チャプター10:「打撃」
突撃隊形の突端を務める一個小隊、その隊員各員は。
銀行周りに固め構築されていた、敵部隊の応急造りの防御陣地へと至り。
そして次には、その向こうへと飛び越え踏み込んだ。
「――ッァアッ!」
真っ先に敵の防御の内へ飛び越え踏み込んだのは、一名の装甲工作員。
腕や胴などの各所に装着するプレートアーマーで、矢を凌ぎ退け。果てに防御の向こうへ飛び踏み込んだその装甲工作員は。
濁り震えるまでの雄叫びを張り上げながら、一番間近に見止めた敵へと肉薄強襲。
「う、うわ……!――ぐげぁっ!?」
「がぁっ!?」
瞬間間髪入れずに、片手に持ち備えていた大振りのカナヅチを思い切り薙ぎ。
最初の目標と定めた黒衣の敵軽装兵を、おもいっきり殴り、拉げ吹っ飛ばして排除。
さらに立て続けの動きで、別方に11.4mmの自動拳銃を突き向け発砲。反応しようとした魔法の使い手を、それよりも速く撃ち退け屠った。
その装甲工作員の強襲を皮切りに、AF各員が雪崩の如きで敵陣に踏み込み強襲。
陣地の内に籠っていた敵兵たちを相手取り、肉薄。ほぼ白兵の形で戦闘を繰り広げ始めた。
近距離で、各AF隊員の各火器が容赦無く唸り、敵を撃ち屠り。
また、サービスバトルライフルに着剣する銃剣や、得物とする工具類で敵と刃を交え。刺突、殴打で遠慮容赦なく屠り沈める。
「ひ、ひぃ……!」
防御陣地の内に踏み込まれ、遠慮容赦の無い強襲に晒され押され。敵の隊形は早々に瓦解。
傷ついた一人の敵兵が、這い退いていた。
それを追いかけるように。詳細にはそれは二の次で、さらに奥へと押し進めるため。
その敵兵に一名の装甲工作員が駆け迫り、その兵に自動拳銃を向け、撃ち屠ろうとした。
「――げァッ!?」
しかし、その装甲工作員は瞬間。何かに殴打され、吹っ飛ばされ退けられた。
次に、ヌっと。這い逃げていた敵兵を庇うように、踏み出て来て正体を現したのは――漆黒の重装鎧兵。
硬い籠手をはめるその片腕は、今に繰り出した殴打の形で作られ。もう片手には漆黒にゆらめく幻想的な球体を見せている
――『マギメイル・パラディン』。またの名称を、『魔装騎士』。
明かせばその存在は、剣技に体術と、併せて魔術を同時に体得する。魔帝軍の上級精鋭兵だ。
「魔装騎士殿っ、オークどもの戦列も前に出させますゆえ!」
「フン、いくらかの足しになればいいがなっ!」
その魔装騎士は、また援護に伴う従兵と算段の言葉を交わしながらも。次には押し上げを狙うAF各員を相手に取り、暴れ戦いを始めた。
「敵、脅威出現ッッ!」
AF側各員は、脅威と判別できる敵個体の出現に、苦くも知らせの声を張り上げ。
押し上げ進むことを一旦止めての、応戦を余儀なくされる。
「怯むなァッッ!」
しかし臆さず、尻込みなどはしない。
一名の装甲工作員がまた張り上げながら、自動拳銃を突き向けて、その魔装騎士に向けて撃ち放つ。
だが魔装騎士の鎧装甲は、それを平然と防ぎ跳ね返し。
その騎士の撃破を試みる各隊員を相手取り。
拳を振るい、次には下げていた大剣を繰り出し薙ぎ。さらには体得する闇魔の魔弾を射ち放ち。
襲撃を試みるAF側各員を退け、脅かし、暴れ舞う。
「ふんっ、どうしたっ!?所詮小手先の術しかもたぬかっ!?」
そんな、AF側各員を相手に暴れ戦う姿を見せながら。次には嘲り挑発する声を張り上げた重装鎧兵。
しかし――
「――ゴぶ゜ァっ!?」
その重装騎士の堅牢な兜に、しかし大穴が空いて砕け。
重装騎士のその重く堅牢な身が。しかし容易く退けるかのように打ち吹っ飛んだのは、直後瞬間であった。
魔装騎士は、ガシャリと鎧の鳴る音を伴い、地面に叩きつけられるように倒れ崩れ。
そのまま沈み、沈黙。
そこに、砕けた兜から血と脳症を撒き散らす姿だけを晒し残して、その絶命を伝えた。
「……な!?」
「う、うわぁぁっ!?」
頼りであったその魔装騎士の。しかし一瞬にして、思いもよらぬ形で沈み絶えた姿に。
狼狽え慌てるは、残された従兵たち。
そんな狼狽える従兵たちをよそに。
今に魔装騎士をえげつない形で屠った一撃の主、正体は。その一撃の来た方向の、延長線上の向こうで構え。
静かにさらなる標的を選定していた――
「――入った」
場所は、AFの機関銃班に狙撃チームが今も配置する。ロータリー空間の背後一角の、ビル建造物の上階。
そこで、静かに端的に伝える一声が上がる。
その室内空間の一か所には、また新たに到着し加わった。巨大で物々しい得物が居座っていた。
床に置き据えられ、崩落して開けた壁際から、その長大な銃身を突き出す銃火器。
――大口径の専用弾を用いる、対物ライフル。
今に腹這の姿勢でそれを構え、スコープを覗くコマンドー隊員に。その彼によって向こうに撃ち込まれた大口径弾が。
その向こうで暴れ舞うように戦っていた魔装騎士を、その堅牢な鎧兜に護られる頭部を。しかし見事に、容易く射ち貫いて砕き。
屠り沈めたのだ。
「グッドショット」
今にその命中を一声で伝えた、射手のコマンドー隊員に。
その彼の成した見事な命中に。評し称える言葉を向けたのは、傍の窓際で控えていたエドアンズ。
彼女は自身も狙撃戦闘行動を行いつつも、スポッターを応急で兼任し。対物ライフル射手のコマンドー隊員に、観測支援を提供していた。
「さらに新手の出現を視認。今度は緑のデカブツが複数」
しかし、対物ライフルを扱うコマンドー隊員は。覗くスコープの向こう、敵防御陣地の内の奥より、さらなる新手を視認して伝える。
観測したのは緑の肌のモンスター、オークの複数体の出現。
「射撃を続ける」
「了解、だけど注意して。こっちの「巨人御一行」が、これから踏み込んで相手する」
さらに狙撃行動を続ける旨を発した、対物ライフル射手のコマンドー隊員に。
エドアンズは了解を返しながらも、しかし同時に注意の旨を伝え紡ぐ。
それぞれの覗くスコープの向こう、苛烈な戦闘エリアとなった敵防御陣地の内では。
さらに状況が目まぐるしく動いていた。




