チャプター13:「現着」
「――火力を絶やすなァッ!」
場所はジョンソン等の方へと戻る。
ジョンソンが危険を顧みずに身を上げ、突き出した大口径リボルバーを撃ち放つ姿を見せ。
「ヤロァッ」
その横隣りではコースが、バリケードに据え置いて構えた20mm機関砲を撃ち唸らせ。
他にも周囲に展開した各員が、あらゆる火器を唸らせ。その火力を向こうへ注いでいる。
火力火線が集まり叩き込まれるは、ロータリーの中心で暴れ回る恐竜型生物。
次にはその首がまた、薙ぐように一方向へ向けられ。その掻っ開かれた顎の喉奥に『闇の塊』が宿り、それは直後に『漆黒の閃光』となって撃ち放たれる。
そしてその延長線に遮蔽展開していた、班の各員の頭上を飛び越え。ロータリーの周辺一角にあったビル建造物を直撃。
その下階構造をこそぐように消滅させ。その影響で、基盤の支えを無くしたビル建造物が倒壊。
崩れるに伴い、大小の瓦礫が地上に降り注ぎ。その直下に遮蔽配置していた班の各員が、慌て飛び出し退避する姿を見せた。
「ッ」
その向こうに見えた、班各員のギリギリの退避の姿に肝を冷やしつつ。
しかし次には恐竜型生物の方に視線を戻すジョンソン。
「損傷見えるも、決定打に至らずッ!」
丁度そこで、誰か一名の隊員からの張り上げ伝える声が届く。
届いた言葉にある通り。恐竜型生物へ向けられ注がれるの各火力は、その硬い皮膚を着実に削いではいた。
しかし現時点をもってのそれは、見える限り軽傷、小破の域を出ず。恐竜型生物は、今も激しく暴れ動き回っている。
生き物として、あまりに堅牢と見える恐竜型生物の体。
合わせて。ジョンソン率いる一個中隊は、異常事態への早急な対応の必要から、ヘリボーンによる急行展開を急いだため。
現在手元にある強力な重火力、大口径火器は限定されており。それがより、状況を面倒にしていた。
「あァ、メンドウ臭ェッ!」
コースはその巨体と腕力で保持する20mm機関砲を、我武者羅のそれで撃ち注ぎながらも。恐竜型生物の堅牢さに、悪態を張り上げる。
「軽無反動砲を左に持っていけッ!」
「2班、両翼に配置を変えろッ」
方や、ジョンソン等の背後近くでは。射角確保や別隊援護のために配置を変える隊員等が、今も急いて行き交い、騒々しく通過して行く。
「通信ッ、増援の報は入っているかッ?」
そんな様子に声を各方に見聞きしつつも、ジョンソンは一旦遮蔽に身を沈めカバー。
片手間に器用に。スピードローダーにて、自身の扱う大口径リボルバーに再装填を行いつつも。
また隣の近くに居る、遠距離無線の通信手に尋ねる声を上げ向ける。
「現在、郊外街道より街に進入中との知らせですッ。間もなく到着合流とのことッ」
それに通信手から返されたのは、そんな旨。
地上から別途に発したAF隊が、どうやらすでにナイスシーズの街の近くまで来ているらしい。
「再装てェンッ!――その「間もなく」経つ前に、消し飛んでるかもしれねェぞッ」
しかし、ちょうど機関砲の弾切れから弾倉の再装填に入ったコースが。同時に聞き留めた今の旨に、また悪態を上げる。
その言葉にあるように。現状はいつ、恐竜型生物の漆黒の巨大光線の直撃を受け、消し飛んでしまっても何の不思議も無い状況だ。
恐竜型生物の狙いはどうにも大雑把で精密では無い様で。今の所各隊は、紙一重で致命的な損害を回避できていたが。
それがいつまでも続く保証はどこにも無い。
「時間を稼ぎたい所だッ」
その現状から。険しい色を顔に見せつつも、努めて落ち着きを保ち。
増援が到着するまでの少しの時間を稼ぐための、策を考え巡らせるジョンソン。
「――っ!」
「ッ?」
しかし、それを阻むように。ジョンソンの背後から隣懐に、小柄な人影が飛びこんで来たのは瞬間。
「やっぱり……『闇魔獣』!それも上位の竜型……魔帝軍は、ここまでの『禁忌』に踏み込んだのか……っ!」
それは他ならぬリーシェだった。
彼は驚く周囲をよそに、向こうで暴れる恐竜型生物――ここで改め、『闇魔獣』と呼ばれるそれを見止め。
苦く険しい色で声を零す。
「ぬォイッ、ガキンチョッ!すっこんでろっ言ったろがッ!」
そんなリーシェに、真っ先に乱暴な遠慮の無い声を飛ばしたのはコース。
そう訴えると同時に。しかしコースはSH特有のその腕っぷしで巨大な弾倉を叩き込んで、再装填を終えた20mm機関砲を突き出し構え直し。
再び機関砲火をばら撒き始める。
