チャプター16:「判明」
今、次話で二回ほど状況説明回です。
未知の存在、未知の「敵」の襲撃を受けたナイスシーズの街は。
しかし駆け付けたジョンソン率いる大隊に、そしてさらに到着した各増援によって奪還。安全化を果たした。
しかし街の受けた傷は軽くは無く。
現在も駆け付けた増援各隊によって、救難捜索活動は継続している。
場所、視点は街の役所施設へ。
生き残り、難を逃れた住民の避難所として使われていたその場は。流れで救護所兼、AFの野戦指揮所へと拡大。
現在はジョンソン率いる第121大隊の上級部隊である、第29複合隊(旅団戦闘団に類する)の指揮所が置かれ。
街への各種救難支援。及び、未知の敵の「調査」の陣頭指揮が行われている最中であった。
「――にわかには信じがたい話だな」
役所のメイン空間。その一角に設け置かれた指揮所の卓の前に構え、端的に零したのは一人の50代程の男性。
現地入りした第29複合隊の長を務める、グラウレーという大佐だ。
ジョンソンの指揮系統からの直接の上官でもある。
現状、掌握できている限りについて報告を受けたグラウレーは。
おぼろげに理解はしつつも、しかし眉唾とも言える内容の数々に。思わずそんな言葉を零したのだ。
「我々には未知の存在の数々。その全てはこことは違う地、世界からの存在――確かなのですね、リーシェさん?」
そしてグラウレーは尋ねる声と合わせて。そして同時にその場に同席していたジョンソン、エドアンズにコース等の面々もまた。
一様にその場にまた、重要参考人としてその場に同席する一人の少年。リーシェに視線を向けた。
「!、あぁ、うん……っ」
卓に同席していたそのリーシェはと言えば。
状況が落ち着き、改めて彼にとっては見慣れぬ数々の光景に持っていかれていた意識視線を。掛けられた言葉によって戻し。
「僕は、そして魔帝軍も。こことは違う世界……『異世界』って言ったほうがいいかな?そこから来た者だよ」
そして、そう伝える言葉を紡いだ。
リーシェの言葉、説明により。ジョンソン等とリーシェのファーストコンタクトの際には行えなかった、詳細の情報交換や確認がようやく行われ。
その上で改めて明確となった事実。
リーシェは。そしてナイスシーズの街を襲った『グテュスリオ魔帝国』という国家、及び軍は。
この世界、宇宙とは異なる「別の世界」よりの者だと言うのだ。
「少佐ぁ、少佐の爺様の国でそんな文化が溢れてませんでしたかぁッ?」
「詳しくは無い、聞かれても知らん」
詳細を耳にした所でコースが、皮肉気な声色で無駄口を挟んでジョンソンへ向けるが。ジョンソンはそれにシンプルに返す。
「お伺いした所を、改めて整理させていただきます――」
そのジョンソンやコースのやり取りを横に聞きつつ、しかし咎めることも拾うこともせず。
グラウレーは続く各種確認の言葉を、またリーシェに紡ぎ始めた。
リーシェからVAC AFにもたらされた各種情報。
現れた未知の敵は、『グテュスリオ魔帝国』という異なる世界に存在する大帝国、及びその軍であること。
魔帝国及び軍は、向こうの異世界で領土的野心から大規模な侵略行動を行っており。その途中でこちらの世界への「接続」の術を発見、侵略のその手を伸ばして来たとのこと。
そしてリーシェは。向こうの世界でその魔帝国の脅威に晒されている、あるコミュニティの者であり。
危機にあるそのコミュニティに助けをもたらすべく、僅かな可能性に賭け。魔帝国とはまた別の術で「接続」を開き、この世界に舞い降りた。
との事であった。
「――担当直入に言う。僕は助けとなる存在を探してこの地に来た」
一連の情報の再確認が交わされた後、リーシェは自身に与えられた『役目』を改めて言葉にする。
「アンタ等――いや、貴殿等は大きな力を持つ存在と見受ける。今できる謝礼は限られるけど、いくらかは献上できる物がある」
