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チャプター27:「発動」

 ――艦艇隊の咆哮を合図として始まった、上陸及び降下作戦により。VAC AFがこの異界の地に足掛かりを確保してから、二日が経過。


 初日に沿岸海上を覆っていた霧は去って晴れ、快晴に恵まれた空の元。

 上陸地点となった沿岸海上の広範囲には、「向こうの元世界」より続々転移してきた船舶が集結。

 輸送船や事前集積船に、浮きドック艦。台船に、艀までもが集まり。それらによって簡易的だが巨大な人口港が、その構築が着々と進められている。


 そして、7割程まで進捗は進むが、まだ構築途中のそれを。しかし使用できる範囲で運用を開始し。

 主導を前線部隊から後方兵站部署に移管しての、部隊や車両に装備、物資機材の大々的な陸揚げが始まっていた。


 そんな巨大な光景を眼下に見ながら、一機の固定翼プロペラ推進の軽量観測機が、海岸上空を内陸へと飛んでいる。


 VAC AFによる態勢構築の手は内陸部にも及び。

 海岸から少し内陸側に行った所に確認、掌握された台地を利用して。建設が始められていたのは――長大な滑走路、及びそれに伴う飛行場施設。


 VAC AF 航空隊。

 AF の航空戦力部門、言ってしまえば空軍に値するそれの。各種航空機をこの異界で運用するためのものだ。


 飛行場施設は構築途中ではあるが。すでに上空からでも多数の機体が駐機し、運用が開始されている様子が確認できる。


 その飛行場滑走路へ、観測機は帰着するべくアプローチコースに入る様子を見せた。



「――リーシェさん、ここまで待たせてしまった」


 飛行場施設の一角。固定翼機用の長大な滑走路に併設される、ヘリコプター駐機エリアにて。

 向こうの滑走路に、観測機がアプローチから帰着着陸する様子を傍目に見ながらも。

 他ならぬジョンソンと、そしてリーシェが、真剣な面持ちで相対する様子があった。


 ジョンソンは、変わらぬAFの作戦行動服姿。


 そしてリーシェにあっては、主たる服装こそ彼の普段着である民族衣装だが。

 同時にその上半身は民族衣装の上から、まったく不釣り合いな、AFが用いる防弾ベストを羽織っている。


 リーシェは彼からすれば、異質の最たる飛行場の様子や。今の自身のその不釣り合いな姿から、少し落ち着かない様子ながらも。

 しかし今はそれ以上に、別の重要な要因でその美麗な顔を固くしている。


「君からの申し入れに答え。これより我々は、君の友人たちを救うための作戦を開始させてもらう」

「う、うんっ」


 そしてそんな姿のリーシェに、ジョンソンは改まった様子で述べて伝えた。



 話の経緯を戻せば。リーシェがこの異界よりジョンソン等の世界に辿り着いたのは、「助け」を求めてのもの。


 あの後に明かされたのは。リーシェはこの異界にて、魔帝軍に逆らう者たちが集う「同盟」に加担するものであり。

 その同盟の主力の一つは、「塔城」と呼ばれる彼らの一拠点である城塞にて。魔帝軍に包囲されて窮地に陥ったとのこと。

 リーシェはそこから逃され、僅かな「助け」の可能性に駆けて。異世界――すなわちジョンソン等の世界へと、「飛転」したのだという。


 そしてAFは。そのリーシェから求められた助けを、受け取り担うことを決定。


 そのための準備は、この地への進出拠点の確保と並行して、急ピッチで進められており。

 それが万事整い。これより、ジョンソン等はその「塔城」を救うための作戦に望むのだ。



「詳細を言うと、初動部隊はすでに発し、すでに作戦自体は開始されている」


 今の伝えた言葉からそしてしかし、さらにリーシェにそう伝えるジョンソン。

 言葉通り、作戦はすでに発動され。

 初動先発を担う飛行隊はすでに飛行場基地を発っており。ジョンソン等は増加部隊としてそれを追いかける形を取る事となっている。


「たっての希望という事で、君には増加部隊への同行が認められたが――自分等に同行し、決して矢面に出ないことが条件となる。これは徹底してくれ」


 そして、念を押すように。厳正な口調でリーシェに告げるジョンソン。


 この作戦に、仲間たちを救うためのものに。リーシェは強く同行を願い入れた。

 AFは安全の観点から後方に留まるよう説得したが、リーシェは頑なに譲らず。結果としてAFは、リーシェに安全上の各種約束を徹底してもらう事を条件に、後続増加部隊への同行を許可。

 リーシェの、その民族衣装に似合わぬ防弾ベストを羽織る姿も。そのことが理由であった。


「うん……」


 それにしかし、己がその「同盟」の一員として担う責任感や。仲間を案じてのもどかしい思いもあるのだろう。

 納得はできていない様子の鈍い声を、隠さず漏らすリーシェ。


「君の友人たちの危機と聞いている、居ても立ってもいられない気持ちなのは分かっている。しかし君の安全と、作戦を円滑に進めるための必要事項だ。協力願いたい」


 そのリーシェの心情を察し、気持ちは理解している旨を伝えつつ。しかし必要な事と願い入れる言葉を、ジョンソンは訴える。


「大丈夫……大事な事と理解してる。貴殿等に迷惑はかけられない」


 そして、仲間の救出を成すためのほぼ全てを、AFに依存している現状。これ以上の我儘はAFの負担になる事だと、リーシェも理解しているのだろう

 リーシェは自分に言い聞かせる意味も含めてだろう、そんな言葉で承諾を返した。


「理解に感謝する。君の友人を救う事に、尽力しよう」


 リーシェの抱える数々の思いをまた察し。ジョンソンは強力事項の承諾に感謝すると同時に。自らが任された事項に尽力する旨を、確かな言葉で伝える。


「――各員、搭乗ッ」


 そして、それを区切りとして。

 ジョンソンは身を翻すように振り向き。コースやエドアンズに他、やり取りが終わるのを見守り待っていた、指揮官クラスや同伴の隊員に声を張り上げ指示。


 各々は気合を入れる様子を見せたり。または「やれやれ」と変わらぬ倦怠の色を見せながらも。

 指示に答え。向こうのヘリコプター駐機エリアで、すでにローターブレードをけたたましく回して待機している、ヘリコプターの各機に乗り込むべく向かって行く。


「リーシェさん、行くぞ」

「うんっ」


 そしてジョンソンに促され、先導され。

 ジョンソンとリーシェも自身の乗り込むべく、グレート・ホエール機に向かい始める。


 そんなジョンソン等に各員の真上、飛行場上空を。

 機影、二機一組のプロペラ推進の大型戦闘機が。やはりこれよりの作戦に参加するものであるそれが、けたたましい飛行音を立てて飛び抜けた。

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