チャプター31:「撃鉄」
そんなような、サミュエル等を見舞った一悶着の間にも。
各機、各隊各所は敵の排除行動を順次継続から進め。
サミュエルもまた気を取り直し、態勢を整え戻し。狙撃射撃を何度か行い。
間もなく、眼下の城壁上の各所に蠢いていた魔帝軍部隊には。
数を削がれ崩された影響で、目に見えてその動きを減じ。そして統制の取れず烏合の衆と成り始めている様相が確認された。
「ある程度捌けたか。機長、降ろしてくれ」
《了解》
「――各隊各所、ホヴ2-1及び2-4はこれより城塞内部へ降下を行う」
塔城のそれを見止め、それから城内への進入降下への開始を判断し。
サミュエルはCF機の機長に伝え要請し。続けて通信にて、行動中の各隊各所へその旨をまた伝える。
《ホヴ1-1より2-1、了解。くれぐれも慎重に》
「驕りはしない」
別のチームの長よりその了解と、併せて忠告の言葉が寄越され。サミュエルはそれに「無論」と端的に返す。
補足すると、ジョンソンはVAC AFにて階級こそ現段階では伍長であるが。
ストロングコマンドーの枠を指定される隊員は、その特性上階級に必ずしも括られず。標準の隊員よりも広くに及ぶ行動判断の権限を認められ、また同時にそれが求められた。
今の別チームとのやり取りが終わるか終わらないかの時点で。サミュエル等の乗るCF機はすでに塔城への進入降下を開始。
その途中で。
別働中の軽攻撃機仕様のCF機が。離れた向こうに見える側防城の間近に飛んで滑り込み。
横滑りに側防塔を沿い飛びながら、機体両側のハードポイントに備える四門の7.62mm機関銃にて。側防塔をそこに残り居座る魔帝兵たちごと、叩き浴びせるが如き掃射にて弾き砕いて沈黙させる様子を見せる。
それを傍目に見つつ。
直後にはちょうど塔城の城壁上を、驚き見上げる魔帝兵たちの視線を受けつつ飛び越えたCF機上で。
サミュエルはギリギリまで続けていた狙撃行動を止め、降下戦闘に向けた準備を始め。
狙撃銃を放してスリングベルトで下げ。入れ替わりに弾帯に着けるホルスターより、近接戦闘用に装備する.44口径の大口径リボルバーを引き抜き控えた。
《チェック――》
二機のCF機が、少しの間隔を取る縦隊で城内空間の地上へ進み迫る。
降着が近づき。機長からそれを各員掌握し、備えるよう促す旨が通信に上がる。
《ダウン――》
それも束の間、間髪入れずに続く伝える言葉が上る。
地上、地面がすぐ眼下に迫る。
《――ブロォウッ》
鈍く重々しいまでの声色で、降着を伝える言葉が通信上に発され響き。
同時の瞬間、サミュエルたちを乗せたCF機は少なからずの振動を伴い。塔城敷地内の地上地面に堂々降着。
「――ッッ」
そして、その堂々たる降着が成されると同時かそれより早いかのタイミングで。
言葉にすることも無く、翳した腕の指先で示すだけの動作で、同乗の各員に行動指示を伝えながら。
サミュエルは飛び出すまでのそれで機上を、乗員用ベンチを離れ降機。
地面を踏み、そしてそのままの動きで踏み出し前へと繰り出た。
「――」
そしてまた直後だ。
降下を果たしたのも今の瞬間だというのに、サミュエルはすぐさま踏み出た先で大口径リボルバーを突き出し構え。
トリガを連続的に引き――立て続けに発砲。
向こう正面に姿を見せ。そして狼狽しながらも慌て、クロスボウをこちらに向けて射とうとしていた軽装の魔帝兵の二人程を。
しかしそれを認めるよりも前に、撃ち抜き仕留めて沈めた。
「――ッ」
さらにサミュエルの動きはそれに留まらず。
今度は身を側方に捻り、再び連続的に二度発砲。
その側方の向こうより、剣を構えてこちらに迫ろうとしていた魔帝兵剣士と。腕を突き出し、生み出した魔弾をこちらへ放とうとしていた魔帝兵魔導士を。
しかしやはり、それぞれの攻撃行動を認めるよりも前に。
.44口径弾を叩き込んで、撃ち屠り沈めて見せた。
そんな、降下降着から早々に、単独暴れるサミュエルの背後で。
一拍こそ遅れつつもほぼ同時に降下を成し、四周への展開から。各個判断にて、狙撃仕様のサービスバトルライフルやマークスマンカービン等それぞれの装備火器を用いて、射撃を開始するサミュエルの指揮下の各隊員に。
チームを降ろして上昇離脱して行くCF機の姿が見え。
さらに続け次には入れ替わりに、後続していた二機目のCF機が進入してきて降着する様子に。
同時進行で、軽攻撃機仕様のCF機がまた近く真上に別途飛来。
ホバリングから搭載の機関銃を唸らせ、向こうに見える防御建造物の壁を叩き砕き。
そこに籠り弓矢や魔法を繰り出そうとしていた魔帝兵たちを、しかし脅かし怯ませ。またはいくらかを矢窓(銃眼)から飛び込んだ銃弾によって殺傷した。
「う、うごくなぁっ!」
「これを見ろぉっ!」
軽攻撃機仕様のCF機がまた滑るように、一旦離脱していく最中。
だが、いくつもの騒々しい音声の中に。そんな張り上げ訴える声を聞き留めたのはその時。
サミュエルが視線を動かし見れば、少し向こうに。そこに声の主が、「その」光景を伴い見える。
見えたのは、一糸纏わぬ姿で拘束具を嵌められ、並べられる若い男女たち。
そしてその背後に立つ魔帝兵たちに。首輪の鎖を引っ張られ、ちらつかせる武器で脅される様は、人間の盾とされているそれ。
「塔城」にて籠城から囚われた、同盟の兵に冒険者を。それを肉の盾とする魔帝兵たちの動きだ。
「これが見えたら――ごびゅぁっ!?」
しかし、その光景を主張して張り上げていた魔帝兵が。その言葉を言い終わるよりも前に、もんどり打ち、その頭部を「弾き千切られて」吹っ飛んだのは瞬間だ。
「!……ひ!――びぎゃぁっ!?」
立て続けにもう一人の魔帝兵も、短い悲鳴も束の間。次にはもんどり打って吹っ飛び、仲間のその後を追って沈んだ。
同時に飛び抜けた「何か」にその事態に、盾とされていた男女たちは。解放されると併せて、しかし小さく驚きの悲鳴を上げて身を屈める姿を見せた。
「――ダウン」
視線を戻せば、向こうに相対し立つのはサミュエル。その手には、硝煙を上げる大口径リボルバーを突き出し構えて居る。
サミュエルは、VAC AF ストロングコマンドーは。
人質を人間と盾と立てられたごときでは、臆しなどせず。それに応じられぬ程度の、並み技量の持ち主でも決して無い。
サミュエルは人質を盾とする魔帝兵の動きを見止めるや否や。何の躊躇も無く、人質たちの間の僅かな隙間に身を晒す魔帝兵を、照準にて捕まえ発砲。
その凶悪なまでに素早くも精密な射撃が、今の御業を成したのだ。




