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5/10

火よ、出ろ……出ろってばああああああああ!!

「ふぅ……今日こそ、出す」


私は村の外れ、畑の裏に作られた焚き火スペースで仁王立ちしていた。

向かいに座るリリィ婆が、いつものように湯を啜っている。


「で、今日は“火”を出すと?」


「はい。異世界魔法といえば火! 火球! ファイアボール的ななにか!!」


「でも魔力は?」


「ありません! でも妄想はできます!!」


「うーん、本格的にヤバい子みたいな台詞だねぇ」


リリィ婆の苦笑いを受け流しつつ、私は構えた。右手を前に出す。


「いいか私、火球の出し方は完璧に妄想済みなんだ。詠唱も、発動イメージも、エフェクトの形状もバッチリ!」


私は叫ぶ。


「燃えろ我が右手ッ!! 炎よ集いて砕けろ、ファイアクラーッシュ!!!」


……。


「…………」


……。


「…………あれ?」


沈黙が場を支配した。


「……ちょっと待って、今すごいイメージしたよ!? 赤い火球が螺旋を描いて、パーン!って爆発するところまでバッチリだったよ!? なんで!? なんで出ないの!? ねえ!!」


「うん。なんも出てなかったねぇ」


リリィ婆は湯をすする音だけを響かせていた。


「……先は長いねぇ」



◆ ◆ ◆



翌日。


私は再び森にいた。


「いいんだ……火なんて出なくても……倒せば経験値は入る……レベル上げ、するぞぉおおおおおおおおおおお!!!」


怒りに燃えた私は、木の棒片手にスモールラビット狩りに出た。


1匹目──殴った!倒した!

2匹目──転んだ!でも踏みつけた!

3匹目──妄想しながら飛びかかって、回転しながら叩き落とした!


戦闘というよりも、偶然と勢いと変なテンションでどうにかなってたけど、

なんか、ちゃんと“勝てて”いた。



そのときだった。


目の前に、あのステータス画面が浮かぶ。


【黒崎 紗彩】

Lv. 0(←New!)

職業:詰み

スキル:詰み

称号:Lv-/特異者


「………………ッッ!!」


私は両手で画面を掴むようにして、叫んだ。


「やっっっっとゼロおおおおおおおおおおお!!!! いや遅いわ!!! レベルって普通プラスから始まるんじゃないの!? なに!? この世界、始まりがマイナスなの!? 詰みって言われて本当に詰んでたの!?」


もはや地面に倒れ込んでツッコミまくる私に、森の鳥たちが引いて逃げていった。


でも私は笑っていた。


確かに“前”に進んだ気がしたから。

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