チャプター38:「少年」
邂逅の瞬間は、直後には訪れた。
警戒の態勢を移行、交代する最中であった間の悪いタイミングを突かれ。それも恐るべき速度で突入してきた「それ等」は。
警戒監視に着いて飛ぶ戦闘機やヘリコプターの間の僅かな隙を、小さな衝撃派までもを伴い一瞬で通過。
そして塔城の上空直上へと至り、姿を現した。
「――」
「――っー」
場所の詳細は、今しがたにジョンソン等が乗って来たGW機の背後真上。
そこに現れ滞空したのは、一人は漆黒の衣装に銀髪を主張する絶世の美少女。
シュステンと呼ばれていた、吸血鬼の少女。
自らその携える翼で羽ばたき、宙空に優雅なまでに身を置きながら。しかし冷たいまでに尖る顔色で、眼下を、少女からすれば得体の知れない存在、VAC AFの各隊各員を睨んでいる。
さらにその彼女の背後少し上には、箒にまたがる金髪の美少女が。吸血鬼の少女に追い付き、その背後を護るように配置から滞空。
そしてまた警戒の色を浮かべて、眼下を見下ろしている。
「ヨォオイッ!なんぞおでましだぞッ!?」
「ッ!」
その二人にまず相対から対応したのは、近場に居たコースにエドアンズ。
コースは発し上げて周りに知らせるのと併せて、抱える20mm機関砲を。その背後でエドアンズは狙撃銃を、それぞれ構え突き出して頭上に向ける。
「っ!亜人にアンデッド……!?やはり、魔帝軍の新しい軍勢なのか?」
「ひょっとして、かなーり強敵なカンジ……っ!?」
そんなコース等を目の当たりにしてか。詳細には聞き取れないが、二人はまた何かを紡ぎ零す様子を見せる。
「何にせよ、仇成す存在であるなら容赦はしないッ――!」
そしてしかし次には、吸血鬼の美少女は何か意志を確かにするような色で零し。同時にその腕を翳し上げた。
直後。その腕先の延長線上、彼女の頭上に出現したのは。
漆黒の大きな紋様――魔法陣。
まるで雪の結晶の生成を早送り映像で見るかのように、彼女の真上で描かれ出現したそれは。
詳細は全く不明だが、しかし揺らめく様相から凄まじいエネルギーを宿す様相が、嫌でも推察できた。
「ゲぇッ!」
「ッ」
それを頭上に目の当たりにして、コースは隠さぬ悪態の声を上げ。エドアンズも眼を剥き。
二名はそれぞれ扱う火器の押し鉄、トリガーにいよいよ指先を当てある。
「あれはッ?」
その背後向こうでは、同じものを認めたジョンソンが。その異様さを察してまた声を上げ。
「――ッ」
同時、傍らではサミュエルが。向こうの銀髪の少女に向けて、躊躇なく大口径リボルバーを向けた。
「――待ってっ!」
「待ってくれ!」
「!」
しかし直後、周りに向けて張り上げ制止を求める声が上がる。
そして同時に駆け出していたのは、リーシェとルーネの二人だ。
「ごめんっ!」
「ぬォッ?」
「!」
二人はコースやエドアンズを庇うように前に駆け出て、その前に立ち。
「シュステン、クイン!待つんだ!止まって止まってぇっ!!」
「攻撃をするな!彼等は、味方だっ!」
そして頭上の吸血鬼の美少女たちに向けて、二人はそれぞれ急き慌てる色で。そう制止の言葉を張り上げた。
「っ!」
「リーシェっ、ルーネっ!?」
それに、上空の二人も反応を見せる。
「僕が出会って、ここまで導いたんだ!魔帝軍じゃなくて、それを倒してくれた味方っ!」
さらに説く言葉を、リーシェが頭上の二人に見せる。
「それは……ホントに……?」
「ああ、確かだ。私も今しがた、囚われの身から救われたところだっ!」
口の動きで、尋ねる言葉を見せた吸血鬼の少女に。今度はルーネが立て続けて説明と説得の言葉を向ける。
「……」
「……」
またシュステンと呼ばれた吸血鬼の少女と、クインと呼ばれた金髪の少女は、一度互いの顔を見合わせ。
