞ」
援護を指示された各班各員が、行動に掛かる姿を見つつ。
ジョンソン自身はリボルバーを持つ腕を翳し、随伴の1個班に前進を促し、進み押し上げる。
交差路の真上低空には、今程に二番手で進入したCF16機が滞空して残り。上空監視支援を提供してくれている。
その支援の元、ジョンソン等は交差路へ警戒しつつ踏み込み。しかし残敵は無いことを程なく確認し、交差点周囲に展開して場を掌握。
「クリア」
「了、では踏み込むぞ。フレキシオ三等曹、自分と一緒に来てくれ。ジウォ等長士、コース一一等士、フォローを」
一帯の掌握が確かとなると。ジョンソンはいよいよ『空飛ぶ船』に踏み込むべく、随伴の班から要員をピックアップ。
一名の人系のコマンドー隊員に、同行を指示し。
ユーダイド系の小銃手と、SH隊員のコースにバックアップを指示する。
「いいでしょう」
「了」
「あぁァ、はいはいッ」
指示に、フレキシオとジウォと呼ばれた各員は端的な了解を。コースにあってはお約束のように皮肉気に返事を返す。
『空飛ぶ船』の下げているゴンドラは。品の良い馬車、もしくは列車の客車を思わせる造りだ。
側面には乗降用であろう扉があり、すでに乱雑にこじ開けられた跡があった。
おそらく正体不明の「敵」が数名、踏み込んでいる。
ジョンソンは愛用の大口径リボルバーを。
フレキシオと呼ばれたコマンドー隊員は、プレス加工の特徴が目立つサブマシンガンを。それぞれ室内戦闘に備えたスタイルで構え。
内部へと踏み込んだ。
ゴンドラの内部は、派手では無いが質の良い作りの客車造りだ。
「左、クリア」
「ナシ、ヨシ」
右に、左に素早く銃口と視線を向け。クリアリングを、同時に互いを援護しながらジョンソンとフレキシオは進んでいく。
「ッ、物音ッ」
ゴンドラ内を奥へと踏み進んで程なく。ジョンソンは奥より物音を聞き留め、拳を掲げて一端の停止を促した。
列車のデッキ造りにも似た壁の向こう。複数の物音が、足音に何かをぶつけるような音に、さらには声が聞こえる。
声は荒々しく張り上げられたもの。まず間違いなく、荒事の諸々の音だ。
「踏み込むッ」
「了」
迷うことなくジョンソンは決定し、フレキシオもそれを了承。
直後には、ジョンソンは見つけた壁端の通用扉を潜り、その向こうへと踏み入った――




