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チャプター29:「空襲」

 「塔城」より、少し距離が離れるがしかし間もなくの地点。

 両側を断崖に挟まれる、狭くそして深く長い渓谷の間を。しかしその断崖の片方にまるで沿うようにして「飛び進む」

 複数の飛行物体の姿が――小型のヘリコプターの編隊があった。


 VAC AFの用いる小型軽量ヘリコプターである、チャイルドフレンド(CF)機。

 四機一グループ、それが二つの計八機が。少しばらけた縦隊にて、またグループ間で少しの距離を取って、渓谷内を飛行している。


 これ等は。此度に発動された「塔城」への急襲作戦のための、先発急襲隊を成すものだ。


〈――ホヴ2-1、〝サミュエル〟。間もなくだ、そちらのチームは降下戦闘に備えろ〉


 各機の間をやり取りする通信上に。そんな名を呼ぶと合わせて、伝える音声が上る。


「――了」


 それに呼ばれ、そして答えたのは。CF機編隊の先頭側の一機。

 その、詳細には人員輸送型であるCF機が、機体の両側に備える「外装式ベンチ」に。

 ベルトでその身支えて座すのみという、傍から見ておっかない形で搭乗している、AF各隊員の内の一名。


 サミュエルと呼ばれたその彼が、呼びかけに答えて発した声は。何か、妙に掠れたもの。

 その理由は、彼が顔に装着する、フルフェイスゴーグルマスクが理由。

 さらに併せて、縁を詰めたデザインのヘルメットを装着し。

 身体の服装のベースは、VAC AF標準の作戦行動服だが。その上から軽量アーマーを付け、さらにその上からはジャケットを羽織る姿が特徴的。


 ――ストロング コマンドー。


 VAC AFにて特別作戦を担うコマンドーの中でも、特に「強力」な者が指定される枠。


 姿服装はそのストロングコマンドーが用いる装備であり。

 すなわち、その彼――サミュエル スティーア伍長は、そのストロングコマンドーなのだ。


 他にも編隊を組むCF機の内の、数機の人員輸送型にそれぞれ搭乗するAF隊員は。

 その内訳の多くはコマンドー隊員にて成され。

 そしてさらにその内に、ストロングコマンドーが数名組み込まれている。


 彼等は、急襲作戦にて「塔城」への降下から戦闘を担当する降下隊であった。


「聞いたな、備えろ」


 今の、降下が近づく事を伝える通信を聞いたサミュエルは。それを自身が指揮を預かるチームの、各員に端的に継ぎ告げる。

 それに同CF機上の、コマンドーや特技隊員から成る各員は。返答の代わりに各火器装備を控え備える動きで答える。


《見ろ、〝衝撃〟がお出ましだぜ》


 また通信上に、別機から誰かが上げた、そんな言葉が聞こえたのはその時。

 同時に聞こえ届いたのは、ヘリコプター編隊の後方よりの鈍くも轟く音。


 それは渓谷内に反響する形で、加速度的に明確になり。

 そして直後。ヘリコプター編隊の後方下方より、別の飛行物体――戦闘機の編隊隊形が出現し。

 瞬間にはヘリコプター編隊のより下方。狭く際どい渓谷の底を、しかし臆さず堂々とした飛行速度で。3機、4機と飛び抜けて行った。


 V-4L 艦上戦闘機。

 世界を終わりに導いた大戦争より、さらに以前の大きな戦争時に開発された。逆ガルの主翼が特徴の、大型のレシプロ戦闘機。

 VAC AF 航空隊は、大戦争を凌ぎ現存していた当モデルをかき集め、ないし破損機のレストアから。戦闘爆撃機として運用している。


《低空進入のチームだ》


 それを眼下に見ながら。CF機編隊の内からまた誰かが、通信に声を上げてその編隊の詳細を示す。


 事前に行われた高高度観測から。「塔城」はすでに魔帝軍が占拠して跋扈する状況であることが、高確率と判定されている。

 飛び抜けて行ったV-4Lの飛行隊は、渓谷内の低空をルートとして進入し。その魔帝軍の支配下となった「塔城」に、低空より事前攻撃を仕掛ける役割を担う隊だ。


「徹底的に行けよ」


 そんな眼下を飛び抜け、渓谷の向こうに先行して行ったV-4Lの飛行隊に。サミュエルは静かに、念じ送るかのように零しながら。

 自身の装備火器である半自動狙撃銃を、持ち控えた。



 視点は、「塔城」へ先行するV-4L飛行隊の先頭を行く機。飛行隊長機へ。


「――見えた」


 機のパイロットであり、飛行隊長である、VAC AF 航空隊のウォリス大尉は。

 渓谷の底を行く低空進入の経路の果てに、両側に迫るかのようにそそり立っていた断崖が開け。

 その正面向こうに、「塔城」を。また断崖の上に小さな古城が建つ、絶景の光景を見た。


