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光る唸る七色のニンジンDXソード ②

俺は覚悟を決めた。

その日の深夜。俺は頭からつま先まで、黒ずくめの衣装に身を包み、夜の闇に紛れて、ヴァイスハイス家の屋敷とそっと抜け出した。

まるで、どこかの国の特殊工作員のように。

目指すは王立魔法学園。魔法用の薬草が栽培されている

所詮は学生用の畑。教職員が目的の菜園へと、潜入することなど造作もない。


深夜の菜園は静まり返っていた。

月明かりの下、様々な野菜たちが整然と植えられている。

俺はその一角、まだ何も植えられていない、更地の区画に目をつけた。

ここだ。

ここと俺の聖地サンクチュアリとする。


俺は鞄から、この日のために開発した、数々のアイテムを取り出した。

まずは土壌改良用の特殊な液体。

生命力を活性化させる「妖精の涙」と、土の魔力を増幅させる「大地の吐息」と絶妙な比率で配合した、秘薬だ。

家では用意できない特殊な薬品たち。学園内なら簡単に手に入る。

なんといっても俺はここの悪党教職員。無断持ち出しと揉み消しなど他愛もない事だ。


俺はその液体とまるで聖水を撒く神父のように厳かにしかし、手早く、区画全体に撒いていく。

液体が染み込んだ土はぼうっと、淡い光を放ち始めた。


次に俺は種を植える。

これもただのニンジンの種ではない。

俺が品種改良を重ねた、特別な種だ。

マナとの親和性を極限まで高め、通常の三倍の速度で成長するように遺伝子レベルで、錬金術的改良を施してある。


最後に仕上げだ。

俺は詠唱を始める。

「おお、母なる大地よ。我が声に応え、その内に秘めし力と今、この種に与えたまえ。育め、育め、究極の果実を!」

俺が手をかざすと、改良された土壌から、キラキラとした虹色のマナの粒子が立ち上り、植えられた種へと吸い込まれていく。


これで、準備は完了だ。

あとはこの究極の土壌が究極のニンジンと育ててくれるのを待つだけだ。

俺は満足げに頷くと、再び闇に紛れて、その場を後にした。


翌朝。

王立魔法学園は大騒ぎになっていた。

「み、見てください! 菜園の土が虹色に輝いています!」

早朝、菜園の管理当番だった生徒が悲鳴に近い声を上げた。

その区画の土は夜露に濡れて、七色の不可思議な輝きを放っていた。

さらに人々を驚かせたのはその土から、すでに可愛らしい緑色の双葉が無数に顔を出していたことだった。

たった一晩で、発芽したというのか。


この奇怪な現象はすぐに「学園の七不思議」の一つとして、生徒たちの間に広まった。

「夜中に黒いマントの怪人が菜園で怪しい儀式をしていたらしい」

「あの区画で育った野菜を食べると、不老不死になるそうだ」

そんなあることないこと、噂が飛び交った。

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