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チャプター40:「仇敵」

 魔帝軍の野戦司令部へ踏み込む際に、しかし新たな「脅威」の存在が発覚した日より、また日時をそう遠くはしないある日。

 ある一地域へ広域観測の一環にて、またVAC AFの一個偵察班が赴いていた。


 豊かな緑が広がる地から、乾いた荒れ地へと変わり始める環境に気候。

 その最中に。掻き消え掛けている轍を頼りに進んでいた、車輛二両と一個班程度の人数からなる偵察班の姿があった。


「――少尉、砂嵐の兆候が来ています。これ以上は止めた方がいいかと」

「ここまでか」


 偵察班を率いるは、ユーダイドのAF少尉。

 その少尉は部下の曹から意見具申を受けている。


「国境にも近く、上からも無理に進めるなと言われているしな。地形を記録して引き上げよう」


 少尉も、事前に受けていたこの周辺地域の事情情報に、上からの指示を鑑み。

 部下の具申通り、偵察行動をここまでとして引き上げることに同意した。



「――捉えた」


 そのVAC偵察隊を、ある者が「狙撃銃」のスコープに捉えていた。

 そして――



「――がァッ!?」

「ッ!」


 ユーダイドの少尉の目の前で、部下の曹が「熱光線」に射貫かれ。

 瞬間に絶命。そして少尉の前より吹っ飛ばされ、その先の崩れ沈んだ。


「スナイパーッ!!」


 それを同時に目の当たりにした、また別の隊員が咄嗟に叫び。周辺に居た偵察隊の各員は、慌て飛び退く動きでそれぞれ車輛を遮蔽物として飛び込み隠れる。


「がッ!?」


 しかしその最中に、堰を切ったようにいくつもの「熱光線」が襲来。それにまた隊員の一人が、その背中を射貫かれて崩れ沈んだ。


「攻撃だァッ、これはレーザー・アサルトのものだぞッ!」

「まさかッ」


 からくも遮蔽が間に合い、応戦行動を始めながらも隊員の一名が叫ぶそれで張り上げる。

 その言葉通り、今に襲い来る攻撃の数々は、この異世界の不思議な魔法によるそれではない。

 それ等は全て、VACの彼らも知る、元の世界の「熱光線火器」――「レーザー兵器」のものに違いなかった。


 まさかの攻撃の襲来に、少尉は半分信じがたいものを覚えながら。遮蔽より覗き出て向こうを見る。

 偵察隊からすぐ近くの向こうある、小高い崖の上。

 その上の岩影に複数の人影が、そしてそこから射ち注がれる熱光線の数々が見えた。


「ッ、応戦しろッ。本部に連絡を……ッ」


 そのユーダイドの特徴的な朽ちた肌の顔を、より苦く作りながらも。少尉は各員に指示を張り上げる。

 しかし、


「ッオ!?」


 直後、隣向こうに停車していた軽装甲車輛が。二輛しかない貴重な車輛の内の一つが爆発炎上した。

 対戦車火器の類。少なくとも、その何らかが崖の上の「敵」から寄越されたのは明白。

 そして、その爆発爆炎に巻き込まれ。そこに車輛に遮蔽していた部下の数名が、千切り弾かれ、地面にバウンドして沈む痛ましい光景が見えた。


「ッ――少尉ッ!」

「!!」


 そしてそれに悲痛な感情を覚える間もなく、次には隣から張り上げた声が響く。

 直後――少尉は部下の手により、今に遮蔽する車輛の近くから背後へと、押し出されていた。

 そして瞬間。その車輛がまた少尉の目の前で、爆発炎上を起こした。


「ッ!――ヅぁ!?」


 それに、その爆炎に。その部下が巻き込まれ、飲み込まれたのを見たのも一瞬。

 次には押し飛ばされた少尉の身は、押し飛ばされて尚、逃れ切れなかった車輛爆発炎上の爆風に強く押され。次には受け身を取れぬまま背後の地面に強く落ちた。


「ぐ……ッ……」


 少尉は一命こそとりとめたが。強く叩きつけられたその痛みに、身体の自由を奪われる。


「――ふんッ、ユーダイドか」


 そんな少尉の元に、何か嘲けり軽蔑するような声が聞こえ降りた。

 藻掻きながらも顔を起こした少尉が、次に目に映したのは――鋼鉄の巨体。


 それは灰色に塗装された堅牢な鎧。

 しかしそれは、元世界の古代に、そしてこの異世界にては今も使用される、古風な甲冑などではない。

 それは少尉も良く知った存在――「パワーアーマー」と呼ばれる、エネルギーにて動力を得て稼働する「未来の鎧」。


「汚らわしい存在を擁し、あまつさえ差し向けて我らの手を煩わせるとは……不愉快の極みだな」


 その未来の甲冑、パワーアーマー(以降PA)を纏い現れた人物は。

 その顔こそ、頭部装甲ヘルメットに覆われて伺うことはできないが。内臓マイク越しでも女と分かるその声にての、あからさまな不快の色での侮蔑の言葉を少尉に寄越す。

 それは、朽ちた容姿を持つユーダイドである少尉を、明確に侮蔑し忌諱してのもの。


「なぜ……〝ToB〟がここに――あがッ!?」


 身を打った痛みの影響から、緩慢にしか動かせない口でしかし、そのワードと併せて問いかける言葉を向けようとした少尉だが。

 しかしそれはまた脇から現れた別の人影の、それが踏み下ろした足蹴りが伝えた痛みに阻まれた。


「キャプテンに汚い口を訊くな、ゾンビがッ」


 少尉を足蹴にしたのは、PAとは異なるが、類似した塗装を持つ近代的装備の軽歩兵。

 その軽歩兵が高圧的な口調で命じ、そして少尉を罵る。

 他、周辺にも類似した格好の軽歩兵が複数名見え。いずれもの手には「レーザー・アサルト」等、ハイテクの証明たるレーザー兵器がまた共通して見え。

 今に偵察隊を襲撃したのは、その存在であることを証明していた。


「あの世の土産に、今の質問にだけは答えてやろう――忌々しくも諸君等に、苦渋を飲まされたためだよ」

「ッ……」


 PAを纏う、今にキャプテンと軽歩兵から呼ばれた存在は。

 また嘲るように、そんな言葉だけを伝え零す。


「もう気は済んだか?その醜い身姿を、私の前から消してくれ――やれ」


 そしてそう訴える言葉を最後に、PAのキャプテンはその巨体を振り替えして去り。

 そして――軽歩兵の持つレーザー・アサルトの銃口が少尉の眼前へと突き付けられ――


 その銃口で熱光線が瞬いた瞬間の光景が、少尉が見た最期の光景となった――

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