チャプター14:「撃破」
A101重戦車 ドーンベヒーモスの唸らせたのは、備えるその120mm戦車砲による砲撃。
「ッ」
「のォッ」
「うぁ……!?」
その撃ち放たれた一撃は、劈き空気を切り裂くまでの様相で。ジョンソン等の頭上を一瞬で飛び抜け。
その向こう、ロータリーの中心で。リーシェの術により力を奪われながらも踏みとどまっていた闇魔獣を。
しかし砲弾弾頭のとてつもない打撃で叩き、そして爆炎で包み込んだ。
「な……!?」
それにまた、驚きの声を上げるはリーシェ。
しかし一方のジョンソン等は、刺すまでの眼差しで向こうの観察を続け。砲撃の着弾が成した爆炎が晴れるのを待つ。
そして程なく晴れる爆炎。
その内より現れたのは。
依然として絶えず、踏ん張り立ちそこにある闇魔獣の――しかし、その前足片側を、根元の胴の一部ごと欠損した姿であった。
「有効打認ムも、なお健在ッ!」
見えたそれを、近場の隊員がすかさず口にして報告する。
「どんだけ固ェんだよッ!」
そして、胴体の欠損こそ見せれども、未だ倒れず踏ん張る様を見せる闇魔獣に。
忌々し気に悪態を吐くのはコース。
向こうの闇魔獣が、聞いた者の身の毛をよだたせるまでの叫び声を上げたのは直後だ。
それは損傷を受けての絶叫か、己を傷つけた存在に向けての怒りか。もしくはその両方か。
「っ……!まずいっ!」
それにリーシェが少し臆したのも束の間。次の闇魔獣の動きを察し、声を上げる。
まるでそれに答えるように闇魔獣は。叫びにより掻っ開いた顎の喉奥に、再び漆黒の塊を生み出し見せ。
次には漆黒の閃光を。反対向こうのA101重戦車に向けて、怒りに任せる姿で撃ち放った。
「っぁ……!」
それは驚いたリーシェや、ジョンソン等の頭上をまた飛び越え。
次にはその破壊力を持って、A101重戦車を飲み込み破壊すると思われた。
少なくともリーシェと、闇魔獣自身にあってはその未来を逃れられぬものと思い描いた。
――だが。
直後瞬間、響き届いたのは。
何か異様な、形容し難い衝撃音。
「……え?」
そして振り向いていたリーシェが向こう見たのは、また別の驚愕の光景。
放たれた漆黒の光線が、しかし。
A101重戦車に届き叩きつけられる直前の距離で――その軌道を「捻じ曲げられて」、明後日に逸らされる光景であった。
「「機構」付きを寄越したか。大佐は慎重を期したな」
方や、ジョンソンはと言えば。その光景事実にしかし驚くことなどはせず、そんな言葉だけを零す。
A101重戦車の防護力は、無論その重装甲により体現される堅牢さが目玉であるが。
しかし、それだけに非ず。
「重力・光学複合反射」機構。
特殊な効果によるシールドを張って戦車を覆い、主としてエネルギー系の攻撃を防ぎ、跳ね退けるもの。
経緯を明かせば。
過去にVACが衝突した、高度な技術を携える科学技術者の集団から。
その苛烈な戦いの果てに、押収接収した技術。
最近ようやくその実用化・量産体制の構築にこじつけ。AFの各隊に少しずつ配備が始まっている技術装備だ。
そんな経緯からのそれが。今に闇魔獣の恐るべき破壊を成す光線から、しかしそれを退けてA101重戦車を守ったのだ。
《――展開中の隊、そちらは121大隊か?こちらは複合隊戦車大隊、ヘヴィ42》
「わっ……!」
直後に、ジョンソンの身に着ける簡易無線に響き届いたのは。
そのA101からであろう、彼我を訪ねる通信だ。
「肯定、こちらは121大隊、大隊長のナガイ少佐。そちらは損害無いか?敵性脅威の生物は、損傷確認するも未だ行動中。さらなる投射を要請する」
隣でそれに驚くリーシェは置いておいて、
ジョンソンは通信に答え。
彼我の回答。向こうの損害の有無。闇魔獣へのトドメを願いたい旨。その各要項を捲し立てて返す。
「了解、こちらは損害無し。これより接近しさらに投射する。気を抜くと引っくり返るぞ、各員備えられたい」
それにA101側の乗員からは、それぞれにまた簡単に端的に答える通信が返り。
その間に同時進行で、今に伝えられたように。A101はそのキャタピラの擦れる音を不気味に響かせ、進み上げて来て。
ついにはジョンソン等の近く真後ろに至り、配置。
直後、再びの咆哮が。その備える120mm砲より唸った。
「ガマンしろ」
「ひわ……っ!?」
咄嗟にリーシェの隣に居たフレキシオが、リーシェの耳を代わりに塞ぎ。
しかしそれでも感じる衝撃に轟音に、リーシェは驚く声をまた上げる。
それをよそに、二射目により撃ち込まれた砲弾弾頭は。今度は闇魔竜のどてっ腹に直撃。
そして再びその巨体を爆炎で包む。
「――」
そしてまた、尖る眼で経過を観察するジョンソンの視線の向こうで。煙はまた風に流され晴れる。
「――ダウンだ」
そして、見えたものに零したジョンソン。
向こうにあったのは、闇魔獣の未だ立つ姿。
――否。
闇魔獣はその巨体のどてっ腹に、大穴を開けて肉をこそぎ。赤黒く焼け焦げた、痛ましい損傷面を見せており。
そして次にはついにその脚を折り、地面へと大きな音を立てて崩れ沈んだ。
「うそ……」
驚き。いや、理解の追い付かぬ様子で零したのはリーシェ。
「脅威ダウン――残敵の排除に掛かる、可能な隊は前へェッ!」
そしてしかし、その隣でジョンソンは脅威の確かな沈黙を確認して人声を零し。
そして、続けて指示の声を張り上げ、指揮下の各隊に命じ。
各隊・班の各員はそれに呼応。
畳み掛け、ロータリー空間に周辺施設の全てを取り戻し。掌握化へと収めるべく。
到着したA101重戦車の援護の元。突撃、押し上げを開始した。




