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チャプター32:「撃墜」

《――ホヴ2-1ッ、そっちにデカめのが行ったぞッ!》

「ッ」


 人質の盾を取った敵魔帝兵を、しかし見事に撃ち抜き屠って見せ。


 そして解放された人質の確保保護に、指揮下の誰か向かわせようとサミュエルが脳裏に浮かべたのも、しかし束の間。

 間髪入れず、状況は目まぐるしく動く。


 通信に、上空監視のCF機からの警告の言葉が響いて届き。

 それが示す存在を、その気配に影を。サミュエルが側方頭上に察知したのは同時。


「――ッ」


 視線を捻り向け、その頭上に現れていたのは魔帝軍の飛竜騎。

 それも他の多くの個体よりも倍以上巨体であることから、指揮官騎クラスと見える。


 加えてその飛竜騎はその胴の下、腹に何かゴンドラ代わりのように檻籠を下げている。

 そこに入れられ囚われるは、やはり同盟の兵に冒険者の男女。

 おそらく、また人質の盾か。もしくは『みせしめ』か、そんな所を目的としてのもの。


「――グゥゥ」


 そして、その飛竜騎の背に乗って飛竜騎の手綱を操るは。屈強な巨体を強固な防具に包んで見せる亜人種――この異世界で、オーガと呼ばれる存在だ。


 補足すればオーガ族は、オーク族などと同様に魔帝国との利害関係から。徴集呼集に応じて、一時的なものとして魔帝軍の傘下に身を置いている。

 今に現れたオーガは、この「塔城」の攻略に参加していた、オーガ族からの一部隊の長だ。


「ググゥ……得体の知れねェ、忌々しいヤツらが……っ!」


 サミュエルのすぐ真上で、ちょうど滞空に入った大型飛竜騎の背の上で。そのオーガは、そう忌々し気な言葉を漏らして寄越す。


「何者か知らねぇが……邪魔立てするってんなら消し飛ばしてやらァっ!」


 そしてまた荒げて発し寄越したオーガは、次には握る飛竜騎の手綱を荒々しく引き、その顎を掻っ開かせる。

 その飛竜騎の喉奥に覗くは、『闇の灯り』。禍々しい発光現象。


 闇の閃光――一種のレーザー光線。

 その存在との接触は、これまでにも報告で聞き及んでおり。さらには今程にも見た『闇の杭撃』からも連想し。

 サミュエルは、その正体を容易く脳裏に浮かべて結論付ける。


 その一瞬の間にも。飛竜騎の喉奥に生み出されるそれは、「発射」の直前の膨張を見せる――



 ――ドウォンッ!



 だが。

 鈍くも、劈く音声と同時に。何からが襲来から「叩き込まれ」。

 飛竜騎が、短くしかし苦痛を訴える悲鳴を上げながら。宙空にてその「首」を、打ち叩かれるようにもんどり打って退ける姿を見せ。


「ヅぁ!?」


 同じくして、その背に乗るオーガから、狼狽と驚きの声が上がり響く。


 そして、「それ」にまさに「阻まれ」。

 大型飛竜騎の喉奥に生み出されていた『闇の灯り』、闇のレーザーの発生源は。しかしその生成を途中で阻害されて、幻の様に掻き消える。


 「その」一撃は、塔城の向こう対岸より来た。



「――ヒット」


 「塔城」から見て正面対岸の、より高く聳える断崖の頂上。

 そこに配置していたのは、重狙撃班の各員。そして、同時にそこに居構える、あまりにも物々しい代物。


 そこにあったのは――30mm機関砲。

 正しくは航空機関砲をベースとし、それを改造派生させた「狙撃砲」。

 また大げさな三脚に据えて置き構えられたそれに。

 それを扱うスーパー・ヒューマンのコマンドー隊員が。座し、まるで狙撃砲に抱き着くかのような様相で「構え」。


 今に一撃の命中を、低い声で上げて伝えながらも。

 狙撃砲の上に装着される、異様に物々しい狙撃照準器具のスコ―プを覗き。その照準腰の向こうでもんどり打った、大型飛竜騎を引き続き捕まえ見ている。


「硬いぞ、さらに続けろ」


 その狙撃砲の隣で、スポッターを兼ねる狙撃ライフル手が。またスコープを覗き観測しながらも、しかし伝え紡ぐ。

 その通り、向こうの大型飛行騎は、大きく身を打ちながらもしかし未だ現在だ。


「了」


 スーパー・ヒューマンのコマンドー隊員は、それにまた端的に応じ。

 狙撃砲を微調整から再照準し。そのSH特有の太い指先で、トリガに力を込め。

 鈍く、しかし劈く射撃音を。さらに立て続けに響かせた。



 対岸の断崖頂上に位置取った30mm狙撃砲より、容赦の無い追撃が立て続けに寄越される。


 二発、三発、四発と、撃ち放たれ襲来した機関砲弾は。

 もんどり打った直後の飛竜騎を、しかしその胴をまた撃ち叩いて、そこに大穴をこそいで開け。

 さらに翼を撃ち、それをまるでボロ切れのように千切り奪い。

 果ては飛竜騎のその恐ろしい顎を、しかし破り砕くかの如きで貫通。


 飛竜騎はその巨体をしかし幾度も叩かれ。二度三度四度と、宙空でノックバックの様子を見せ、併せてその度に短い悲鳴を上げ。


 その果てにはダメージと、揚力を失ったこともあってだろう。

 トドメに寄越され撃ち込まれた機関砲に。また、しかし一際大きく叩き吹っ飛ばされるようにして。

 そして側方向こうの地面に、グシャリと潰れ崩れる形で「墜落」した。


「ッ」


 サミュエルは、その飛竜騎に下げられていた人質たちの檻籠が。幸いにも墜落直前に飛竜騎の胴を離れて逃れ、やや乱雑ながらも地上に無事な形で落ちた様子を見るが。


 だがそれと同時。またその墜落した飛竜騎から。転がり落ちるに等しいそれで、飛び出し降りた巨体をサミュエルは同時に見止める。


「っァ……ヤロォァ……!」


 それは、他ならぬオーガ。

 危うく転げ崩れるすんでの様相で、飛び出して来て。しかしその太い脚でもって踏ん張って見せたオーガは。

 同時に視線でこちらを睨み刺し、忌々し気な声色を漏らして寄越す。目に見えての怒りを表すそれ。


「ふっザけんじゃ……無ェぞォォっっ!!」


 そして、その様相を見せたのも束の間。

 直後には、その背に背負っていた巨大な斧を繰り出すと同時に。オーガ特有のその健脚に物を言わせて、爆破の如きで地面を踏んで飛び出し。


 オーガのその容姿ふさわしい迫力で、しかしその巨体に反した恐るべき速さで。

 サミュエルへと迫った。

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