そして次には、先程に見せたような小生意気な少年の様相を潜め。グラウレーやジョンソン等に向けて居住まいを改め直し。
「どうかお願い、我々にお力添えをいただきたい――」
真剣な色で、そう願い入れる言葉を紡いだ。
「――上の判断になります、絶対のお約束はできませんが――我々としてもその魔帝軍は脅威、放って置くことはできません。その上で、我々も協力者を欲している」
「!」
リーシェの願い入れる言葉に、グラウレーが紡ぎ返したのは。断りを前に添えての、しかし魔帝軍を脅威と見る立場は同じであることを示す言葉。
「私からも上に掛け合います。互いの利となり、そしてリーシェさんのお力になれるよう、できる限りを行いましょう」
そして、少なくともグラウレーの立場で約束できることを。確かな言葉でリーシェに告げた。
「ぁ、ありがとう……!あっ、いえ……閣下、感謝いたします!」
それに思わずの言葉をリーシェは零し。しかし次にはまた言葉を改め、畏まる色でグラウレーに、そしてその場に皆にそう礼の言葉を紡いだ。
「そこまで畏まらないでください、我々は強力し合う者同士、あくまで対等と考えています。そしてですので、謝礼とおっしゃられましたが、我々に対してそれも不要です」
「ぇ!……でもさすがにそんな……っ」
畏まるリーシェに、グラウレーはその言葉を少し柔らかくして。
気遣う言葉を、併せて互いの立場が平等であると考えるVAC側の考えを伝える。
方やリーシェは、流石にそれは想定していなかったのか。逆に少し戸惑う色を、その端麗な顔を困った様子に変えて垣間見せる。
「素直に甘えておけ。VACは巨大だ、窮地にある少年個人から物品を巻き上げるような事はしない」
それに言葉を挟み。言い聞かせるように促し、助け舟を出したのはジョンソン。
その言葉の通り、巨大国家VACは。助けを求めて来た少年一人から、物品金品を期待するような真似をする端した存在では無かった。
「んでェ?そいつはいいとして、肝心のその異世界とやらにはどーやって行くんです?奴さんズは本軍から尻尾切りされたんでしょう?」
そこへ。気になる要素から焦れていたのか、隠さぬトゲトゲした口調でそんな言葉を挟んだのはスーパー・ヒューマンのコース。
その言葉の通り。ごく少数確保拘束できた魔帝軍の兵から、彼らが異世界側の本軍から『接続』を切られ、見捨てられたとの事実が確認できており。
少なくとも魔帝軍を直接追いかけることは、不可能となっていた。
「道筋に関しては大丈夫。さっきも言ったように僕は御子、世界の導き手。向こうの世界へは、『古代の神殿』の導を探り辿って案内できる」
しかしそれにあってはリーシェが、そんな言葉を並べて問題ない旨をすぐに示した。
どうにもリーシェは向こうの世界とこちらの世界、二つの世界を繋ぐ「道筋」を辿ることができる『導き手』、一種のパスファインダーの役目を司るらしい。
「だけど……一つ問題が……」
しかしリーシェは続けて顔色を少し苦くし、一つの問題を示した。
魔帝軍がこちらの世界への『接続』を成し得、そして大軍を送り込めたのは。
確保した『古代の遺跡』、『神殿』の宿す大きな力を利用してのものであると言うこと。
だが、こちらの世界にはそのような施設は存在しない。
そしてリーシェ個人の『力』によって、向こうの世界へと『運ぶ』ことができるのは。『飛空船』、リーシェが乗って来た「空飛ぶ船」一隻程度が限界であると言うのだ。
「君等のような大軍だと、僕一人の力では到底運べない……――」
その問題点を紡ぎを示し。リーシェからは、まず選出した少数人数だけを導き運ぶことが提案されたのだが。
「いや――ルート、接続点が割り出せるなら。移送にあっては「こちらの技術」でなんとかなるかもしれない」
「え?」
しかし。リーシェの示したその懸念事項に、そんな言葉を割り返したのはジョンソン。
彼には――この世界には。その問題点を補いうる、ある術――技術があった。