それから、吸血鬼の少女シュステンがその攻撃の意志を解いたのか。頭上に生成されていた漆黒の魔法陣が、次には収束から消失する。
同時にシュステンとクインの二人は高度を下げ、次にはリーシェたちの前へとスタと降り立った。
そして、
「――うっそマジでぇっ!?」
「うっわっ、俺らやらかしたぁっ!?」
恐ろしいまでに美麗で可憐な容姿の二人は、しかしその顔を驚きに崩して、互いを見合ってそんな軽い様子での声を上げた。
そして、可憐な美少女に見えた二人からは。しかしどちらからも明らかな低めの「男の子」の声がおもいっきりした。
「あァ?」
「うん……?」
その二人の様相の変貌に、今度はその前にいたコースやエドアンズが訝しむ色を見せる。
「やっべ、ヤバそうに見えたからてっきり魔帝軍かと……っ!」
「いっや、ごっめーん……っ!」
そんなこちら側をよそに、シュステンはまた困惑の色で言葉を紡ぎ。
クインにあっては両手を合わせて、各々へ向けての謝罪の動きまでもを言葉と併せて見せる。
「こちらの二人は、リーシェさんたちのお知り合いか?」
巻き起こった状況に少し驚き、また色々を疑問に思いつつも。
歩み寄って来たジョンソンがリーシェたちの傍らに立ち、まずはそう尋ねる言葉を向ける。
「うん……吸血鬼のシュステンと魔導士のクイン。「同盟」の仲間で、僕たちの友人」
それにリーシェもまた危うかった状況からか少しの困惑を見せつつ。そう二人を紹介する言葉を返す。
「全ユニット、新規出現対象はフレンド、敵対対象にあらず。確認が取れた、警戒不要」
敵で無い事の確認が取れ、まずはジョンソンはその旨を通信にて各隊各所へ伝える。
「二人とも、彼等は「ヴイエーシー」って言う異界の国家の人々。僕が逃がされた先で出会い、そしてお願いに答えて救いとなってくれたんだ」
その傍で、リーシェは二人に向けて、VACの存在とここまでの経緯についてを簡単に説明する。
「あんたたちが二人を助けてくれたんっ?うっわーっ、まじあんがとーっ!」
「ぅぉッ」
そんな二人の片方、金髪の美少女――と見紛えるほどの美少年であったクインは。
次にはジョンソンの前に立つとその手を取り。満面の笑みでの言葉と併せて、ジョンソンの手を感謝の意を込めた握手でブンブンと振るう。
「ほぇー、ワリーことしたな。ところでじゃあ、飛んでるアレとかなんなん?なんかすげーけどっ?」
その一方で吸血鬼の美少女――と見紛える恐ろしいまでの吸血鬼美少年であったシュステンは。
しかしそれまでの冷たく容赦の無い顔色に様相を一転させ。
言葉を崩し、そして「好奇心旺盛な男の子」といった様子を多分に見せ。上空を飛ぶ戦闘機やヘリコプターに。
さらにはスーパーヒューマンであるコースや、ユーダイドであるエドアンズなどを見て。VACの色々についてを興味深く訪ねてくる。
「ったァくッ。ビビらしてくれやがって、お子様ドモッ」
「男の子なんだ。それも見た目に反して大分賑やかしいね」
「すまない……ああいう子たちなんだ……」
そんな一転した二人の美少年を傍目に。
コースは危機かと思いきや一転して収まった状況から、うなだれ隠さぬ悪態を吐き。
エドアンズは、美麗な男の子たちがはしゃぐ様子を、冷静さを取り戻して興味深げに観察。
そんな二名に、ルーネは手を焼く保護者のように謝罪の言葉を向ける。
そんなように。最後に驚き騒がしい一悶着を伴う、新たな出会いを挟んだが。
ともあれ、「塔城」の急襲からの制圧掌握。及びそれに伴うルーネ始め「同盟」の人達の救助回収は成功。
事の始まりとなったリーシェからもたらされた求められた、同盟の人々の救助。その約束はここに果たされ完遂された。




