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働かざる者、パン貰うべからず。だけどステ詰みには地獄なんだが


「よし……今日は、ちゃんと働く」


朝。

私は村の井戸の前に立っていた。


「もうスモールラビット狩りでドヤってる場合じゃない。村に住む以上、ちゃんと“貢献”しなきゃ……パンがもらえない……!!」


決意を固めた私は、井戸のバケツに手をかけた。


──そして、5分後。


「重っっっ!!!? 水ってこんなに重いの!? 水属性じゃないの!? 軽くなってくれないの!?」


見かねたおじさんが無言でバケツを取り上げ、代わりに運んでくれた。


「うっ……すみません……」


「……まあ、やる気だけはあるみたいだな」


ぽつりと、おじさんはそう言った。



◆ ◆ ◆



次は洗濯。


重い木桶に溜めた水を運ぼうとするが、また転ぶ。

泥水に突っ込む。

ティナがタオルを持って走ってくる。


「おねーちゃん、服ドロドロ~! あたしと変わんないね!」


「うん……むしろ“以下”だよ……」



◆ ◆ ◆



午後、私は村の畑で雑草抜きをしていた。


腰は痛いし、指はつるし、もうやめたいけど──

少しずつ、周りの目が変わってきた気がした。


「なんだ、意外と真面目なんだなあの子」


「転がってても、毎日ちゃんと来るしな」


「なんでそんなボロボロなのに笑ってんの?」


「いや笑ってるんじゃなくて、壊れてるんだよ……」


村人たちの笑い声が、少しだけ優しく聞こえた。



◆ ◆ ◆



夜。

誰もいない村の裏手。草の上に立つ私は、そっと手を伸ばした。


「……誰にも言ってないけどさ、やっぱり、諦めきれないんだよ」


幻想術式。

妄想だけで発動する、制御不能の異常魔法。

魔力も、適性もない。

でも私には、これしか“特別”がない。


「……お願い、今度こそ……」


ふっと風が動く気がした。


でも、それだけだった。


「やっぱり……難しいね」


火も、風も、出ない。失敗は数え切れない。


でも私は、それでもやめなかった。


翌日も、私は村の労働に参加する。

そして、夜になるとひとり、幻想術式の練習をする。


誰にも見られないように。

誰にも、知られないように。


それが、今の私にできる、精一杯だった。


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