「今度こそそうはいかないよっ!あれを……『闇魔獣』を鎮め倒すことこそ、僕の使命なんだからっ!」
しかし、それにリーシェがまた荒げ返したのは。そんな訴える言葉。
「鎮める?君は何か、あれの無力化の術を持つのか?」
それの言葉を聞き、含まれる所を察し。尋ねる言葉を返したのはジョンソン。
「モチロンっ。言ったでしょ?僕は『シャリェンの御子』!」
それに、当然と示す言葉を返すと。
次にはリーシェは、しゃがんでいた姿勢を解いて立ち上がると同時に。その「動き」を見せた。
リーシェは片腕を、その手の平を。向こうの『闇魔獣』に突き出し向けて、もう片方の手は己の胸元で添え。
そしてその口より零し、紡ぎ始めたのは。何らかの『呪文』、『詠唱』だ。
「――……闇の世の理……汝、この世界に在るべきにあらず……鎮まり給え……」
その口より、男の子としては大分高い、麗しいまでの声色で紡がれるは。何か訴え告げるような、『詠唱呪文』の言葉。
そしてそれに伴うように発生したのは、そのリーシェを取り巻くようにしての、淡く薄い緑色の発光現象だ。
「ッ、おいッ」
「あんッ?」
近場で、それを見つつもサブマシンガンを牽制のためにばら撒いていたフレキシオが。しかし直後には向こうの光景の「変化」に気づき、示す声を上げ。
コースは訝しむ声でその示された方向を追い、そして同じくの「それ」を目撃する。
向こうで暴れる巨大な竜型『闇魔獣』を、まるで包み捕まえるように。無数の『光の文字』で描かれる、いくつもの文字列が。リング状を形成して出現していたのだ。
それは驚くべき、『幻想の世界』の光景。
「憎み、仇なすならば……沈み、消え去りたまえ……っ!!」
そして次には、止めを宣告するように。
リーシェは詠唱を締めくくる一節を、高らかな声を発し上げ。
それを合図とするように、無数の文字列のリングは、急速に闇魔獣の巨体へと縮み集まり収束。
そして直後。圧縮されたそれがその反動で、膨張起爆するかのように。
光の爆発が巻き起こり、闇魔獣を包み込んだ――
「ッォ」
「ヌぉァッ!?」
巻き起こった眩く強烈なそれに。ジョンソンやコース、周囲の各員は身構え。手や腕で自身の目を庇い守りつつも、状況観測を続ける。
程なくして、光の爆発は収まり。強烈な光に包まれ阻まれていた向こうの視界が回復。
ロータリー中心の光景が戻る。
「ッ」
「!」
そしてジョンソンやリーシェは、それぞれの意識にて目を見開く。
向こう、ロータリーの中心に現れていたのは、引き続きの竜型闇魔獣の巨体。
それは無傷の様子――否。
闇魔獣に見えるは、凶悪そうに尖る脚を、しかし折り崩し駆け。必死の様相がありありと分かる様相で、「踏みとどまっている」状態。
目に見えての、「力」を奪われた有様であった。
「あれは、力を?」
「あーんッ、マイナス効果をかましたってコトかぁッ?」
その光景から。今にリーシェにより発動された現象の、形態の実態を理解し。それぞれの解釈で言葉を零すジョンソンやコース。
「っ!くぅ……完全にはいかなかった……あと一手なのに、なんて強靭なんだ……!」
方や、その御業を成したリーシェからは。反して何か大変に苦い色での言葉が上がる。
リーシェ自身にとっては、どうやら闇魔竜の完全な無力化を狙っての術であったらしく。それがしかし完璧にはいかなかった事を、悔い漏らす声だ。
「もう一手……!」
そして次なる手が必要と。しかし今の『発動』の影響か、目に見えて消耗見えるその身を。鞭打ち奮わせ動こうとするリーシェ。
「――戦車大隊ちゃァーくッ!!」
しかし、そのリーシェの言葉に動きを阻み止めるように。
背後近くから、AF隊員の張り上げ伝える声が届いたのは瞬間。
「!?」
「良いタイミングで到着したな」
それに、リーシェは驚き目を剥き。
一方その隣でジョンソンは、変わらぬ淡々とした言葉を。しかしそれに少し不敵な色を含めて零し。
同時に背後の向こうを振り向く。
ロータリー空間から、AF側の背後に伸びる街のメイン街路。
そこに現れ、街路上をこちらに向かって。重鈍だが堂々としたまでの様相で接近する、堅牢な巨体の姿が目に映る。
それこそ、AFの保有する機甲戦力――A101重戦車 〝ドーンベヒーモス〟。
今程に通信にて伝えられた、そしてついに到着した「増援戦力」の、その一つ。
そして瞬間。そのドーンベヒーモスの備える主砲が――咆哮を唸らせた。