「投射準備ッ」


 その絶景を前に、これよりの行動にある種の「惜しさ」を感じたのも一瞬。

 ウォリスは通信にて後続、指揮下の各機に、端的な言葉で指示を告げながら。自身も扱う操縦桿のボタンに指を乗せる。

 それと同時進行で、飛行隊の列機は縦隊を解き。必要最低限にバラけて、それぞれの射線を確保。


「――ファイアッ」


 そして再び、ウォリスが通信に。端的に告げる言葉を発すると同時に。彼は操縦桿のボタンを強く押し込んだ。


 瞬間――ウォリス機始め、飛行隊各機は。それぞれの逆ガル翼の下に並べ装備していた、ロケット弾を一斉に点火から撃ち出した。

 各機から撃ち出された多数発のロケット弾は。それはバラけ、しかし群れを形成して「塔城」へと向かい飛び。

 そして「塔城」の城壁に、または断崖の側面を叩き、無数の炸裂を巻き起こした。


 炸裂による城壁の破壊。それはその上に陣取っていた魔帝軍の兵たちを吹き飛ばし。あるいは崩落瓦解に巻き込み、崖下の遥かへと「零して落とし」。

 また、崖際を叩く炸裂は。近くを飛行していた空中警戒の飛竜騎を、炸裂にて巻き込み千切り弾いて墜とす。


 飛行隊による急襲の初撃は、見事に成功した。


「――各機、上がれッ」


 しかし、今にあっては。その投射攻撃による効力の確認はしない。

 ウォリスは急く色で、各機に通信を飛ばすと同時に。自身も扱う操縦桿を思いっきり引き起こす。

 直後には、各機は迫っていた「塔城」の断崖絶壁の、直前に等しい距離で急上昇。

 次にはロケット弾投射で損壊させた城壁の真上を。機の腹を擦るギリギリの差で、飛び越えて抜ける。


「ッ」


 そのまたすぐ直後。飛行隊の上昇進路上に、一騎の飛竜騎の姿が映る。

 垣間見えた様相から、立ちはだかる事を意識したものでは無く。ちょうど居合せたらしきそれ。


 「邪魔だ」――ウォリスは内心でそう思い零すと同時に。しかしそれよりも早い程の反応で、操縦桿のトリガを引いた。


 V-4Lの、細かくはウォリスの乗る機体モデルの搭載パターンである。12.7mm機関銃と20mm機関砲が、唸りを上げて銃砲火火線を吐き出した。


 火線は進路上を阻む飛竜騎に、難なく叩き込まれ。その飛竜騎はまさにボロ切れの様相となって千切れ飛ぶ。

 直後には、まるで吹いて払い退けられるように、千切れ堕ちていくそれをしかし尻目に。

 ウォリス機を筆頭に飛行隊各機は、一旦の上昇離脱するために上空へ飛び上がっていく。


「ッ」


 高度を稼ぐと同時に、しかし間を開けずに旋回反転行動に入ったヴォリス機等は。同時に向こう近くの宙空に、自分等と入れ違うように降下していく別の「飛行隊」を見る。

 それは上空高高度で。ウォリス等の低空進入チームの上空援護、兼二次攻撃の上空からの進入のために待機していた。5機程から成る別のV-4Lの飛行隊だ。

 その飛行隊はウォリス等と入れ違いの降下進入から。「塔城」の周辺に銃砲火の雨あられを撃ち注ぎ。

 混乱狼狽に陥っていた魔帝軍の飛竜騎を、次々に弾き落として行く様子を見せた。


「各機、任意に攻撃を開始しろ」


 その別隊のカバーに感謝を感じつつ。しかし遅れは取るまいと。

 ウォリスはまた通信にて、自身の指揮下の各機に行動を伝え。


 各機は自由戦闘のための、旋回反転と同時に散会。それぞれのタイミングでの再進入から、魔帝軍のそれぞれを相手に銃砲火を唸らせ始めた――



「――あれだ」


 時間はほんの数十秒戻り。


 先行した戦闘機飛行体に一拍だけ遅れる形で。サミュエル等を乗せたCF機編隊も、狭い渓谷を抜け。

 開けた向こうに「塔城」の絶景を。

 しかし同時にその「塔城」の城壁や断崖の各所を。ランダムの様相で無数の小爆発が――ロケット弾攻撃の着弾炸裂が叩く光景を見る。


 その光景を。しかしサミュエルは淡々とした、視認の事実を告げる一言で済ますのみ。


 状況光景はそこから瞬く間に動き。飛行隊の一撃からの上昇離脱に、入れ替わりに高高度からの別隊の進入投射が行われ。

 そして断崖絶壁に囲われる、際どい環境の内で。しかし臆さず掠め飛び抜け、火力を唸らせる、飛行隊各機の「暴れる」姿が始められる。


「行くぞ」


 その肝を冷やす、そしてしかし圧巻なまでの光景に。だが気圧されるでもなく。

 「塔城」への進入接近進路に入ったCF機上で。指揮下のチーム各員にこれよりの作戦行動の開始の旨を、サミュエルは淡々とした色で告げた。

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