チャプター11:「巨大」
「ま、魔装騎士殿ぉっ!?」
「ま、魔装騎士殿がぁ……っ!?」
頼りの魔装騎士の、しかし一瞬の出来事の後に沈み果てた姿。
それを前に動揺、いや最早パニックに陥る従兵たち。
「ぎゃっ!?」
「ぎゅえっ!?」
しかし、それも次には強制的に収まりを迎える。
パニックに陥る従兵たちにも差別なく。遠方向こうより、銃火が注ぎ始める。
向こうのビル建造物からの、機関銃班の火力火線に、狙撃。
さらに正面、または周りの向こうで。魔装騎士たちを相手取っていたAF中隊主力の各員の射撃攻撃だ。
「敵の撃ち手だぁっ!」
「魔装騎士殿が、一撃で倒されてしまった……っ!?」
「そんな……ぎゃ!?」
従兵たちに限定されず、周り近くで戦っていた魔帝軍の兵たちもまた。
手練れである魔装騎士の討たれた事実に狼狽し。その影響で浮足立ち、隙を晒した所を、また削り崩されるように銃火に倒されていく。
「えぇい、どけっ!人間ども!」
「糞、どうなってやがるっ!?」
そんな所へ、狼狽から瓦解しつつある兵たちを。
煩わしさを露わに退けながら、奥から繰り出て来たのは巨体の存在たち。魔物であるオーク。
魔帝国との利害関係から一種の徴集呼集に応じ、魔帝軍と行動を共にするオーク族たちは。しかし互いに、その関係性は良いとは言えず。
普段、自分たちを侮蔑の目で見る魔帝軍の兵たちの、今の体たらくを煩わしく思い。
任せておけぬと繰り出て来たのだ。
しかし同時に。得体の知れぬ敵の存在に攻撃の数々に、困惑を抱いているのはオークたちも同じであった。
「わかんねぇが、とにかく殴り込めっ!間合いを詰めりゃ、妙な術も迂闊に撃てねぇはずだ!そこを崩せ、行くぞ!」
そんな困惑を抱きつつも。肉薄して白兵戦に持ち込めば、敵の攻撃が制限されるであろうことを。合わせて自分たちの自慢の体格をもって、押し崩せる事を期待し。
頭目格のようなオークが発し伝え、併せて身振り手振りで訴える。
「グおぉぉぉっ!」
「うらぁぁぁっ!」
そして雑な隊伍を組み、次にはオークたちは向こう正面の敵。AFの一個小隊が作る展開隊形に向けて。
雄叫びで唸り上げ、肉薄突撃を仕掛けるべく走り始めた。
「――ぶぉぎゃっ!?」
「――あげぁっ!?」
だが、それも早々に。鈍く唸るような音声が向こうから聞こえ届き。
そして突撃隊伍の戦闘を務めたオークたちが、「爆ぜた」のは直後だ。
「……は?」
隊伍の端で、幸か不幸かそれを逃れた一体のオークが。力を無くすように走る足を止め、そして呆けた声を漏らす。
「……う、うわぁぁぁぁぁっ!?」
そしてそのオークは、次にはその恐ろしい姿に似合わぬ、怯えたまでの悲鳴を上げる。
そのオークの目の前の足元には、仲間のオーク達が――だったものが。血肉の欠片となり、地面に散らばっていた。
血肉の欠片と変わったオークたちの、向こう正面。
魔帝軍の防御陣地だったバリケードを越えた近くに、オークたちを血肉の欠片へと慣れ果てさせた、元凶が立ち構えていた。
それこそ。オークたちの屈強な体格をしかしさらに上回る、青い肌の巨体を持つ存在――スーパーヒューマン。
そのSH隊員の一名の、立ち構えて突き出す20mm機関砲が。オークたちを襲い屠った正体だ。
「――初っ端は挫いたッ」
