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火よ、今度こそ出ろ……って出すぎィ!!


「ついに……来た……レベル0ォォォォ!!」


森の中、誰もいないのをいいことに私は両手を天に突き上げた。


「もうマイナスじゃない! 負の遺産じゃない!! レベル0ってことは、ここがスタートライン! スタート地点に立っただけでこの喜び……この世界どれだけハードモードなんだよおおおお!!」


思わずその場で地面に寝転がり、意味もなくバタバタ転がる。


……いや、うん、実際喜んでる場合じゃない。



◆ ◆ ◆



その日の午後。

スモールラビットを5体くらいしばいて意気揚々と帰村した私を、リリィ婆がにこやかに出迎えた。


「ふふ、おかえり。狩りの成果は?」


「ばっちりです。1日1ラビットをノルマにすれば、私の存在意義もあります!」


「で?」


「……で?」


「パンは?」


「……持ってません」


「働かざる者、パン食うべからず。ねぇ」


「ぐはっ」


ぐうの音も出なかった。



◆ ◆ ◆



「このままじゃ……また“役立たず”って言われる……なんかこう……魔法っぽいこと、できないかな……」


私は再び森に出て、倒したスモールラビットの死体に向かってひとりぶつぶつと妄想を始めた。


「炎の魔法で料理したら“焚き火係”として認められる……それって異世界生活の最初の成果としてベストでは……?」


私は両手を掲げる。


「今こそ再び我が妄想の力を……! 燃えろ、幻想術式(勝手に名付けた)!!」


イメージは完璧。発動構文もそれっぽく叫ぶ。


「イグナイト・フレイム!!」


……その瞬間。


ズバァァァァァァンッ!!!


「ぎゃああああああああああああああ!!!???」


地面が吹き飛び、ウサギも吹き飛び、何より私が吹き飛んだ。



◆ ◆ ◆



「ちょ……ちょっと……焦げてるだけで済んでる!? 奇跡か!?死ななくてよかった!」


髪はチリチリ。顔は真っ黒。煙を上げながら、ふらふらと私は村へ戻った。


門をくぐるや否や、目の前にいた子どもたちが指さして爆笑。


「なにあれ!?」「おねーちゃん、すすまみれー!!」


「あ、これ違うの!! 魔法の実験でちょっと……」


「ちょっとでそれ!?」


ティナが心配しながらも笑いを堪えている。

ガルドは無言でそっぽを向いたが、肩が震えてる。笑ってるなあれ。


「ちが……これは、あの……成長痛みたいなやつで……」


「ま、先は長いねぇ」


リリィ婆もくすっと笑って、私の肩に毛布を掛けてくれた。


「とりあえず、風呂入りな」


「……はい」

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