チャプター23:「楽曲」
視点はまた、ヘリコプターの編隊。その内のジョンソンも搭乗する指揮官機の内へ。
「――各機、進入隊形を取れッ」
「――ワぁォ、一面めっちゃ緑だ。こんな得体の知れねェ世界くんだりまで、ちっとは来た甲斐があったかッ?」
開け放ったカーゴドアより身を乗り出しつつ、機内や無線に指示の声を張り上げているジョンソン。
傍らにはその巨体の半身を同じく乗り出し。いつものように余計な皮肉の言葉を吐いているコース。
「――」
そしてその背後では、同乗するコマンドー隊員のエドアンズが。シートに座し、自身の狙撃銃を控える。
そしてだ。エドアンズの付近を発信源に、ヘリコプターの飛行音に混じって、何か音楽が聞こえている。
その発信源は、エドアンズがポケットに忍ばせる私物の携帯音楽再生機。
セットされているログテープに収録され、そして最大音量で流れ始めているそれは、本日のゴキゲンなナンバー。
――人は去っては、また現れ訪れる
――何故か?それは肌、人種の違いのせいだよ。
――どれだけ走ろうとも、逃げ隠れることはできない。
そんな内容を謳う歌詞。
それを紡ぐ歌声が、音楽に乗って流れている。
そんな音楽が流れ伝わるGW機機内より、側方向こうの宙空に見えるは。
武装型の汎用ヘリコプター、ジェイコブズ(JY)機の数機が。射線を描くようにグループで隊形を組む姿。
ヘリコプターのグループはそれだけに限定されず。
同じくJY機の2~3機で成るグループが複数。
小型の偵察観測・軽戦闘用のヘリコプター、チャイルド・フレンド(CF)機が。やはり数機でグループを成した隊形がまたいくつか。
そしてそれ等を追いかけるように、大雑把に隊形を組むGW機に他がまた数機。
それぞれのグループは位置に高度を違え適度に散会。
先行するいくつかの小グループは、これよりの「攻撃」に際しての進入行動のために高度を下げ始め。緑に覆われる大地に沿って、掠めるかのように飛んでいる。
このヘリコプター編隊は、ジョンソンが指揮を預かる大隊戦闘群の、その先遣の一部を乗せるもの。
少し前に、艦艇隊のコマンド巡洋艦フィクスや、他揚陸補助艦艇からそれぞれ発進し。そして今に異世界の大地の上を、覆い騒がせていた。
《JY7、JY8にJY9。所定通りラムダラインから進入の件、了解どうぞ》
《CF13、14は左からカバーしろ。地上からの投擲を油断するな》
通信上には各機よりの調整の音声が上がり、交わっている。
そんな通信上のやり取りや。まるで現状状況のBGMを務めるかのように流れる音楽を聴きつつ。
ジョンソンの隣で。ドアガンの汎用機関銃に着く射手が、そのスライドを引いて射撃準備を整える。
編隊は間もなく、進路上にあった小さな森のその真上を通り抜け。
森を越えた向こうに小さな集落を。そしてその集落を中心に逗留する、魔帝軍の陣地に部隊を視認。
併せて言えば、これは前もって飛ばした偵察観測機が存在を知らせて来たもの。
編隊の各機各グループは、その集落及び敵陣地に向かって。それぞれの割り当てられた所定の進入行動へと、直進ないし進路変更を伴い掛かっていく。
――世界は混乱している。
GW指揮官機の機内に響く音楽が、サビに突入して一番も盛り上がりを演出したのはそのタイミング。
――そして同時の瞬間。
編隊の正面に先行位置していた3機のJY機グループが。
それぞれのサブシステム(武装システム)に備えるロケットポッドより。収めるロケット弾を一斉に、白煙を上げ立てて撃ちだした。
撃ち放たれた多数発のロケット弾は。各機が目標として照準に捉えていた、集落周りの敵部隊や陣地に撃ち込まれ、直撃。
爆炎が上がり、魔帝軍のそれらを巻き上げ破壊。
さらに今の初撃グループから一拍遅れ続くように、別方向から別のJY機の一グループが進入。
またも多数発のロケット弾を地上へ叩き込み。先グループからの初撃を逃れた魔帝軍部隊に陣地を、しかし次には後を追わせるように吹き飛ばした。
第一撃の急襲。敵からすれば奇襲襲来が成され。
眼下では集落周りの各所では、敵が混乱に陥る姿様子が見える。
それを眼下に見ながら編隊各機は、第一撃の完了に伴う一旦の離脱から、しかし反転。
同時に散会し、各機ごとの自由攻撃を開始した。
《集落には民間人も居る、誤射に気を付けろッ》
《外周の敵部隊を優先しろ》
一機のJY機が再進入から、再びロケット弾を地上の魔帝軍部隊に叩き込みながら。
同時のタイミングで通信上には、警告を促す音声や会話が上る。
さらに散会から自由行動に移行した各機が。集落周り、魔帝軍の真上頭上を脅かすように掠め飛び交い始め。
同時に眼下魔帝軍へ、機関銃の掃射などによる攻撃を浴びせ始める。
《ヨォ見ろッ、デッカイ恐竜みたいなのが居るッ》
《ッォ!?――レーザーを吐き上げて来たッ。十分警戒しろッ!》
眼下に見える、大型陸竜などの幻想の存在に。誰かが驚きの声を上げたのも束の間。
次には魔帝軍部隊も混乱に陥りながらも抵抗を見せ。
地上より漆黒の一閃――闇のレーザーが撃ち上がって来て、JY機の内の一機を危うく掠めた。
先日にナイスシーズの町でも相手取った、魔帝軍が『闇魔獣』と呼称する恐竜型生物。それが吐き上げて来た脅威の一閃。
幸い先日に相手取ったものより小型なのか、その闇のレーザーの大きさに威力にあっては先日のものを下回ったが。
しかし油断ならぬものに変わりは無い。さらにそれに限定されず、地上からは散発的だが投擲に『魔法』の攻撃の類が上る。
《気を付けろ、もし損傷を受けた場合はためらわず離脱せよ》
《良く目を凝らせ、敵の前動作を見逃すなッ》
しかし各機は驚きつつも、それに臆する事などはなく。警告の言葉を通信上に上げつつも。
巧みに集落周りの上空を飛び交い飛び抜け。そして眼下に苛烈な火力投射を撃ち込み注ぎ続ける。
《脅威目標に進入するぞ、どこかカバーを》
《JY12、お前の横だシンパイすんなッ》
《JY3、接敵ッ》
地上に、上空までもが混雑する状況の中で。しかし各機は的確に飛行、作戦行動に当たり。
間もなく、地上から脅威の闇のレーザーを吐いて撃ち上げていた闇魔獣は。
しかしその位置に行動を特定され。そちらは混乱下にあるが故の隙を突かれ。
側方頭上より出現して進入してきた一機のJY機が、そこを突いてロケット弾を投射。
叩き込まれたそれの生み出す爆炎に弾き千切られ、闇魔獣はその周囲の魔帝軍部隊と併せて消し飛んだ。
《集落の東側はおおよそクリア》
《効果地点を確保。該当隊は進入降下の準備願う――》
進入から作戦展開開始より、さほどの時間もかからずに。周辺に逗留していた魔帝軍部隊の多くは無力化が確認され。
編隊、及び登場の大隊戦闘群は。さらに続くフェーズに移り取り掛かる――