そのSH隊員は、今に自身の行った一撃掃射の絶大な成果に。しかし歓喜するでもなく、その事実だけを端的に周りに伝える。
「行くぞ、行くぞッ」
そのそれに答えるように。しかし同時に、それを聞くが早いかというように。
そのSH隊員の側、展開する味方各員の合間を抜けるように。繰り出して来たのは、他の各SH隊員を核とする、進行突撃を担う各チームの隊員等だ。
一旦停止していた、進行突撃の再開。
ズシズシと正面を担い、順次繰り出て行くSH隊員に。そのカバーの恩恵を受けつつ続く、各AF隊員のチーム。
「任せるぞッ!」
「どうぞご期待を」
場の指揮官の中尉が、抜け進んで行く各チームにそんな任せる言葉を向け。
ちょうど通過する一名のSH隊員が、端的ながらもそんな返答を返す姿を見せつつ。
AF側の各チーム各員は、進行押し上げを再開。
「うわ、ひ……ぎゃびぇぁ!?」
途中、仲間の惨劇の果ての姿に、立ち尽くしていたオークを。
通り過ぎるついでとでも言うように、一名のSH隊員がその腕力での拳骨で殴り拉げて退ける。
「な、なんだよこいつら!……ぎゃぶぉっ!?」
「ひぎゃ!?」
そしてそのまま押し進め。突撃を企んでいたオークたちの、後続第二陣の隊伍と衝突。
オークたちの目の前に、雪崩の勢いで踏み込むと合わせて。SH隊員らの装備する各火器が、併せて各SH隊員に随伴するAF隊員の各火器が唸った。
「亜人!?見た事も……ぎゃぎゅげっ!?」
「ぎぃぇっ!」
「ぎょぷぁっ!?」
スーパーヒューマン隊員の内訳は、重火器の操作を担う者ばかりでは無く。
近接戦闘用の得物――エンピ類や。標準品の二倍はある、長大な警棒などを繰り出し翳す者が見える。
「――ッォアッ!!」
直後には。隊形の正面を務めるSH隊員等が、動揺混乱に陥ったオークたちの懐へと踏み込み肉薄。
長大な警棒を、一体のオークの頭に叩き降ろして潰し。
あるいはエンピを「ブン薙ぎ」、また別のオークを叩き吹っ飛ばして退け。
さらには、駆け踏み込んだ勢いのままに拳を繰り出し。オークの鳩尾を打撃にて打ち、そのままオークの巨体をしかし容易く、掬い持ち上げるかの動きで吹っ飛ばす。
徒手空拳の形で攻撃を成したSH隊員も見える。
「な、なんだよこれ……!俺たちよりもデカくて強力だなんて……!」
「む、無理だ……!引けぇぇ……っ!」
果てにはあまりの戦力差と、何より相手の異質さから。オークたちの中から戦意を損じる者が出現し始め。
ついには後退、いや逃走に転じようとした。
「ヒ、ヒぃ……!?」
「た、助け……ぎゃぅっ!?」
しかしそれすらも、追い付いたAF隊員各員の手に阻まれ。
SH隊員の巨大な手に、頭を鷲掴みにして捕まえられ、藻掻き鳴き叫ぶオークがいたり。
負傷し、助けを求めて這い逃げるオークが。AF隊員のサービスバトルライフルに、通りすがりのついでというように銃弾を撃ち込まれ、果てる光景が見える。
蹂躙――己が携える恐ろしい巨体から、その行為が己たちに専売特許であると、今日まで半ば信じ切っていたオークたち。
しかしそれは、今日この日に覆り。
AFの苛烈な攻勢を前に、オークたちは一方的に排除される形にほぼ違わぬ、阿鼻叫喚の光景に追い詰められ。
各所から上がり響く戦闘の音に、AF各員の張り上げる声の内に。
微かにオークたちの果てる悲鳴が混じり聞こえながら、オークたちは退けられて潰えて行った。




